クリニックの「人事評価制度」調査レポート【後編】|評価の運用状況と現場のリアル

クリニックの「人事評価制度」調査レポート

近年、一般企業だけでなく医療業界でも注目される「人事評価制度」。スタッフ育成や組織力向上につながる仕組みとして、導入を検討するクリニックが増えています。

とはいえ、医療現場は職種や業務の特性が多彩で、評価制度の設計や運用は簡単ではありません。制度を導入しているクリニックは、どのように評価を行い、何に反映しているのでしょうか。また、導入していないクリニックは何をハードルと感じているのでしょうか。

本記事では、医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」の調査をもとに、導入クリニックの具体的な運用と、導入見送りの理由を解説します。

なお、より詳しく、導入率や目的について知りたい方は、「クリニックの『人事評価制度』調査レポート【前編】|導入状況と評価基準をデータで読み解く」の記事もあわせてご覧ください。

【記事公開日:2023/4/3|最終更新日:2026/1/27】

ドクターズ・ファイル クリニコ

評価結果はどこに反映されるのか【賞与・給与など】

医科歯科別人事評価実態調査

まずは、人事評価制度を「導入している」と答えたクリニックに、評価結果をどこに反映しているか聞いてみました。

全体で見ると、「賞与」87.5%、「給与」77.1%と、報酬に反映するケースが多いという結果になりました。特に歯科では、評価結果を給与より賞与に反映するクリニックが多く、賞与のほうが19.3ポイント上回っています。

「クリニックの「人事評価制度」調査レポート【前編】|医療現場の評価実態を探る」の記事でもふれたように、歯科は人事評価制度の評価基準として収益貢献度を求める傾向にあるため、インパクトのある反映として賞与が1位となっているのかもしれません。

また一般的に見ても、一時的な賞与と、継続的な給与では、経営者の目線として給与反映にはシビアにならざるを得ないという面があるようです。

加えて、歯科の場合、19.2%のクリニックが「休暇の付与、手当補助など待遇」と回答しており、「その他」3.8%については中身を見てみると、従業員旅行などの福利厚生に反映しているという声が挙がっていました。

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クリニックの人事評価は年2回が主流

人事評価

人事評価の実施回数は1年に「2回」が最も多く、約6割のクリニックが該当します。

一般企業でも、例えば3月決算の会社の場合、上半期4~9月、下半期10~翌年3月というように半年ごとに経営管理をするケースが多く、人事評価対象期間も年2回が一般的です。クリニックもその頻度とおおむね変わらないことがわかります。

定期的かつ継続的な評価は、「あなたの頑張りを見ている」というメッセージの役割も大きいでしょう。

一方で、2.0%とわずかながら「5回以上」と答えたクリニックもありました。

一般的に人事評価にあたっては、評価者に時間や労力といった負担がかかりがちであるにもかかわらず、それでも積極的に実施しているクリニックがあるのは興味深いところです。人事評価の重要性を感じているからこそ、実施頻度が高いのかもしれません。

人事評価の管理方法はエクセル・ワードが中心

医科歯科別人事評価の管理表実態調査結果

では、人事評価において重要なデータ管理は、どのように行っているのでしょうか?

調査結果を見ると、81.3%と多くのクリニックで「エクセルやワードなどのソフト」を駆使していることがわかりました。これらのソフトは自由度が高い一方で、設定を自分で行う必要があるため、評価者の負担増となり、ひいては導入へのためらいの要因となっているのかもしれません。

そして、医科と歯科で比べてみると、「専用システム・サービス」の項目では医科が9.1%、歯科が7.7%と、歯科よりも医科のほうが1.4ポイントとわずかに高く、「その他」の項目については歯科よりも医科のほうが10.9ポイント高いという結果に。

「その他」の中身を見てみると「メモ帳」「ノート」「コンサルタントと連携(依頼)」などで、クリニックごとに独自のやり方で管理している姿が浮かび上がってきました。

8割のクリニックが人事評価に難しさ・大変さを実感

医科歯科別の人事評価の難しさと大変さの実感調査

続いて、人事評価をする上で、難しさや大変さを感じているかについて聞いてみました。

実際に人事評価を導入しているクリニックの77.1%という多数が、「とても感じる」「やや感じる」と回答しました。特に「とても感じる」の項目で医科と歯科を比べると、医科が40.9%なのに対し、歯科は57.7%。歯科のほうが、人事評価に対して難しさや大変さを感じている度合いが大きいことがわかります。

看護師や医療事務、受付などクリニックで
働くスタッフを適切に評価・管理

ドクターズ・ファイル クリニコ

人事評価のハードルは「労力・時間」と「評価基準の設定」

医療現場の人事評価制度の難しさ調査結果

次に、前の質問で人事評価に対して難しさや大変さを「とても感じる」「やや感じる」と回答したクリニックに、その理由について聞きました。

過半数が「労力や時間」(59.5%)と「評価基準の設定」(51.4%)に難しさを感じているという結果に。一般企業では、会社全体の基準を設けた上で、職級や役割ごとに評価していますが、クリニックでは人数などの規模感や一人ひとりの専門性から、明確な評価基準の設定が難しかったり、職種や役割ごとに公平な基準を設けづらかったりといったハードルがありそうです。

また判断基準の難しさ・複雑さと相まって、評価に時間や労力がかかるという悪循環もあるのではないでしょうか。

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必要性は感じていても、評価基準の難しさと多忙さが導入の壁に

人事評価制度を導入していない理由

最後に、人事評価制度を「導入していない」と回答したクリニックに、導入のネックを尋ねました。

結果は「評価軸の設け方に不安」55.6%が最多で、次に「多忙で手が回っていない」41.4%という声が続きます。

必要性は感じているものの、目標・評価軸の設計の難しさや、時間が取れないなどの事情から、いったん見送っているケースも目立ちました。

前の質問で明らかになったように、すでに導入しているクリニックでも「労力・時間」「評価基準の設定」が課題になっており、導入検討段階でも同じ壁が立ちはだかっていることがうかがえます。

一方で、被評価者側からは、「納得感のある評価はモチベーションや患者対応の質向上につながる」という前向きな声も挙がっています。働き方改革の影響などから、クリニックでも制度の必要性は今後いっそう高まるとみられ、現場に合った仕組みづくりが重要になっていきそうです。(クリニック未来ラボ編集部)

<執筆者プロフィール>
クリニック未来ラボ編集部
クリニック未来ラボは、開業医、開業をめざす勤務医・医学生に向けたクリニック経営支援メディアです。独自の視線で調査・研究し、より良い医院経営に役立つ情報として発信。「開業医白書」をはじめ、診療報酬改定や医師の働き方改革、医療従事者の転職動向など、医院経営に関する調査レポートも公開しています。

※ドクターズ・ファイル編集部による「クリニックの人事評価制度に関するアンケート調査」。対象は、ドクターズ・ファイルを契約中の全国の医科・歯科クリニック。回答数は210院。2022年4月27日~5月6日にインターネット調査にて実施。

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