感染対策として、クリニックの5割が予約制を導入している
まずは、クリニックにおける予約制の導入状況について見てみましょう。
医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」が行った調査(※1)によると、新型コロナウイルス感染症対策をきっかけとして、Web予約を含む予約制を導入したクリニックは50.4%と、その広がりは今後も予想されます。
一方でユーザーは、Web予約のどんなところに魅力を感じているのでしょうか? また、どんなところに物足りなさを感じているのでしょうか? 次からは、ドクターズ・ファイルが行ったWeb予約の利用状況に関する患者調査(※2)から、患者のニーズをひも解いていきます。
患者の6割超がWeb予約経験者。3人中2人がWeb予約の有無をチェック
最初に、患者の間でWeb予約がどれほど浸透しているのかを見ていきましょう。上のグラフを見ると、医療機関利用者のうち、ほぼ3分の2がWeb予約経験者であることがわかります。年代別で見ると、20~30代では約8割が利用。40~50代においても半数以上の人が利用したことがあると回答しており、世代の偏りは多少あるものの、幅広い層に利用されている印象を受けます。
クリニックを探す際、患者の5~6人に1人がWeb予約を重視
医療機関を探す際、Web予約を重視している人は18.0%。つまり5~6人に1人は、診療内容とともに予約方法をクリニック選びの基準にしていることがわかります。
さらに、「重視はしていないが確認はしている」という層を含めると、実に7割近くがWeb予約の有無を気にするという結果に。これは、スマホなどが普及したことで、より手軽に予約ができるようになった結果かもしれません。
患者が感じるWeb予約の一番のメリットは、「待ち時間の短縮」
では、Web予約の魅力はどんなところにあるのでしょうか。ここからはWeb予約の利用経験者に聞きます。
Web予約の利点を問うと、一番多かったのが、予約システムの本来的な目的でもある「待ち時間の短縮」。そして、ネットならではのメリットとして「電話をせずに済んだ」「時間や場所にとらわれない」「順番・待ち時間を随時確認できた」が続きます。仕事に家事、育児、介護と忙しい現代人は、「貴重な時間を有効活用できるツール」として、Web予約に従来の電話予約にはなかった魅力を感じるようです。
かかりつけ医でも初めてかかる医療機関でも、Web予約に対する患者の需要は変わらない
次に、Web予約を利用した医療機関について聞くと、かかりつけ医かどうかを問わず利用していることが判明。かかりつけ医でも初めてかかる医療機関でも、Web予約に対する需要は変わらないようです。
しかし、こだわらない人たちがいる一方、かかりつけ医以外の医療機関という回答の中には、「本当はかかりつけ医がいいが、やむを得ず」という本音が隠れている可能性も。その理由は、後述します。
利用者の9割以上が「また利用したい」。一度使えばリピートの可能性大か
前項で挙がった多様な利点もあってか、93.0%もの人が今後もWeb予約を「利用したい」と答えています。
その反面、1.0%と少数ではありますが、「もう利用したくない」という不満の声があるのも事実。そのデメリットの中身を見ると、「結局待ち時間が長い」「直前の予約ができない」「イレギュラーな依頼ができない」「結果的に電話応対が必要だった」などに続き、「Web予約をしたにもかかわらず、受付の人が認識しておらず手間取ってしまった」というケースも。
いざ予約システムを導入する際には、スタッフが常に予約状況を把握できる仕組みづくりも必要かもしれません。
患者がWeb予約を利用しない一番の理由は、「医療機関が対応していないから」
続いて、Web予約の潜在ニーズを探るべく、Web予約を使わない理由にも目を向けてみましょう。ここからは、Web予約を利用したことがない未経験者に聞いていきます。
Web予約を利用しない理由には、急を要する際の利用しづらさや、個人情報の入力など「ネット」そのものに対する不安などが散見されました。そんな中、特に目立った理由は「通っている医療機関が対応していない」。つまり、意図的に使わないのではなく、選択肢がなかったという人が少なくないのです。
これは前述した「Q利用経験者に聞きます。どんな医療機関で利用しましたか?」の結果とも関連する部分で、裏を返せば、Web予約の有無にかかわらず「いつでも、かかりつけ医に診てもらいたい」という患者の高いニーズが浮き彫りになったといえるでしょう。
未経験の患者の半数以上がWeb予約に興味あり
最後の質問です。では、もしWeb予約が利用できる状況にあったなら、どうでしょう。「今後は利用したいか?」の問いに対し、未経験者のうちの半数以上の人が「利用してみたい」と回答しています。「機会さえあれば」と考える人は、意外と多いようです。
コロナ禍において、あらゆる物事が急速にオンライン化している今、「受診のための予約」という生活に密着した行動についても、「ネットであること」にハードルを感じなくなっているのではないでしょうか。
【まとめ】
飲食店や宿泊施設のみならず、今や医療機関でも活用されているWeb予約。今回の調査結果からは、いつでもどこでも予約ができるメリットがあり、Web予約の有無を重視する人も一定数いることから、着実にユーザーたちに浸透してきているといえます。
一方で、急を要する状況下では、直接的にコミュニケーションが取れる電話予約が役に立つことがあるのも確かです。 生活のデジタル化やコロナ禍によって、目まぐるしく変わっていく時代のニーズを的確に捉えつつ、患者がその時々の状況に合わせて手段を選べる柔軟な予約体制の整備が、今、求められているのかもしれません。(クリニック未来ラボ編集部)
※1 ドクターズ・ファイルによる「新型コロナウイルス感染拡大における医院運営への影響とその対策」に関するインターネット調査。調査対象は開業医、有効回答数は119人。2020年5月に調査実施。
※2 ドクターズ・ファイルによる「ネット予約の活用状況」に関するインターネット調査。調査対象は20~50代の男女700人。2021年3月に調査実施。