スタッフのモチベをアップさせる!院内休憩室6つの工夫【後編】

モチベーション

近年は、従業員の働くモチベーション向上や雇用の継続率アップを図るため、休憩室の質にこだわる企業が増えつつあります。こうした試みは、コロナ禍で心身ともにスタッフへの負担が大きいクリニックにも求められているのではないでしょうか。

そこで「クリニックスタッフのモチベをアップさせる!院内休憩室6つの工夫【後編】」に引き続き、後編でもクリニックで働き、日々、休憩室を利用している男女の看護師4人にヒアリング。彼らが残念に感じる休憩室のポイントを例に、快適さがアップするちょっとした工夫について紹介します。

〈休憩室事情を聞いた看護師〉
■Sさん
30代女性。看護師歴6年。15人程度が勤務する呼吸器内科クリニックにて、フルタイムで勤務している。勤務年数は2年目。新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、発熱の外来を担当。業務中は立ち続けているため、休憩室は、椅子に座ってゆっくり足を休ませられるようにしてほしいと思っている。

■Yさん
20代女性。看護師歴7年。10人程度が勤務する内科クリニックにて、フルタイムで勤務している。職場の休憩室は15畳ほどだが、更衣室としても使われるためロッカーが置いてあり、狭い印象がある。業務のことを考えずにゆっくり休める休憩室を望んでいる。

■Kさん
30代男性。看護師歴10年。15人程度が勤務する小児科クリニックの看護師としてフルタイムで勤務を始めて2年目。コロナ禍ということもあり、休憩室に窓がないことが気になっている。区画を分けて1人で食べる黙食など、密にならないよう工夫はしているものの感染の不安を拭えないでいる。

■Aさん
30代女性。看護師歴11年。15人程度が勤務する整形外科クリニックで看護師としてフルタイムで働いている。休憩室でスタッフ同士、たわいのない話をすることが好き。今の職場の休憩室に対して不満はなく、新型コロナの感染に気をつけながら、皆で楽しく笑って過ごせる休憩室が理想。

【残念な休憩室4】業務用の物品・機器が置かれ、狭くて体が休まらない

前編では3つの残念な休憩室を紹介しました。4つ目に紹介するのが、物品や段ボールがあふれ、休憩スペースが十分に確保できない休憩室です。クリニックで働く看護師たちの声がこちら。

Sさん:コロナ禍になってから窓がある部屋を休憩室に変更してもらったんですが、そこはもともと業務で使うマスク・手袋・ガーゼや機器を管理している場所でした。小さい物品は前の休憩室だった部屋に移せましたが、大きな機器は移動が難しくそのままにしてあります。今はもう慣れましたけど、最初は休むスペースの確保に苦労しましたね。「機器さえなければもっとゆったりと休憩室が使えるのに……」と思っています

Yさん:私のクリニックには大きな病院のように物品専用の倉庫がありません。なので、休憩室にも物品を置かないとスペースが足りないのはわかっているものの、それでも決して気持ち良いものではありませんね。休憩中に物品を見ると仕事のことを思い出してしまいますし、気持ちの切り替えもしづらいです

Kさん:前の職場は休憩室に段ボールを置き続けたことで、夏は害虫駆除が欠かせませんでした。特に段ボールはゴキブリやチャタテムシにとって最高のすみかになるらしいです。なので、昼食時もご飯を食べこぼさないように気をつけていました。虫が出たら休憩どころじゃなくなるので。

Aさん:今の職場の休憩室は、スペースの半分が段ボールで埋め尽くされています。「患者さんから見えない所に置きたい」という院長の希望なのですが、「何もスタッフが過ごす休憩室に置かなくても……」という気持ちです。部屋は窓を開けていても段ボールの匂いがしますし、夏は段ボールから虫がたくさん湧いたりするので悲惨です……

ON/OFFのめりはりをつけるためにも、整理整頓をし、休憩スペースをできるだけ広く確保することが大事なことがわかります。また、業務に必要なものが入っているとはいえ、段ボールをそのままにした結果、くつろぎの場に虫が湧いてしまうのは避けたいところです。せめて物品が届いたら中身だけを保管し、段ボールはすぐ捨てるようにすれば、虫の問題は解決するかもしれません。

【残念な休憩室5】観葉植物や花などグリーンがなく、気分がふさぎがちに

休憩室に緑がなく、どこか殺風景な雰囲気が出てしまうのもスタッフにとっては不満を感じるポイントとのこと。SさんとAさんからはこのような声が届きました。

Sさん:今の職場の休憩室は、積み重なった医療用の機器以外何も置いてないので、休憩室というより物置にいるような感じがして、居心地が良いとはいえません。特に疲労やストレスが溜まっている日に休憩室にいると、気持ちが暗くなってしまいます。観葉植物が一つ部屋の中にあるだけでも、休憩室の見栄えはかなり変わるのではないかなと思っています。

私自身も植物が好きなので、一つでも置いてあるとそれを見ながらゆっくり心身を休めることができます。実際に従業員のストレス緩和を目的に、緑あふれる空間をイメージしたオフィスに改装している企業もあると聞いたことがあるので、クリニックにもその波が来るとうれしいです。

Aさん:以前、院長が観葉植物を買ってきて休憩室に置いたことがあります。最初は「なんで?」という気持ちがあり、「ただでさえ休憩スペースが取りづらいのに植物なんて!」という声も挙がっていました。

ただしばらくして植物が成長していくと、休憩時間にその話で皆と盛り上がるようになったんです。それまでの休憩室は、飾り気がなくてどこか寂しく、午前中の業務疲れもあって殺伐とした休憩時間でした。そのため、午後の業務でもぴりぴりした雰囲気で、ちょっとしたことでスタッフ同士のけんかが始まることもあって……。今はみんなで植物の成長を見守るのが楽しく、休憩時間が穏やかになった気がします。

昨今、オフィスの緑化がストレス緩和や疲労の軽減につながり、休憩の効果を高めるといわれているように、休憩室に観葉植物を置くことに対してプラスの声が聞かれました。ただしその一方、「害虫の駆除や間引きなどが必要な場合、誰が世話をするのか?」「花粉症持ちなので観葉植物は置かないでほしい」といった声もありました。まずは造花や人工観葉植物など、世話や花粉症の心配が少ないものをインテリアとして飾ってみてはいかがでしょうか。ぜひ検討してみてください。

【残念な休憩室6】室内や冷蔵庫の掃除がされておらず、不衛生な状態

待合室や診察室がきれいでも、患者の目にはふれない休憩室までは掃除が行き届かず、汚れているクリニックもあるようです。看護師たちからも不満の声が聞かれました。

Sさん:前の職場は、休憩室の掃除当番が決まっていて定期的に掃除されていました。しかし、今の職場に入職した当初は掃除当番の制度がなく、休憩室も埃まみれでした。今は掃除当番制度が設けられたのできれいになりましたが、汚いままの部屋だったら辞めていたかもしれません。

Yさん:私は、通年性アレルギー性鼻炎を持っていて埃にかなり敏感です。なので掃除が行き届いていない休憩室に居続けると、くしゃみ、鼻水のオンパレード。午後の業務効率やモチベーションの維持にも支障が出てしまうので、休憩室のきれいさはかなり重要ですね。

Kさん:前の職場は、休憩室に置いてある冷蔵庫が整理整頓されていませんでした。よく消費期限が切れた食品や調味料が発掘されたのを覚えています。異臭もしていましたし、とても心地が良い空間とは言えませんでした。前の職場を辞めた理由の一つにもなっています。掃除当番がないところは、早めに決めて清潔な状態を維持したほうがいいと思います。

Aさん:今の職場に入ってすぐに、休憩室の冷蔵庫からコバエが湧いてパニックになった経験をしました。冷蔵庫の中に長い間入っていた食べ物が原因だったのですが、スタッフ皆「いつか誰かが整理してくれるだろう」と思っていたようです。そのような経験を二度としたくないので、今は定期的に休憩室の冷蔵庫は掃除するようなりました。休憩室はスタッフ皆が過ごす場ですし、もし新人のスタッフが入職してきたとき、冷蔵庫の汚さを見てがっかりされたくないので、きれいな状態は維持しておきたいです。

誰でも、不衛生な部屋で休憩したいと思う人はいないでしょう。看護師たちの声にもあるように掃除当番を決めることがすぐできる対策かもしれません。まだ掃除当番が決まっていないクリニックは、休憩室を利用しているスタッフに提案をしてみてはいかがでしょうか。

【番外編】実現されたら、もっと働くモチベ向上につながる3つの方法

ここまでの内容は、スタッフがすぐにでも改善してほしいと思っている残念ポイントと一工夫の紹介でした。最後に、実現されるとよりスタッフの働くモチベーション向上につながる方法を紹介します。

看護師たちに取材をする中で、「欲をいえば、ここまで環境が整っていたらうれしい」という例が3つ挙げられました。それが「ウォーターサーバー」「無線LANルーター」「無人決済型コンビニ」です。

Sさん:待合室にウォーターサーバーが設置されているクリニックは見かけますが、業務中にスタッフがそこに水をくみに行くのははばかられるので、水分補給が手軽にできるように、休憩室にもウォーターサーバーがあるとうれしいですね。特に夏場はクーラーが効いている屋内でも喉が渇くので、熱中症対策として勤務中のちょっとした休憩時に飲めるといいなと思います。

Kさん:業務用として使われている無線LANを私用で使うのは、セキュリティー上問題があると思うので、休憩室にスタッフ専用の無線LANルーターがあったらありがたいです。休憩中にデータ通信量を気にせず動画や音楽を楽しめるようになり、スタッフの良い気分転換にもなると思うので

Aさん:いろいろな企業に導入されつつある設置型のミニコンビニがあると、小腹が空いたときなどに、ちょっとしたお菓子もコンビニに行かずに買えるのでいいなと思います。制服から私服に着替えて買いに行く手間も省けるので、休憩時間がしっかり確保できるのもメリットです。あと、災害時には備蓄対策にもなります。

これら3つの方法は、経済的負担や設置に時間を要し、すぐに実現するのは難しいかもしれません。ただ実現できれば、他のクリニックとの差別化が図れ、スタッフ思いのクリニックとしてのアピールポイントにもなります。休憩時間がより充実したものとなり、「もっと頑張ろう」「いつまでもここで働き続けたい」とスタッフの満足度を高められるでしょう。スタッフの休憩室をより満足度の高い場所にしたいと考えているクリニックは、導入を検討してはいかがでしょうか。

【後編まとめ】できることからこつこつと改善を。スタッフが鋭気を養える休憩室に

前後編に分けて、看護師たちの生の声をもとに休憩室の残念ポイントと改善するための一工夫を紹介しました。

コロナ禍により、大きな病院だけでなくクリニックで働く医療従事者にも大きな負担がかかっています。休憩時間はそんな大変な日々から解放される大切なひと時であり、休憩室はスタッフにとって鋭気を養う場です。ぜひ本稿を参考に、できるところから休憩室の改善を検討してみてください。

<執筆者プロフィール>
トヤカン
フリーライター。正看護師として、大学病院での勤務を経てライターの道に。医療現場で培った経験をもとに、医療従事者向けのメディアを中心に記事を執筆している。甘味に目がなく休みの日は和洋問わず甘味巡りに没頭。

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