【エモい】の意味とは?
まずは「エモい」の意味から解説していきましょう。
■ エモ・い
[形]《エモはemotional(感情的な)から》俗に、感動的である。強く心に訴える。「―・いメロディー」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「エモい」とは、心を揺さぶられたときに使う若者言葉です。英語のemotional(エモーショナル=感情的)を「エモ」と略したもので、末尾に「い」をつけた形容詞として使われます。
ポジティブ・ネガティブなシーンを問わず、映像や音楽、マンガ、小説などの作品に触れたり、美しい風景を見たりしたときの感想として用いられることが一般的です。強く感情が揺れ動いたときの、言葉では言い表せない複雑な気持ちを表現でき、「感動する」「懐かしい」「ノスタルジック」「情緒がある」「センチメンタル」「哀愁がある」「胸が高鳴る」など、さまざまな感情の置き換え言葉として使用できます。
【エモい】の由来
「エモい」の由来については諸説あります。一つには、1980年代のアメリカで台頭した、激しさと切なさを併せ持つロックミュージックのジャンル「エモ(エモーショナル・ハードコア、エモコア)」が、音楽の枠を超えて広まったといわれています。
もう一つに、「何とも言えない気持ち」を端的に言い表すことから、「えもいわれぬ」「えもいえず」という日本語の古語が語源という説もあります。
「エモい」は、2016年に三省堂の「今後の新語2016」の第2位に選ばれ、2018年にはマイナビティーンズ「2018年10代女子が選ぶトレンドランキング」の「流行ったコトバ」で第1位となりました。その使い勝手の良さから、今ではZ世代のみならず幅広い世代で使われる言葉になりつつあります。
また最近は、Z世代の消費行動のトレンドとして、共感や感動を通じて商品やサービスを購入することを「エモ消費」と呼び、マーケティング業界でも注目されています。
【エモい】の使い方・例文
「エモい」の例文を詳しく見てみましょう。
例文1 懐かしい気持ちになったとき
医師:今度の土曜日は、お子さんの運動会だってね。
スタッフA:はい。実は、子どもが通う小学校は私の母校なんですよ。昔を思い出して、なんだかエモい気持ちです。
スタッフB:それはエモすぎるね。
こちらは「エモい」を「懐かしい」という意味合いで使う例です。過ぎ去った子ども時代のことをしみじみと思い返したり、青春時代やふるさとのようなノスタルジーを感じさせる作品や景色を見て感傷的になったりしたときに使います。
例文2 美しい景色を見たとき
患者:昨日、寒い中でずっと外にいたせいか、風邪をひいたようです。
医師:昨日は冷えましたからね。
患者:夕焼けがめちゃくちゃエモくて、ずっと写真を撮ってたんですよ。
このように、写真に収めたくなるような美しい景色のことを「エモい」と表現します。Instagramなどの写真投稿型のSNSでは、「#エモい写真」などのハッシュタグがあり、ユーザー同士で美しい景色を見たときの感動を共有し合う様子も見られます。
例文3 古き良きものを見たとき
スタッフ:いつも先生は、万年筆で手帳に予定を書いてますよね。超エモい!
医師:君は、予定を何で管理してるの?
スタッフ:スマホです。だからすごく憧れます。
こちらは例文1と似ているようですが、「懐かしい」というよりも、今では廃れている習慣や、昔ははやっていたけれど今はほとんど見ることがないレトロなものを「古き良きもの」として再評価する意味で用いています。
例えば、フィルムカメラや、着物・浴衣、純喫茶、ミニシアター、銭湯などもその対象となります。
例文4 悲しい気持ちになったとき
医師:Aさん、今日は元気がないけど、どうしたのかな?
スタッフA:実は、実家の猫が死んでしまって……。
スタッフB:それはエモすぎる。元気出してね。
「エモい」はポジティブな気持ちだけでなく、「悲しい」「寂しい」といったネガティブな気持ちも「エモい」と表現します。
失恋したときや感動する映画を観たときなど、自分の泣きたくなるような気持ちを表す一方、この例文のように、悲しいことがあった相手の気持ちに共感し、寄り添う意味を含めて使います。
例文5 何とも言えない気持ちになったとき
医師:ご結婚おめでとうございます。
患者:ありがとうございます! 夢が叶った反面、地元を離れるからエモい気持ちでいっぱいで。
医師:あなたなら、きっと大丈夫。
このように、言葉では簡単に言い表せない複雑な感情も、「エモい」の一言で表現できます。言葉の裏には、当人にしかわかりえない、あるいは当人も整理できていない複雑な感情が隠れていることがあります。
「エモい」はとにかく汎用性が高いことからSNS上では「エモい」があふれ返っており、昨今では「エモい」という言葉自体にあまり意味はなく、その場を適当にやり過ごすために使うこともあります。
【エモい】の類語・関連語
「エモい」はスラング(俗語)ですが、昨今は、若者のみならず広い世代で使われています。「使うと語彙力が低下する」などと否定的な意見がある一方、さまざまな感情表現において汎用性が高いことから、古語の「あはれ」や「をかし」と近い意味があるとして評価する向きもあるようです。
似たようなニュアンスで使われる類語や関連語を紹介します。
1.ヤバい
「ヤバい」とは、「すごい」「感動する」「ステキ」などを意味する若者言葉です。本来は、危険や不都合な状況が予測されるときに使われていた言葉ですが、近年はプラス表現の置き換え言葉として使われることも増えています。
「エモい」がしんみりしたときにも使われる一方、「ヤバい」はテンションが上がっているときに使われる傾向にあります。
2.メロい
「メロい」とは、「メロメロになる」「メロメロになるほど魅力的」を意味する若者言葉です。アイドルなど、好きな存在に対してのめり込んでいる状態を表します。
「エモい」が、作品や景色、人物、経験などあらゆることが対象になる反面、「メロい」は特定の人物やキャラクターなどを対象とします。
3.チルい
「チルい」とは、「リラックスしている」「まったりしている」を意味する若者言葉です。語源は、英語のスラング表現である「chill out(落ち着く、くつろぐ)」で、「chill」の末尾に「い」をつけて形容詞として使われます。
「エモい」は心が揺さぶられたときに使いますが、「チルい」は心が落ち着いているときに使います。
4.尊い
「尊(とうと)い」とは、本来は高貴さや崇高さを表す言葉です。しかし昨今は、若者を中心にアイドルやアニメのキャラクターといった応援している「推し」に対して、「素晴らしい」「最高」などと賛辞する際にも使われます。
また、若者が使う「尊い」のよりくだけた言い方として「てぇてぇ」があります。
おわりに
ここまで「エモい」について解説しました。
言葉は生き物といわれるように、世代や時代によって意味が変化し続けています。若者言葉を正しく理解して、日々のコミュニケーションに生かしてみてください。(クリニック未来ラボ編集部)