「親の認知症」に関するアンケート調査|20代~40代が感じる不安や、知りたいこととは?【前編】

「親の認知症」に関する不安

介護にまつわるさまざまな問題とともに、広く知られるようになった「認知症」。内閣府公表の高齢者白書(平成28年版)によると、2025年には65歳以上の高齢者の認知症患者数が700万人(5人に1人の割合)となることが見込まれるなど、さらなる増加が懸念されています。そのような中、2023年9月にはアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」の国内での製造販売が正式承認されました。認知症治療のさらなる発展に期待を寄せているドクターも多いのではないでしょうか。

一方、認知症が身近になったことで、20代~40代の若い人たちの中にも将来的な親の介護を考えたときに、認知症について頭をよぎる人が増えているかもしれません。では実際のところ、これらの世代では、親の認知症リスクを現実問題としてどれほど意識しているものなのでしょうか。

そこで、医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」では、「認知症に関する調査」(※)を実施。65歳~70歳の親を持つ20代~40代の人たちの、親の認知症リスクとの向き合い方、そして認知症の早期発見や情報提供において、かかりつけ医が果たすべき役割について、前後編の2回にわたって紹介します。
前編では、親がいずれ認知症になるかもしれないことに対する思いと、親との認知症に関する会話の実情をひもときます。

6割超が「自分の親が認知症になること」に不安を感じた経験がある

「もし自分の親が認知症になってしまったら」と不安に思った経験

実際にはまだ認知症になっていないにもかかわらず、「もし親が認知症になってしまったら……」と不安感を抱いたことのある人が63%にも及んでいます。さまざまなメディアを通じて認知症について見聞きする機会が増えたからこそ、「自分の親もいつか認知症になるかもしれない」と想像をめぐらす人も多いのでしょう。

また男女別で比較すると、女性のほうが「不安がある」と回答した割合が10ポイント近く高いという結果に。これは、女性が介護を担うケースが多いという実情が回答にも影響していると考えられます。 それでは、その不安の中身について次項で見てみましょう。

具体的な不安の上位は、周囲の負担や介護のストレス、お金のこと

親の認知症を想像する時、不安を感じる内容

不安に感じていることの上位に挙がったのは、さまざまな負担に関する内容です。ただし、年代別では順位に若干の違いがあり、20代や30代は「日常生活が困難になることでの周囲の負担」が最も多い一方で、40代に限定すると「介護による自分のストレスや精神的負担」が1位でした。年齢を重ねるにつれて、自分事として介護を想像している人が増えているのかもしれません。

また、さらに具体的に聞いた際に、「認知症を患った祖母の介護で母親が疲弊していたので不安」というエピソードを挙げてくれた人(60代の両親を持つ30代女性)もいました。介護で苦労している親の姿を見たことが、不安の要因となっているケースは少なくないと思われます。

認知症について話したことがあるのは4人に1人。実の親でも話題に挙げにくい

自分の親と認知症に関する話をした経験

ここからは、自分の親と実際に認知症に関する話をした経験について見ていきます。

親の認知症に不安を抱いている人が6割超だったのに対して、親との会話で認知症を話題にしたことがある人は約25%という少ない結果でした。親子とはいえ、デリケートな内容なので話しづらいという心境がうかがえます。 「ない」と答えた人の中には、「親とは仲が良いものの、本人が自分事とは捉えていない様子なので、自分から口火を切るのは難しいです。万が一のときや介護に備えて、しっかり話し合っておきたいのですが……」(60代の両親を持つ40代女性)という悩みの声もありました。「介護する側・される側」という将来の当事者同士が、認知症について気軽に話し合える環境づくりが課題といえるでしょう。

話す内容は症状や生活、予防方法が上位。身の周りの人たちへの言及は避ける傾向に

認知症に関して親と話した内容

前編の最後に、前項で「自分の親と認知症に関する話をしたことがある」と答えた人たちに聞いた、会話の内容を見ていきましょう。上位には認知症になったときの症状や生活、予防方法などが挙がっています。認知症の基本情報といえるような内容は、比較的話題にしやすいのかもしれません。

一方、下位についても興味深い傾向が見られ、親や自分自身、身近な人といった特定の人と認知症を結びつけるのは避けがちであることがうかがえます。早期発見方法についても話題にしている人は少なく、子どもから親に認知症リスクへの自覚を促すのは容易ではないという現実が見て取れます。

【前編まとめ】親と子、気軽に認知症を話し合える環境づくりが求められている

前編では調査結果をもとに、親の認知症に関して子どもがさまざまな不安を抱えていること、そして親とは認知症について話しづらい実情を紹介しました。認知症は患者本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を与えるため、日頃から予防や早期発見に向けて取り組めるように、家庭内でも話し合うことが望ましいのはいうまでもありません。しかし、現実的には子ども側から親に話を切り出すのはハードルが高いことがわかりました。

一方、親のほうから認知症の話を切り出してくれれば、親子で認知症に向き合うきっかけになるかもしれません。親にかかりつけ医がいる場合、信頼しているドクターから認知症リスクへの自覚を促すアドバイスなどをもらえれば、親も受け入れやすく、家庭内でも話しやすくなることが期待されます。そのためには、かかりつけ医が患者の日頃の健康状態を把握し、患者の変化に気づけるような関係づくりが欠かせません。

また、話しにくい話題だからこそ、ドクターからの正確な情報提供があれば子どもの不安も軽減するでしょう。 次回の後編では、子ども側が認知症に関する情報収集を、どの程度、どのような手段で行っているのかを紹介。子どもが不安を感じがちなのは情報不足の現状に原因が考えられますが、実際どのように情報収集しているのかを明らかにします。(クリニック未来ラボ編集部)

※ドクターズ・ファイルによる「認知症に関する調査」。対象は、全国主要都市の、65歳〜70歳の親を持つ、20歳〜49歳の男女500人。2021年12月27日~2022年1月7日にインターネット調査にて実施。

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