予約制は導入だけすればいいわけじゃない!患者の声から見る活用のヒント

クリニック予約制

インターネットや電話を活用した診療予約。患者の待ち時間の短縮化が見込め、コロナ禍での感染リスク低減にもつながることから、患者が安心して通院できるように導入したドクターも多いのではないでしょうか。

多くのクリニックで予約での診療を受けられるようになったことから、ユーザーにとって予約できることは、もはや「当たり前」といえる状態になりつつあります。

一方、ひとくちに予約制といっても、インターネットで行えるものもあれば、電話のみを受けつけるものもあります。また、診察の順番取りを行う方式や来院時間を選ばせる方式など、予約できる内容もさまざま。それぞれの予約制についての患者のニーズを把握し、運用・改善に生かすことができれば、患者のさらなる満足度アップも見込めるのではないでしょうか。未来のクリニックの「予約」のヒントとなる、予約を利用した患者のリアルな声を「クリニック未来ラボ編集部」がお届けします。

増えるクリニックの予約制導入で患者の「予約の当たり前化」が進む

医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」が2020年に実施した調査(※)では、新型コロナウイルス感染症対策をきっかけに「予約制を導入した」と回答した医療機関の割合は50.4%と、半数を超えていました。

院内での感染対策

この調査から時がたち、感染拡大に何度も直面したこともあり、調査した頃よりも予約制の導入に踏みきった医療機関はさらに増えていると推測されます。また「感染対策」としての予約制導入だけでなく、患者の「予約できることが当たり前」という心理から、満足度を上げるためにも積極的に予約制導入が進んでいるという実態もあります。そうして多くのクリニックで導入され始めた予約制ですが、実際に利用している患者はどのように感じているのでしょうか。

【予約制の良かったところ】ネット予約・電話予約それぞれにメリットがある

【患者の声】
●ネット予約が重宝しています。息子の発熱で保育園から連絡を受けた際は、園に向かう電車内でスマホを使って予約。時間のロスがなくスムーズに診てもらえました。10分刻みの細かい時間帯で予約できるのが良かったです。(ワーキングパパ Aさん・36歳)

●平日はフルタイムで働いているので、週末に複数のクリニックをまとめて受診しています。ネット予約だと、「どのクリニックに何時頃に行こうか」といったスケジュール調整がしやすいのが便利です。(ワーキングママ Bさん・39歳)

●電話予約派です。妊娠中なので、受診前に赤ちゃんへの影響など心配事が多くて。電話予約なら、スタッフさんと相談や質問をしながら予約を受けつけてくれるので、安心感が大きいですね。(ワーキングプレママ Cさん・32歳)

●家事や子どもの世話に追われていると、予約していたことを忘れてしまうときがあるので、受診前日などにリマインド通知してくれるサービスには助かっています。おかげで先々の予約も入れやすいです。(専業主婦 Dさん・35歳)

以上のとおり予約制が評価されているポイントは、患者のタイプによってさまざま。

受診に関する相談や質問など、予約のときにスタッフとコミュニケーションがとれる電話予約は、スマホやパソコンなどの操作に慣れていなくても予約可能。専用の予約システムや、SNSを利用したネット予約は、患者が自分の生活スタイルに合わせて時間を気にせずいつでも予約がとれることなどにメリットを感じているようです。

どちらにもメリットがあるため、予約制の導入を検討する際は、自院の患者層をイメージして選ぶと良いでしょう。

次は予約制に関して不満に感じた点、気になるところについて、患者から寄せられた声を見ていきましょう。

【予約制の気になるところ】待ち時間への不満や、予約方式への要望あり

【患者の声】
●予約時間どおりに着いたのに一向に名前を呼ばれず、後から来た患者さんが先に診察室に通されるのを見てモヤモヤしたことがあります。状況説明が欲しかったです。(ワーキングパパ Aさん・36歳)

●予約のない飛び込み患者で混雑してしまい、予約時間を1時間過ぎても順番が来なかったということがありました。症状による優先度などの事情があるのはわかりますが、大幅に遅れるのはつらいですね。(ワーキングママ Bさん・39歳)

●人気の婦人科クリニックで、ネット予約受付の開始時間になった途端、アクセス集中で予約画面にすらたどり着けず、結局予約を断念したことがあります。受診の希望人数にシステムが対応できていない印象でした。(ワーキングプレママ Cさん・32歳)

●完全時間予約制の小児科で、子どもの急な体調不良でどうしても診てもらいたかったのですが、枠が埋まっていて受診できず、途方に暮れてしまったことがありました。(専業主婦 Dさん・35歳)

今回患者の不満として挙がったのは、「予約したのに結局待たされた」というケース。予約患者だけを診察する「完全時間予約制」と違い、予約のない飛び込み患者も受けつける「時間予約制」の場合、予約患者を待たせてしまう状況は少なくないようです。Aさんがいうように、待たされていること以上に「なぜ?」というもやもやが不満につながっていると推測できます。

他には、Dさんのように採用している予約制と患者のニーズのずれが発生しているケースも見られました。

【まとめ】予約患者への少しのフォローが「不満解消」につながる

ここまで、予約制についての患者の声を紹介しました。待ち時間を短縮できる予約制は、利便性だけでなく、依然として収束が見えないコロナ禍における患者の安心にもつながっています。

その一方で、患者は「予約=待たなくていい」と思いがち。そのため、予約したのに待ち時間が生じた場合には、予約がない状態で待たされるよりも不満が大きくなり、クレームにつながりやすいようです。何らかの事情で予約時間から遅れるケースがあることについては、

  • ホームページで「諸事情で診察時間が遅れる場合もあります」などを告知する
  • 院内の受付や待合室にも、同様の内容の張り紙を掲示して告知する

といった方法で、日頃から患者の理解を促していくといいでしょう。もし実際に遅延が生じてしまった場合には、

  • 待たせてしまっている患者に、「救急患者の対応のため、遅れが生じています」などと事情を説明する
  • 診察の順番が来て患者を呼び出した際にも、あらためて事情を説明しつつ、遅れをわびる

などのように、事情や状況を患者に納得してもらえるよう丁寧に説明し、周知徹底を図っていくことが大切だと思われます。これからさらに、当たり前化が進むクリニックの予約制。自院の予約制について、患者が気になるところを把握し、適切にケアした上で、予約システムの利点を最大限に生かしていくことが、予約制を活用する上で重要なポイントといえるでしょう。(クリニック未来ラボ編集部)

※ドクターズ・ファイルによる「新型コロナウイルス感染拡大における医院運営への影響とその対策」に関するインターネット調査。調査対象は開業医で、有効回答数は119人。2020年5月に調査実施。