【工夫事例1】マニュアルを“進化させる仕組み”で対応力を底上げ

患者の年齢や症状は一人ひとり異なるため、医療現場では個々に合わせた対応が求められます。
その際、優先されるのは「経験」や「その場の判断」であることが多く、もちろんそれは重要ですが、経験豊富なスタッフなら対応できても新人には難しいことも。新人がおのおので判断せざるを得ない業務が多数あると、医療サービスの質はなかなか向上しません。
そこで活用したいのが「これだけは押さえておきたい」という基本レベルを共有するためのマニュアルです。あるリウマチ科のクリニックでは院長がマニュアルの基盤を作り、スタッフがそれを自由に変化させていくという形を取っているそうです。
「私自身の思いや経験から、ベースを作ることはできます。しかしそれだけでは不十分。スタッフはクリニックの『顔』として経験を積む中で、常に新しい気づきをしていますので、マニュアルもそれに合わせてアップグレードしていく必要があります」と院長は話してくれました。
まずは、業務の大まかな流れや書類の書き方、保存方法などをまとめておくだけでも、スタッフ間の目線合わせがしやすいのではないでしょうか。それらをもとに、追加・修正などを加えながらマニュアルを進化させていくことが大切です。
【工夫事例2】外部講師によるマナー研修で接遇レベルを向上


医療事務や受付のスタッフには、専門知識を持って精度の高い業務を行うだけでなく、サービス提供者としての「マナー」も必要とされます。あいさつや電話対応のほか、時には適切なクレーム対応も求められるでしょう。
とはいえ、医療事務や受付スタッフの中には「診療費の計算は得意だが、接客は苦手」という人もいるかもしれません。そうした悩みを抱えるスタッフには、マナー研修を受けてもらうのも一つです。
院長や先輩スタッフから「できていない部分」を直接指摘されると「自分には向いていないのでは……」とネガティブに捉えてしまう可能性があります。ですが、全スタッフ対象の研修の一環という位置づけで外部講師から指摘されると、自身のスキル不足を受け入れやすかったという声も。
また、向上心のあるスタッフにとっては、さらなるモチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。
【工夫事例3】定期ミーティングで患者ニーズの変化を共有


ドクターを交えたスタッフミーティングは、仕事の進め方や考え方を共有する大事な場です。診療前や休憩時間中に行う情報共有とは別に、可能であれば毎週あるいは毎月、スケジュールを決めてミーティングを実施したいものです。
ある小児科では、日々の細かな連絡や情報共有にはSNSを活用しつつ、月に一度は対面でスタッフミーティングを行っていると話してくれました。
スタッフミーティングで注意したいのは、目的を明確にし、各自が事前に意見をまとめておくこと。それにより、内容も深いものになるはずです。
特に受付スタッフからの意見は患者視点のものが多いため、より良い医療サービスの提供に直結しやすいのではないでしょうか。もちろん受付だけでなく、さまざまな立場のスタッフが集まることで多角的な意見が出され、一人ひとりがクリニックの一員だという意識が強化されるので、モチベーションアップにもつながるでしょう。
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【工夫事例4】患者アンケートの活用で課題を発見し改善につなげる

患者アンケートは、患者のリアルな声を聞き出すのに有効な手法です。クリニックで設問を考え、問診票とともに直接アンケート用紙を渡す方法もありますが、最近はホームページ上でアンケートを実施するクリニックが増えています。
匿名性が高いので、患者も本音を回答しやすいのだと、ある小児科のクリニックでも実感しているそうです。
より客観的な結果を求める場合は、外部調査会社へ依頼するという方法も。細かく分析したデータは、その後の医療サービス向上に生かしやすいのではないでしょうか。
アンケートの内容として多く見られるのは、不満か満足かを段階的に聞く「患者満足度調査」。日頃提供している医療サービスについての評価と要望を把握でき、その結果をスタッフ全員で共有することで、課題の発見と改善策の検討をしやすいのが特徴です。
また、ホームページや院内の掲示物を通じてアンケート結果を患者に伝えるのも一つでしょう。それにより、「より良いサービス提供に努めている」という姿勢を示すことつながるからです。
【工夫事例5】多様なバックグラウンドを採用基準に取り入れる


スタッフ力向上のためには、採用の間口を広げ幅広い人材を確保するのも一つです。
例えば受付スタッフの採用基準には、医療事務の資格が含まれるケースが多いと思いますが、あるリウマチ科のクリニックでは、資格がなくても接遇レベルが高いと判断すれば採用しているそうです。
また、ある内科・小児科のクリニックでは、実際、企業の受付や保育士、販売員、CAといった職務経験を採用基準に入れているといいます。レセプト業務は入職してから覚えてもらうこともできるので、受付スタッフには患者に寄り添った行動ができる人材かどうかを求めているということでしょう。
医療がサービス業として求められる現在、クリニック側の採用基準として、このような選択肢を加えることも重要なポイントかもしれません。またそうして、一人ひとりの経験や強みを最大限に生かせる場を用意することは、スタッフのモチベーションを上げ、さらなるサービス力の向上にもつながるはずです。
【まとめ】
ここまで、スタッフ力向上のための工夫事例を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
患者は病気を診てもらうために受診しますが、主訴が解決されればそれで良いのかというと、決してそうではないはずです。安心して治療を受けられる環境が整い、不安や悩みを打ち明けられる雰囲気があってこそ、本当の意味で診療に満足できるのではないでしょうか。
そのためには、今回紹介したような工夫を取り入れながら、スタッフ一人ひとりが臨機応変に対応できる力を身に着け、情報共有を図りながらクリニック全体でスキルの底上げをめざすことが大切といえるでしょう。(クリニック未来ラボ編集部)
<執筆者プロフィール>
クリニック未来ラボ編集部
クリニック未来ラボは、開業医、開業をめざす勤務医・医学生に向けたクリニック経営支援メディアです。独自の視線で調査・研究し、より良い医院経営に役立つ情報として発信。「開業医白書」をはじめ、診療報酬改定や医師の働き方改革、医療従事者の転職動向など、医院経営に関する調査レポートも公開しています。