増えるクリニックの予約制導入で患者の「予約の当たり前化」が進む
医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」が2020年に実施した調査(※)では、新型コロナウイルス感染症対策をきっかけに「予約制を導入した」と回答した医療機関の割合は50.4%と、半数を超えていました。
この結果からも、予約制が急速に広がった背景がうかがえます。

この調査が行われた2020年以降、医療機関は感染拡大に何度も直面してきました。その中で、予約制の導入に踏み切った、あるいは運用を強化した医療機関は、調査当時よりもさらに増えていると考えられます。
また現在では、予約制は単なる「感染対策」にとどまらず、患者にとって「予約して受診できることが当たり前」という認識へと変化しています。待ち時間の短縮や通院のしやすさといった点からも、患者満足度を高める取り組みとして、予約制を積極的に活用するクリニックが増えているのが実情です。
【予約制の良かったところ】ネット予約・電話予約それぞれにメリットがある
では、こうした予約制について、実際に利用している患者はどのように感じているのでしょうか。
ここからは、4人の患者から寄せられたリアルなコメントを紹介します。ネット予約・電話予約それぞれの利用シーンとメリットが見えてきます。
【実際に予約制を利用している患者の声】
●ネット予約が重宝しています。息子の発熱で保育園から連絡を受けた際は、園に向かう電車内でスマホを使って予約。時間のロスがなくスムーズに診てもらえました。10分刻みの細かい時間帯で予約できるのが良かったです。(ワーキングパパ Aさん・36歳)
●平日はフルタイムで働いているので、週末に複数のクリニックをまとめて受診しています。ネット予約だと、「どのクリニックに何時頃に行こうか」といったスケジュール調整がしやすいのが便利です。(ワーキングママ Bさん・39歳)
●電話予約派です。妊娠中なので、受診前に赤ちゃんへの影響など心配事が多くて。電話予約なら、スタッフさんと相談や質問をしながら予約を受けつけてくれるので、安心感が大きいですね。(ワーキングプレママ Cさん・32歳)
●家事や子どもの世話に追われていると、予約していたことを忘れてしまうときがあるので、受診前日などにリマインド通知してくれるサービスには助かっています。おかげで先々の予約も入れやすいです。(専業主婦 Dさん・35歳)
以上のとおり予約制が評価されているポイントは、患者のタイプによってさまざまなことがわかります。
受診に関する相談や質問など、予約のときにスタッフとコミュニケーションがとれる電話予約は、スマホやパソコンなどの操作に慣れていなくても予約可能です。
一方で、専用の予約システムや、SNSを利用したネット予約は、患者が自分の生活スタイルに合わせて時間を気にせずいつでも予約がとれることなどにメリットを感じているようです。
どちらにもメリットがあるため、予約制の導入を検討する際は、自院の患者層をイメージして選ぶと良いでしょう。
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【予約制の気になるところ】待ち時間への不満や、予約方式への要望あり
次に、予約制に関して不満に感じた点や、気になるところを見ていきましょう。
【実際に予約制を利用している患者の声】
●予約時間どおりに着いたのに一向に名前を呼ばれず、後から来た患者さんが先に診察室に通されるのを見てモヤモヤしたことがあります。状況説明が欲しかったです。(ワーキングパパ Aさん・36歳)
●予約のない飛び込み患者で混雑してしまい、予約時間を1時間過ぎても順番が来なかったということがありました。症状による優先度などの事情があるのはわかりますが、大幅に遅れるのはつらいですね。(ワーキングママ Bさん・39歳)
●人気の婦人科クリニックで、ネット予約受付の開始時間になった途端、アクセス集中で予約画面にすらたどり着けず、結局予約を断念したことがあります。受診の希望人数にシステムが対応できていない印象でした。(ワーキングプレママ Cさん・32歳)
●完全時間予約制の小児科で、子どもの急な体調不良でどうしても診てもらいたかったのですが、予約の枠が埋まっていて受診できず、途方に暮れてしまったことがありました。(専業主婦 Dさん・35歳)
患者の不満として挙がったのは、「予約したのに結局待たされた」というケース。予約患者だけを診察する「完全時間予約制」と違い、予約のない飛び込み患者も受けつける「時間予約制」の場合、予約患者を待たせてしまう状況は少なくないようです。
Aさんの声からは、待ち時間そのものよりも、状況の説明がないことで生じる「なぜ待たされているのか」という疑問が、不満につながっている様子がうかがえます。
また、Dさんのケースのように、導入している予約制と患者のニーズとの間にズレが生じている例も見られました。
【まとめ】予約患者への少しのフォローが「不満解消」につながる
本記事では、予約制を利用した患者の声から、評価される点と不満につながりやすい点を整理しました。
待ち時間を短縮できる予約制は利便性の向上につながっている一方で、患者は「予約=待たなくていい」と思いがちです。そのため、予約したのに待ち時間が生じた場合には、予約がない状態で待たされるよりも不満が大きくなり、クレームにつながりやすいようです。
遅れが生じるケースがあることについては、平時から次のような方法で周知しておくとよいでしょう。
- ホームページで「諸事情で診察時間が遅れる場合もあります」などを告知する
- 院内の受付や待合室にも、同様の内容の張り紙を掲示して告知する
もし実際に遅延が生じた場合には、
- 待たせてしまっている患者に、「救急患者の対応のため、遅れが生じています」などと事情を説明する
- 診察の順番が来て患者を呼び出した際にも、あらためて事情を説明しつつ、遅れを謝罪する
こうしたひと言の説明と事前の周知が、患者の理解につながり、不満の解消に役立ちます。
これからさらに、「当たり前」が進むとされるクリニックの予約制。自院の患者層に合わせて気になる点を把握し、小さなフォローを積み重ねることが、予約制の価値を最大限に生かすポイントです。(クリニック未来ラボ編集部)
※ドクターズ・ファイルによる「新型コロナウイルス感染拡大における医院運営への影響とその対策」に関するインターネット調査。調査対象は開業医で、有効回答数は119人。2020年5月に調査実施。
<執筆者プロフィール>
クリニック未来ラボ編集部
クリニック未来ラボは、開業医、開業をめざす勤務医・医学生に向けたクリニック経営支援メディアです。独自の視線で調査・研究し、より良い医院経営に役立つ情報として発信。「開業医白書」をはじめ、診療報酬改定や医師の働き方改革、医療従事者の転職動向など、医院経営に関する調査レポートも公開しています。
