調査
「開業医の経営・働き方に関する実態調査」
実施時期/2025年9月18日(木) ~9月24日(水)
調査方法/インターネットでのパネル調査
パネル調査委託先/マクロミル
調査対象/全国の30~90代の医科の開業医523人
目次
1.開業医“連携”実態調査
- Q1.病院との連携状況は?
- Q2.クリニック同士の連携状況は?
- Q3.介護施設との連携状況は?
- 編集部“開業医考察”column1/病、診、そして介護との強固な連携が地域医療を長く持続させるための鍵に
2.開業医“人物”実態調査
- Q4.開業医の労働時間とは?
- Q5.開業医の睡眠時間とは?
- Q6.開業医の休日とは?
- Q7.開業医のやりがいとは?
- Q8.開業医の学びとは?
- Q9.開業医の「新薬」の情報収集とは?
- Q10.開業医の「医療」「経営」にまつわる情報収集とは?
- Q11.開業医のシステム導入率は?
- Q12.開業医の広告活用状況とは?
- 編集部“開業医考察”column2/多忙な中、経営を学ぶ開業医が増加 医療DXの推進には世代間の格差が
3.開業医“悩み”実態調査
- Q13.開業医の悩みとは?
- Q14.開業医のスタッフの採用方法は?
- Q15.開業医の採用課題とは?
- Q16.開業医のスタッフ採用のプロセスとは?
- Q17.開業医が行っているスタッフ定着の工夫とは?
- Q18.スタッフの労働環境改善のための取り組みは?
- Q19.開業医の「経営」相談相手は?
- 編集部“開業医考察”column3/3年連続、開業医の悩み1位は「人材」 求められるのは採用・定着施策のアップデート
4.“開業するということ”実態調査
- Q20.開業医の満足感とは?
- Q21.開業した動機とは?
- Q22.開業の準備期間は?
- Q23.開業するために、調達した資金は?
- Q24.開業前の準備は十分だったと思いますか?
- Q25.何歳で引退を希望していますか?
- Q26.引退後承継を考えていますか?
調査データピックアップ
初公開した「開業医白書2023」では、開業医の現実や取り巻く状況を把握し、医療業界の未来を考察するコンテンツとして反響を呼びました。 続く「開業医白書2024」では、「ペイシェントハラスメント(ペイハラ)」を取り上げ、さらなる実態調査を実施。
3回目となる「開業医白書2025」では、これまでの経年変化を追い、より正確な実態の把握をめざしています。また、社会のさらなる高齢化に向け一層重要になってくる「医療連携」を新テーマに加えました。「開業医白書2025」の内容の一部をご紹介します。
「開業医白書2025」で調査した26項目全文は、ぜひページ上・下部のボタンからダウンロードしてご覧ください。
地域医療を支える「連携」――病診・診診・介護の現状と課題
病院とクリニックの病診連携、クリニック同士の診診連携、そして医療と介護の連携――これらは超高齢社会において不可欠な要素です。
今回の調査では、病診連携が「取れている」と答えた開業医は約7割と一見すると高い結果に。しかし、「非常に連携が取れている」のは約2割にとどまり、多くのクリニックではまだ「理想的な病診連携」には課題があると考えられます。さらに、診診連携や介護との連携はそれぞれ「非常に連携が取れている」と回答した開業医は1割以下でした。
病診連携が「非常にうまくいっている」ケースでは、「出身大学や勤務経験のある病院との連携」や「医師会のつながり」「日頃の紹介でのコミュニケーション」といった声に加え、「地域連携室へのあいさつや情報交換をしている」「交流の場に顔を出すようにしている」といった積極的な動きをする開業医も多く、密なコミュニケーションがスムーズな連携につながっているようです。
クリニック同士の診診連携では、医師会のつながりを活用している声が多く、医療介護連携ではケアマネジャーを介した連携に取り組んでいるという回答もありました。
一方で「診療所同士は、医師会の活動以外では交流の場があまりない」「介護施設との顔の見える関係性づくりがなかなかできない」といった声も。
どの連携についても必要性を認識してはいるものの、顔の見える関係づくりや情報共有の難しさが課題と考えている人も少なくありません。今後さらに高齢化が進む中、連携強化は地域医療の持続に欠かせないテーマといえるでしょう。



開業医の悩み1位は3年連続「スタッフ採用」 人材確保がますます課題に
開業医の悩みで最も多かったのは、今年も「スタッフ採用」で54.5%が回答。2023年調査、2024年調査でも同回答が1位で、今年の調査で3年連続での「悩み1位」となりました。
その悩みの内訳(スタッフ採用上の最大課題)をひもとくと、特に「応募者が少ない」という声が目立ちます。他の理由と比較しても圧倒的に高く、全体の約4割が回答しています。次点以降は、「採用ノウハウが少ない」「ミスマッチ・早期退職者が多い」と続きます。
さらにクリニックの「採用方法(手段)」を深掘りすると、「ハローワーク」が60.2%で最多、次いで「知人紹介」31.9%「求人検索エンジン」31.4%と続きます。
しかし年代別に見てみると、70代以上では「ハローワーク」72.8%「求人検索エンジン」20.9%「知人紹介」40.0%である一方で、40代以下は「ハローワーク」49.2%「求人検索エンジン」40.4%「知人紹介」27.5%と、開業医の年代により、使用する採用方法に大きな違いが見えました。
都市・地方別でも見ても、スタンダードとなっている採用方法には差異があり、今後「クリニックの採用方法」は変化していくという兆しが見えました。


スタッフの労働環境改善の主流は「賃金上げ」と「ワークライフバランスへの配慮」
開業医の約9割がスタッフの労働環境改善に取り組んでおり、その中心は「賃金の向上」で、改善を試みている7割以上の開業医が実施しています。最低賃金見直しなどの影響もあり、給与改善は「せざるを得ない」必須課題となっているクリニックも少なくないでしょう。
次点以降の「労働時間の削減」や「年次有給休暇取得の義務化」「福利厚生の拡充」といったワークライフバランスを意識した取り組みは、それぞれ3割を超える開業医が実施。家族行事を優先できる柔軟な勤務体制や心理的安全性の確保など、働きやすさを重視する動きが広がっています。
こうした背景には、人材不足が深刻化する中で「長く働いてもらうための環境づくり」が不可欠という現実があります。条件面の改善だけでなく、職場の風通しや公平性を高める取り組みを始めているクリニックも多く、今後はハード面とソフト面の両立が求められるのではないでしょうか。


採用の「書類選考なし」が約3割 一方面談や職場見学でミスマッチ防止を図るクリニックも
採用プロセスにおいて、約3割のクリニックが「履歴書の事前提出」がなく、約4割が「職務経歴書の事前提出」がないという結果から、3割以上のクリニックでは書類選考を行わず、面接を重視する傾向が見られました。
一般的には「必須」となっている書類選考ですが、クリニックの形態や募集規模、採用者である開業医の多忙さなどが要因になっているようです。
一方で、ミスマッチ防止のためか、「院長以外のスタッフとの面談」(44.7%)や、少数ながら「院内見学の機会を設ける」(20.3%)クリニックも。「スタッフ採用」に悩む開業医が圧倒的多数の中、「採用」自体への変化が見られています。
