若者言葉「とりま」の意味は?例文つきの解説でわからないモヤモヤを解決!【第5回】

若者言葉「とりま」の意味

「今の言葉、どういう意味だろう?」「聞き返したら、気分を悪くするかな?」。10代・20代との日常会話やSNSでのやりとりの中で、馴染みのない「若者言葉」に戸惑った経験はないでしょうか。

医師がわざわざ使う必要はありませんが、若者言葉の意味を正しく知ることは、年齢の離れた患者やスタッフの物の見方、考え方への理解をぐっと深めるはずです。本コーナーでは、巷でよく使われている若者言葉について、例文を用いて解説。

今回取り上げるワードは、「とりま」 です。

【とりま】の意味とは?

まずは「とりま」の意味から解説していきましょう。

「とりま」とは、「とりあえず、まあ」を略した若者言葉です。「ほかのことはさておき」を示す「とりあえず」と同じ意味で前置きとして、「とりま飲もうか」「とりま、連絡して」のように用いられます。

「まあ」は、相手の言い分を軽く抑えたり、フォローするときに使う「まあ、まあ」や「まあね」などといった具合に用いられたりする副詞ですが、「とりま」には、この意味も含まれていると考えていいでしょう。

「とりあえず」よりも堅苦しさがなく、友だちなどフランクな間柄で使われるカジュアルな表現です。会話の中で話題を変えたいときや、提案したいことがあるとき、また、会話の内容を要約・強調したいときに、「とりま」がクッション言葉となり、緩衝材のような役割を果たします。

一方で、「とりあえず」の意味を持たないこともあり、「えっと」というようなニュアンスで、単に会話をつなげるために用いられることもあります。

【とりま】の由来

「とりま」の由来は、ギャルと呼ばれる若い女性の間で生まれた、いわゆる「ギャル語」で、2000年代前半頃から使われていたようです。

スマホやSNSの普及により、ネット上でも広く使われるようになり、若者の間で定着したとされています。どこかの方言だと思っている人もいるようですが、そうではありません。

「とりま」はギャル文化から誕生していることから、相手によっては軽薄な印象を与えかねない言葉でもあります。

【とりま】の使い方・例文

「とりま」の例文を詳しく見てみましょう。

例文1 話題を変えるとき

スタッフA:今週は忙しかったね。
スタッフB:やっぱり、冬場はインフルエンザの患者さんが増えるね。とりま、明日は休みなので、ゆっくりしよう!
医師:今週の業務、本当にご苦労さま。

話題を変えるときに「とりま」を使う例です。「ほかのことはさしおいて」を意味する「とりあえず」と同様に用いられており、前の会話から違う話題に変えるときに、間に挟むクッション言葉として機能しています。

例文2 強調したいことがあるとき

患者:頭も痛いし、お腹も下しているし、とりま熱があって。
医師:熱は何度ですか?
患者:家で測ったら38度を超えていました。

「とりま」の後に続く言葉を強調したいときに使う例です。「ほかのことはさしおいて」を意味する「とりあえず」や「とにかく」などと近いニュアンスで使われており、最も重要なことを伝えたいときに用いられます。

例文3 会話を要約するとき

医師:明日はスタッフのAさん、Bさん、明後日はBさんとCさんが出勤ね。
スタッフ:とりま、明日はCさんが休みなんですね。

こちらは、会話を要約するときに使う「とりま」の例です。相手の会話の中から、自分の知りたかったことだけを抜き出して確認する意味では、「つまり」と似たニュアンスですが、「とりま」のほうが、より砕けた、柔らかな表現になります。

例文4 提案するとき

スタッフA:これ、患者の○○さんの忘れ物じゃない?
スタッフB:とりま電話で確認してみます!
医師:ありがとう。頼んだよ。

次の行動を提案するときに用いられる「とりま」の例です。ぐずぐずしている場合ではないとき、すぐに取りかからなければならないことがあるときに用います。「なにはさておき」を意味する「とりあえず」と同様のニュアンスで用いられています。

例文5 意味なく使うとき

医師:では、お薬を処方しておきますね。
患者:とりま帰ったら寝ます。
医師:お薬を飲んでからお休みくださいね。

「とりま」を深い意味なく、単なる会話のつなぎとして用いる例です。相手の言葉を受けて発する前置きの「じゃあ」や、相手の発言を軽く抑えるときに使う「まあ」など、さまざまなニュアンスで用いられます。

【とりま】の類語・関連語

「とりま」は、ギャルの間で生まれた造語で、使われ始めてから20年以上も経ちます。メールやSNSで連絡を取り合うことが多い現代の若者にとって、長い言葉が略され、それが当たり前に使われるようになるのは自然なことなのかもしれません。

このように、若者たちの間で自然発生的に生まれた略語はほかにもたくさんあります。類語や関連語を紹介しましょう。

1.マ?

「マ?」とは、「マジ?」の略語。「マジ」とは、驚きとともに用いられる「本当」を意味する言葉で、「マ?」を丁寧に言い換えると、「本当ですか?」という表現になります。

活用形として、「こマ?(これ、マジ?)」「そマ?(それ、マジ?)」もあります。

2.り

「り」とは、「了解」の略語。「了解」→「りょ」→「り」と、一文字に変化を遂げた若者言葉です。メールやSNSでやりとりをする際に、相手からの質問や提案にできるだけ早く返信するために縮まっていったと考えられます。

3.あーね

「あーね」とは、「あー、そうだね」「あー、なるほどね」「あー、確かにね」などの略語。相手の発言に共感したり、納得したりするときの相槌として使われる一方、返事が面倒なときの適当な相槌として使われることもある言葉です。

4.それな

「それな」とは、「そのとおり」「まさにそう」「そうそう」など、相手の発言に共感を示したり、納得したりするときに使われる若者言葉です。「あーね」と同様、相槌として使う人がいます。

おわりに

ここまで「とりま」について解説しました。

言葉は生き物といわれるように、世代や時代によって意味が変化し続けています。若者言葉を正しく理解して、日々のコミュニケーションに生かしてみてください。(クリニック未来ラボ編集部)

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