クリニックの福利厚生って、どんなもの?《スタッフ定着率の高さにはワケがある!福利厚生レポート》【第1回】

福利厚生レポートvol.1

超高齢社会による医療ニーズの増加などを受け、人手不足が深刻な医療業界。多くの求職者が、より良い労働条件を求めて職場を探しています。そうした中、近年では優秀なスタッフに選ばれ、長く働き続けてもらう環境をつくるために、福利厚生の充実化を進めるクリニックも増えています。

そこで本稿では、「スタッフ定着率の高さにはワケがある!福利厚生レポート」と題して、スタッフのための福利厚生が手厚いクリニックや、ユニークな福利厚生を取り入れているクリニックを、シリーズで紹介していきます。

第1回は導入編として、福利厚生の定義や具体的な内容について解説します。

スタッフのモチベーションアップにつながる福利厚生とは?

福利厚生とは、企業が従業員に提供する給与以外の報酬、従業員とその家族をサポートするサービスの総称のこと。従業員の経済的支援やモチベーションの向上を目的に設けられており、従業員を雇用する事業主であれば、正社員に限らず、契約社員やパートタイム労働者などに対しても提供が必須となります。

2020年7月に発表された独立行政法人労働政策研究・研修機構の「企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―」によると、「現在の勤め先を選ぶときに、福利厚生制度の内容を重視したか」という質問に対して、全体の35.7%が、「非常に重視」もしくは「ある程度は重視」と回答しています。

なかでも、特に高かったのが20代、30代の女性で、20代女性では55.4%、30代女性では43.3%もの人が、「非常に重視」もしくは「ある程度は重視」と回答しています。一般的に職場を選ぶにあたって「福利厚生を重視している」という声が多く聞かれますが、医療機関に勤務するスタッフについても例に漏れず、職場を選ぶ際の、大事な基準の一つとなっているでしょう。

福利厚生には、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があり、前者は、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料など、法律で義務づけられているもの。後者は、企業が独自に設けているもので、どのような制度を取り入れるかは企業の自由です。

「福利厚生が充実している企業」と評される場合、法定外福利厚生が充実しているところが多いでしょう。本稿では、この「法定外福利厚生」に着目していきたいと思います。

クリニックの法定外福利厚生にはどんなものがある?

厚生労働省は、企業が独自に設ける「法定外福利厚生」を8つに分類しています。クリニックではそれぞれどのようなものがあるのか、一つずつ見ていきましょう。

1 住宅関連

家賃補助や住宅手当、独身寮の提供といった、住まいにかかる費用の補助。一律額で支給するか、扶養家族の有無ほか従業員の状況に応じた額を支給するかなど、導入の条件や支給額はクリニックが自由に設定できます。住宅に関わる出費は大きな負担となるので、導入することでスタッフのモチベーションアップにつながるかもしれません。

2 健康・医療関連

スタッフの健康をサポートするための補助。人間ドックや健康診断の費用負担のほか、パーソナルトレーナーのいるスポーツジムへの入会費補助、クリニック内スポーツサークルの活動費負担といったものも。医療従事者だからこそ、健康管理を大切にしているスタッフは多そうです。

3 慶弔・災害関連

慶事や弔事をはじめ、スタッフに何かあったときの援助。スタッフが結婚した場合、本人または身内に不幸が起きた場合などの慶弔・災害見舞金、病気やけがにより入院した際の傷病見舞金、スタッフに万が一のことがあったときに遺族年金などを支給します。子育て世帯のスタッフにはうれしい出産祝金や子どもの入学祝金を支給するクリニックもあります。

4 育児・介護支援関連

育児・介護と仕事の両立をバックアップ。法律で定められた育児休業とは別に付与する育児休暇、託児・保育施設の整備、法定外の介護休暇などがあります。育児や介護をしながら働いているスタッフにとっては注目度の高い制度といえるでしょう。

5 自己啓発・能力開発関連

スタッフ各自のスキル向上をサポート。スタッフ向けセミナー・勉強会の実施、資格取得のための費用負担、学会参加費の補助などが挙げられます。ほかに、自己啓発・能力開発のために年間休日数を多く設定しているというクリニックも。スタッフ個人のスキルアップを後押しすることで、クリニック全体のレベルアップにもつなげられそうです。

6 文化・体育・レクリエーション関連

日頃の労をねぎらうための取り組み。新型コロナウイルス感染症の流行前は、慰労会や忘年会、新年会、歓送迎会、誕生日会、海外への社員旅行などを行っていたクリニックが多いようです。 スタッフ間コミュニケーションを充実させるため、スタッフのパートナー同士が食事会をするというユニークな会を開催していたクリニックも。ほかには、保養所の割引利用なども該当します。

7 財産形成関連

財政面での支援。従業員のライフプランを考えた財形貯蓄制度、企業が給与から一定額を天引きして従業員の貯蓄を代行する社内預金などがありますが、導入しているのは主に規模の大きな病院で、クリニックが取り入れている例は少ないようです。

8 その他

リフレッシュのための各種取り組み。昼食手当、飲み物・お菓子の無料提供のほか、ゆったりとした気持ちで休憩できるようスタッフルームを広くとる、おいしいランチを楽しめるよう炊飯器やオーブントースターを設置する、といった院長の心遣いも法定外福利厚生に含まれます。いつも頑張ってくれているスタッフに対する感謝の気持ちを、それぞれの院長らしいやり方で、具体的な形として表しているようです。

     ◇    ◇    ◇

以上のように分類されている「法定外福利厚生」。優秀なスタッフの「このクリニックでずっと働きたい!」という気持ちを後押しするような制度といえるでしょう。そして、スタッフが生き生きと働くクリニックは、患者にとっても気持ちがいいものです。仕事や職場に対するスタッフの充実感は、クリニックに対する患者の満足感にもつながるのではないでしょうか。

次回以降は、それぞれのクリニックがどのような福利厚生を取り入れているのか、各クリニックへの取材を通して具体的に紹介していきます。お楽しみに!(クリニック未来ラボ編集部)

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