若者言葉「推し」の意味は?例文つき解説でわからないモヤモヤを解決!【第2回】

若者言葉「推し」の意味

「今の言葉、どういう意味だろう?」「聞き返したら、気分を悪くするかな?」。10代・20代との日常会話やSNSでのやりとりの中で、馴染みのない「若者言葉」に戸惑った経験はないでしょうか。

医師がわざわざ使う必要はありませんが、若者言葉の意味を正しく知ることは、年齢の離れた患者やスタッフの物の見方、考え方への理解をぐっと深めるはずです。本コーナーでは、巷でよく使われている若者言葉について、例文を用いて解説。

今回取り上げるワードは、「推し」 です。

【推し】の意味とは?

まずは「推し」の意味から解説していきましょう。

■ おし【推し】

他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物。「――の主演ドラマ」
[補説]アイドルグループの中で最も応援しているメンバーを意味する語「推しメン」が流行したことから、多く、アイドルや俳優などについていう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「推し」とは、動詞「推す」の連用形が名詞となった言葉で、人にすすめたいほど気に入っている人物や物のことを指します。

アイドルやミュージシャン、映画・ドラマの俳優、スポーツ選手など実在する人物だけでなく、歴史上の人物のほか、マンガやアニメ、ゲームに登場する2次元のキャラクターを指すこともあります。最近では、鉄道や建築物、仏像などが推しの対象になることも。

ファンや仲間内で、特定の人物やキャラクターについて議論するときに、「推す」「推せる」「推せない」など、動詞的な使い方をすることもあります。

【推し】の由来

1980年代のアイドルブームの頃に登場した言葉とされており、もともとは、いわゆるオタクと呼ばれるアイドルの熱狂的なファンの間で使われていたようです。

応援しているイチオシのメンバーという意味から「推しメン」という言葉が生まれ、それがやがて「推し」のように省略され、メディアなどでアイドルに限らず、「好きなもの」として取り扱うようになったことから、一般にも広まり、気軽に使われるようになりました。

今では、若者だけでなく、中高年の間でも広く使われており、推しを応援する活動、いわゆる「推し活」をする人の数は年々増えています。その経済効果はもちろん、心身にポジティブな影響を与えることから認知症予防やアンチエイジングなど健康効果も期待されている、今注目のキーワードです。

【推し】の使い方・例文

「推し」の例文を詳しく見てみましょう。

例文1

医師:目が腫れているみたいですが、昨晩はよく眠れましたか?
患者:実は、推しが結婚してしまって、ショックで一晩中泣いていました……。
医師:とてもつらいのですね。

アイドルのような手の届かない人物を推しにする人もいれば、職場やよく行くお店に推しを持つ人も少なくありません。

中には、推しのことを本気で好きになる(リアコ・ガチ恋)ファンもいます。この場合、推しの結婚や熱愛が発覚したり、推しが不祥事を起こしたりすると、失恋したかのように落ち込んだり、裏切られたように傷ついたりする場合もあります。

「推し」と「好き」の境界線はあいまいですが、「見返りを求める気持ちがあるかないか」が大きな違いと考える向きがあります。

例文2

スタッフ:〇月〇日に推し活のため、有給休暇をいただきます。業務については佐藤さんに対応をお願いしています。
医師:それはいいね、いっぱい楽しんで来て!

「推し活」とは、「推し」+「活動」を組み合わせた造語です。推しを応援するための活動全般を意味します。

ライブや握手会、ファンミーティングなどに参加するほか、限定グッズを購入して応援することも推し活になります。イベントによっては、日時限定で行われるものもあり、その日のために何カ月も前から仕事などの休みを調整するのも推し活に含まれます。

例文3

スタッフA:○○グループ(アイドル)の中で言ったら、私は△△単推し
スタッフB:えー。私は箱推し! 一人に絞れません。
医師:確かに、○○グループはみんな魅力的だよね。

「単推し」とは、「単体」+「推し」を組み合わせた造語で、特定の一人のメンバーを応援することを意味します。

一方の「箱推し」はその反対語で、劇場やライブハウスを意味する「箱」と「推し」から成る造語です。アイドルグループやアニメのキャラクターなど、複数人で形成される対象を丸ごと応援することを指します。また、似た言葉に「全推し」があります。

例文4

医師:食欲はありますか?
患者:はい! 推しピ様の存在が治療の原動力になっています。

「推しピ」と推しはほぼ同義語ですが、このように愛情を込めて、あるいはよりカジュアルにくだけた印象を与えるために「ピ」を付けることがあります。

「ピ」は、複数を意味する「people(人々)」から来ています。そのため、応援したい特定の人物やキャラクターだけでなく、複数人のグループのことも指します。

【推し】の類語・関連語

かつてはオタク用語であった「推し」は、2021年に「推し活」が新語・流行語大賞にノミネートされるなどすっかりおなじみの言葉になりました。

日常にうるおいをもたらし、ポジティブなマインドを生み出す推し活そのものが日本の新しい文化になりつつある今、推しにまつわる言葉は日々生み出されています。一緒によく使われがちな類語や関連語を紹介します。

1.沼・沼る

「沼(ぬま)・沼る」は推しができることや、推しにより夢中になることを、簡単には抜け出せない沼に沈んでいく様子と重ねて表した言葉。推しの名前と組み合わせて「○○沼」、時間やお金、情熱を惜しげもなく注ぎ込み抜け出せない状態になることを「沼落ち」などと言います。

2. 担当

「担当」はアイドルグループやアニメのキャラクターなど、複数人で形成されている対象の中で最も推している存在のことを指します。「推しメン」の類語ですが、特に男性のアイドルグループに対して使われることが多いとされます。

派生語として、自分が推している対象のことを「自担(じたん)」、推しが同じ人のことを「同担(どうたん)」、推しが同じ人とは関わりたくないことを「同担拒否」などと言います。

3.リアコ、ガチ恋

「リアコ」「ガチ恋(こい)」は推しに対して、真剣な恋愛感情が湧いていること。リアコは「リアルに恋している」の略、ガチ恋は「ガチで恋している」の略です。

4.古参

「古参(こさん)」は、古くから対象とする存在を応援しているファンを意味します。推しが芸能界で活躍する人物やグループであればデビュー当時(それ以前)から応援している人を指し、作品のキャラクターであれば連載や配信開始時(それ以前)から応援している人を指します。

対義語として、ファンになったばかりの人のことを指す「新参」「新規」「にわか」があります。

おわりに

ここまで「推し」について解説しました。

言葉は生き物といわれるように、世代や時代によって意味が変化し続けています。若者言葉を正しく理解して、日々のコミュニケーションに生かしてみてください。(クリニック未来ラボ編集部)

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