プロに聞いた「ナースシューズ」選びのコツ《患者が喜ぶ!メディカルウェア講座》

ナースシューズの選び方

「メラビアンの法則」によると、相手の発言内容がポジティブなのに、表情やしぐさ、身なりなどの視覚情報はネガティブ、という矛盾が生じると、視覚情報のほうが重視されやすいといわれています。そのため、診療中に発する言葉と同様に、服装もまた患者に与える印象を左右します。患者に安心感を与え、着る側にも寄り添ったウェアはどのようなものなのでしょうか。この「患者が喜ぶ!メディカルウェア講座」シリーズでは、メディカルウェア選びのヒントをお届けします。

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日々の診療を支えてくれる看護師。そのハードな仕事を足元から支えるのが、「ナースシューズ」です。看護師が各自で用意するクリニックもあれば、ユニフォームと一緒にクリニックから支給しているところもあるでしょう。

衛生面で配慮が求められる医療従事者にとって、ナースシューズの汚れは患者にマイナスの印象を与えるだけでなく、汗や蒸れをそのまま放置することで、雑菌の温床や臭いのもととなることも……。また、自分の足に合った靴でないと、足がだるい、むくむといった「疲労」の原因にもなります。

一方で、適切なナースシューズを選び、その力をうまく利用できれば、長時間の立ち仕事でも軽快に働くことができるでしょう。それは結果として、来院した患者に良い看護を提供できるということにもつながります。今回は少し趣向を変えて、そんな「ナースシューズ」に着目。

アシックスクロックス・ジャパントランソニックのシューズメーカー3社に、「ナースシューズの選び方のコツ」について聞きました。6つのポイントを解説します。

【ポイント1】靴の中の嫌な汗! 通気性に優れた構造なら蒸れを軽減できる

「一日中ずっと履きっぱなしで蒸れが気になる方は、吸水・速乾性に優れた素材を使ったナースシューズを選ぶといいでしょう。例えば、弊社のブランド『ピュアウォーカー(写真)』では、汚れにくい合皮素材を採用していますが、通気性に劣る素材特性があります。その欠点をカバーするために、メッシュ素材と組み合わせたデザインにしています」(トランソニック広報担当)

靴の中は汗がこもりやすいもの。立ち仕事で動き回ればなおのこと、靴の中の蒸れは大いに気になります。そこでチェックしたいのが、吸水や吸湿、速乾性といった機能の素材が使われているかです。靴本体の素材には通気性がなくても、汗を外に逃がしやすい素材と組み合わせたり、通気用の穴が開いていたりするデザインだと、快適な状態を保ちやすくなるでしょう。

ピュアウォーカー

【ポイント2】脱ぎ履きする度に気になる臭いは、消臭素材でカット

「現場で耳にするのが、自分が履くナースシューズの臭いが気になるという意見です。消臭効果のある素材を用いている靴もあるので、そうした点にも着目して選ぶと良いと思います」(アシックス企画担当)

足元に関するお悩みで多いのが「臭い」に関するもの。近年、メディカルウェアの高機能化が進んでいるように、ナースシューズも進化を遂げており、臭機能を持つ素材を使った製品も増えています。ただ、せっかくのこうした機能が、通販サイトでは細かく紹介されていないこともあるため、メーカーサイトまで目を通してチェックしてみるのも一つの方法です。

【ポイント3】足汗に群がる雑菌は抗菌素材で抑制! 臭いの原因にもアプローチできる

「汗がこもるナースシューズの中は雑菌が繁殖しやすい環境です。清潔感が大切な医療従事者にとって、足汗などによる雑菌増殖の抑制がされやすい構造や素材を取り入れているかも、靴選びのポイントになるでしょう。臭いのもとにアプローチして除去するために、弊社では足裏面の素材として、抗菌防臭加工でSEK認証されているものを用いるなど工夫を重ねています」(トランソニック広報担当)

常に足裏から出る汗にさらされる靴の中は雑菌の温床です。そうした菌の繁殖は衛生面の問題にとどまらず、放置しておくことで臭いの原因になることも。本シリーズでもたびたび取り上げてきた一般社団法人繊維評価技術協議会が認証するSEKマークの中でも、特に抗菌防臭加工や制菌加工の認証がある素材を用いたナースシューズであれば安心でしょう。

【ポイント4】汚れやすいナースシューズでも、速乾性の高い素材ならすぐ洗えて清潔に保てる

清潔感を保つために、お手入れがしやすいナースシューズを選択することが大切です。また速乾性があるかどうかも、お手入れのしやすさと関係するでしょう。例えば弊社が開発した合成樹脂『クロスライト(TM)』を採用したシューズ(写真)は、軽量でやわらかく、せっけんや水で手軽に洗える上、短時間で乾くことが大きな特徴です」(クロックス・ジャパン広報担当)

血液や薬品などが降りかかったり、空中を漂うエアロゾルが付着したりすることも十分あり得る足元。ナースシューズの汚れは見た目の問題に加え、安全性という観点からもすぐに落とす習慣をつけたいもの。その点、簡単に丸洗いできる靴なら、手間いらずでうれしいですよね。洗濯用せっけんや中性洗剤などでさっと洗えて、すぐに乾く靴を選べば、気軽にお手入れすることにつながるのではないでしょうか。

クロスライト(TM)を採用したシューズ

【ポイント5】足元が軽いと動きも軽くなる! 軽量性が歩きやすさのカギ

「立ち仕事である医療現場の靴であれば当然、歩きやすさを備えていることが求められるでしょう。その際にポイントとなるのが、靴の軽量性です。例えば弊社の『ナースウォーカー(R)203(写真)』の場合、アウトソールと靴本体を一体化するために合成樹脂の素材を採用しました。靴底の役目を果たすゴムを本体に貼らずに済むことで、軽量化を図っています」(アシックス企画担当)

ナースシューズにおいて多様な機能を採用していることはもちろん大切ですが、まずは靴として「歩きやすい」かどうかは、何より重視したいポイントでしょう。長時間履いていても歩きやすいと感じられるカギとなるのが、靴本体の軽さです。素材を追求したり、デザインに工夫を凝らしたりすることで、軽量性を追求している製品はお勧めです。

【ポイント6】自分の足にフィットしているかが疲れにくさを左右する

「足にしっかりフィットしているナースシューズであれば足運びが良くなるもの。より軽く、より疲れにくく感じるでしょう。例えば、靴底が屈曲しやすい素材だと足との一体感がありフィット性が高まります。また中敷きの構造も重要です。フラットな中敷きだと、かかとや母指球といった『点』に体重が乗りがちです。一方、立体構造の中敷きは自分の体重を足裏全体の『面』で支えてくれるので、疲れ方が違います」(アシックス企画担当)

疲れにくさに影響するのが、足とナースシューズとの一体感です。履いてみてどこかに違和感があると、後で痛くなったり疲れたりする原因になります。自分の足にフィットするかは、実際に履いてみないとなかなかわからないもの。通販という選択肢だけでなく、実店舗へ出向いて試し履きしてみるのも、ナースシューズを選ぶコツの一つと言えるかもしれません。

「一日が終わるとぐったり疲れる……」先生の耳にも届いてくるそんな看護師たちの声も、もしかすると自分に合わない靴を履いていることが原因の一つかもしれません。クチコミや価格だけにとらわれず、自分の足に合った一足を見つけることが、看護師たちの毎日をもっと軽快にしてくれるはず。

また、看護師たちがはつらつと働く姿は、「またこの医療機関に診てもらいたい」という患者の受診満足度の向上にもつながるでしょう。看護師自身がナースシューズを選んでいるクリニックの先生も、ぜひ大切な職場の看護師に伝えてみてください。(クリニック未来ラボ編集部)

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