患者調査でひもとく医療機関のかかり方【後編】クリニック選びで何を重視する?

患者の医療機関の選び方

気軽に自身や家族の健康について相談できる「かかりつけ医」を持つことに対する意識は、昨今のコロナ禍により、ここ日本でも高まりつつあります。

そこで、「患者調査でひもとく医療機関のかかり方【前編】かかりつけ医はいる?いない?」では、医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」が家族の健康を一番把握している子育て中の女性を対象に行った意識調査(※)に着目。その結果から、かかりつけ医を持つ理由、持たない理由を探り、患者の潜在的なニーズを読み解きました。

今回の後編では、調査結果をさらに深掘りし、具体的に患者がかかりつけ医に何を求めているのか、さまざまな視点で考察していきます。

かかりつけ医の性別は「気にしない」人が大多数! 選ぶ際に重視するものは……

かかりつけ医の性別

「かかりつけ医」に対する意識を細かく探っていきましょう。まず、自身が診てもらうドクターの性別について。これは予想以上に「気にしない」と回答した人(80.8%)が多数でした。性別よりもドクターの性格や人柄、キャラクターを重視する傾向が強く見られ、細かく掘り下げてその理由を問うと、「診察が丁寧な先生なら男女どちらでも」「質問しやすい雰囲気の先生であれば、性別はあまり気にしない」という人もいれば、「性別関係なく、ズバッとわかりやすい説明をしてくれる先生がいい」という人もいて、求めるドクター像は人それぞれ。

また、「女性ドクターがよい」とする人には、「更年期障害などの女性特有の悩みを相談しやすい」、「(男性に)体を見られるのが恥ずかしい」などの回答が寄せられました。

一方、少数派ですが「男性ドクターがよい」と答えた人の理由は、「なんとなく」や「(男性のほうが)話しやすい」といった、やや漠然とした回答が多かったのも興味深いところです。

子どものかかりつけ医の性別

自身のかかりつけ医より、子どものかかりつけ医を選ぶ際のほうが、より多くの人が「性別は気にしない」と回答。子どもが幼いうちは性差を意識する場面も少ないため、ナーバスになる人はあまり多くないようです。ゆえに、「気にしない」理由についても、さほど明確な回答は寄せられませんでした。

一方で、子どもが思春期を迎える年齢に差しかかると、「娘が恥ずかしがるので女性の先生がいい」という人や、「聴診器での診察などは同性(女性)のほうがスムーズ」という回答など、少数ながら気にする人も出てきます。しかし多くの人は、自分自身のかかりつけ医と同様、性別よりも人柄を重視する傾向にあるようです。

意外に理解されていない? 約4割が「病院とクリニックの違いがわからない」と回答

クリニックと病院の使い分け

かかりつけ医を決める前に、まず自分はどの医療機関に行くべきか、患者は考えます。多くの場合は、緊急度や重篤度が高い場合は病院へ、ちょっとした体調不良や健康相談などはクリニックへと、ある程度の使い分けを意識しているものと想定していましたが、意外なほどに、「違いがわからない」という人が多数という結果に驚きました。

これを「かかりつけ医がいない」と回答した人のみで統計を取ると、「違いがわからない」という人の割合は49.0%にも上り、逆に「かかりつけ医がいる」人の統計では38.7%と、その違いは10ポイント以上にも。やはりかかりつけ医がいる人は、総じて健康意識が高い傾向にあるようです。

健診・検診を受けているか

患者の健康意識を測る上で、一番ダイレクトにその傾向がわかるアンケートが、この質問でしょう。定期的に受診している人は、4割を下回る結果となりました。

これを、「かかりつけ医がいる」という層に絞って統計を取ると、「定期的に受けている」人の割合は43.3%にまで上昇。逆に「かかりつけ医がいない」人では、29.0%と3割を切る結果となります。裏を返せば、かかりつけ医がいるということは、どんなときにどんな検査が必要なのか、その情報を得やすくなるということでもあります。やはり健康管理の意識の向上と、かかりつけ医の有無とは、相関していると考えられます。

かかりつけ医がいることのメリット

そもそも患者がかかりつけ医を必要とする理由が、上図の調査結果に集約されています。体調が悪くなったり、病気や怪我をしたりしたときはもちろんのこと、その一歩手前の、予防段階や、健康不安を少しでも感じたときに、気兼ねなく相談に乗ってくれるドクターこそが「かかりつけ医」だと感じているのではないでしょうか。そして「自分や家族の体のことをわかってくれている」からこそ、相談も質問も気軽にすることができるのでしょう。

特に20代では「気軽に質問や相談ができたとき」と回答する人の割合が高く、その数字は66.7%にも上りました。子育て、検査や治療と、初めて経験することが多いからこそ、かかりつけ医の言葉が大きな安心感につながっているのだと感じます。

【後編まとめ】

「かかりつけ医を持つ」ということへの意識は、まだまだ高いとはいえない現実がアンケート調査によって浮き彫りになりました。しかし、昨今のコロナ禍により、誰もが健康への不安を抱える日々が続き、かかりつけ医がいることの安心感を求める人は潜在的に増えてきていると感じます。

これまでは体調が悪くなったときにクリニックや病院に行けばいいと考えていた人も、普段から家族や自身の健康を一緒に見守ってくれるかかりつけ医の存在を意識し始めています。今改めて、そのニーズに寄り添うクリニックや病院の情報が求められているのではないでしょうか。

※ドクターズ・ファイルによる「かかりつけ医に関する調査」。対象は、日本全国の、0歳〜15歳までの子どもを持つ、25〜55歳の女性400人(東日本200人・西日本200人)。2020年5月にインターネット調査にて実施。

<執筆者プロフィール>
スギウラ ミエ
ライター。愛知県生まれ。求人系情報誌の編集部に在籍し、多くの文化人、タレントへのインタビューを担当。その後独立し、ビジネス系ウェブメディアなどでインタビュー記事を多数手がけている。医療分野でも活躍し、『頼れるドクター』では長年表紙の制作などに携わり、『患者ニーズ研究所』でも冊子創刊号から記事を執筆。

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