ズバリ、スタッフの手取り収入を増やす仕組みがカギ《スタッフ定着率の高さにはワケがある!福利厚生レポート》【第3回】

福利厚生レポートvol.3

超高齢社会による医療ニーズの増加などを受け、人手不足が深刻な医療業界。多くの求職者が、より良い労働条件を求めて職場を探しています。そうした中、近年では優秀なスタッフに選ばれ、長く働き続けてもらう環境をつくるために、福利厚生の充実化を進めるクリニックも増えています。

そこで本稿では、クリニックが取り入れている手厚い福利厚生や、ユニークな福利厚生をシリーズで紹介します。第3回は、スタッフの手取り収入を増やす仕組みづくりに力を入れている、岡田眼科の岡田栄一院長に話を聞きました。

※本稿の初出は、「〈第3回〉ズバリ、スタッフの手取り収入を増やす仕組みがカギ《スタッフ定着率の高さにはワケがある! 福利厚生レポート》」(「患者ニーズ研究所ONLINE」2021年6月18日配信)です。再掲載にあたり一部加筆・編集しています。肩書きやデータは本稿初出時のものです。

スタッフの可処分所得=手取り収入が上がると満足度もアップ

「導入前に知っておきたい!クリニックの福利厚生って、どんなもの?【第1回】《スタッフ定着率の高さにはワケがある!福利厚生レポート》」の記事で紹介したように、法定外福利厚生は8つに分類されています。

その中の、「住まいにかかる費用の補助」と「リフレッシュのための取り組み」に力を注いでいるのが、神奈川県横浜市にある「岡田眼科」。眼鏡・コンタクトレンズ店舗を併設し、横浜市内に分院も有する「岡田眼科グループ」の中心的なクリニックです。

約200人ものスタッフを抱え、充実しすぎるほどの福利厚生に力を入れる岡田院長に、クリニックの福利厚生のポイントを聞くと、ズバリ、「スタッフの可処分所得を上げること。満足度を上げるには、それが一番でしょう!」との答え。では、スタッフの可処分所得、いわゆる手取り収入を上げるために、実際にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

スタッフの将来を見据えて、人生を丸ごと支えるための社宅

1人暮らしのスタッフにとって、出費の中で特に大きな割合を占めるのが住宅費。そこで岡田眼科では、自宅が遠い(定期代が月2万8000円以上)スタッフには、社宅を用意しています。

1人暮らしだと2LDKで、家賃は月々1万5000円。子どもが1人増えたら3LDK、もう1人増えたら4LDKへの住み替えも可能だそうです。クリニックが部屋を買い上げているので、敷金・礼金ゼロ、管理費なども一切かかりません。賃貸ではなく分譲マンションを購入することで、クリニックにとっては節税効果にもなるとか。

また、「家に帰っても近所に同僚がいたら、気が休まらないから」と、スタッフのプライベートに配慮して、70部屋ほどある社宅はさまざまな場所に点在させているといいます。

この贅沢ともいえる社宅、岡田院長はスタッフの人生や家族までも考慮した上で、備えているようです。

「1人暮らしで2LDKだと一般的にはちょっと広すぎるけれど、例えば実家のお母さんが遊びに来たときに、余った部屋に泊まってもらえるでしょう? ここに住んで、当院で安心して長く働いてもらえば手元にお金が残るから、お金をためて、将来自分のマンションを買ったっていい。スタッフが自分で自由に使えるお金を残すことが、福利厚生として一番なんじゃないかなと思います」

スタッフの現在だけではなく将来をも見据えて、人生を丸ごとサポートしようという岡田院長の懐の深さが垣間見えます。

ロスを出さない工夫で、満足度の高い社食を提供

1988年の開業当初から院内にあるという社員食堂も、スタッフの手取り収入を増やすための工夫の一つ。元・横浜ロイヤルパークホテルのシェフらが腕を振るうランチを、無料で食べられます。和洋中とバラエティーに富んだ、栄養バランスの取れた日替わりのランチは、スタッフにとって楽しみの一つになっているそう。

ある女性スタッフは「食後のコーヒーや紅茶も無料で自由に飲めるので、職場でお金を使うことがほぼありません。お財布を持たずに、家の鍵とスマホだけで職場に来ても大丈夫なほど」と言います。

取材時に編集部スタッフもランチをごちそうになりましたが、本当においしくて驚きました! ここまで豪華な社食を提供できるのには、こんなワケがあるようです。

「メニューを1種類にして、ロスを出さない。これがポイントです。オーダーを聞く必要がない上、当院の診療は昼休みがなく、スタッフのランチ休憩は交代で取っているので、社食が混雑することもない。だから、少ない人数のシェフ(1~2人)でも十分に回せます」

メリットがあるのはスタッフ側だけではありません。クリニックの隣にある社食でスタッフに昼食を取ってもらうことで、急患などの緊急時にはすぐに診察室に戻れるため、診療が滞りなく進むという、クリニック側のメリットもあるのです。

医療費を負担し、スタッフの健康と安心をサポート

岡田眼科グループは医療モールを経営しており、歯科、皮膚科、整形外科、消化器内科など、10以上あるモール内の医院は無料で受診できるという、グループならではの福利厚生もあります。

岡田眼科と医療モールの間を毎日、無料循環バスが運行しているので通院も便利。何より、具合が悪くなったらすぐ診てもらえる医院が職場近くにあるというのは、スタッフの安心感につながるでしょう。

視野が狭くならないようにと、勉強を重ねてきた軌跡が、現在を形づくる

「チェーン展開や株式の上場などはめざさず、利益はあくまで質の高い医療サービスと、スタッフの福利厚生に投入する」という理念を掲げる岡田眼科グループ。その背景には、岡田院長のこれまでの歩みが深く関わっています。

「勤務医として働いていた30歳ごろ、このままではどんどん視野が狭くなって“専門馬鹿”になってしまうと不安を感じて、文系の勉強を始めたんです。まず宅建の資格を取得したのですが、そこから学ぶことが面白くなって、所得税法、労働法、法人税法、マーケティングなどを勉強していきました」

専門知識だけに偏ることなく、一人の社会人として自分の足で歩んでいけるようになりたいと願い、努力してきた岡田院長。その軌跡こそが、現在の「スタッフの手取り収入を増やして満足度を上げつつ、クリニック経営を順調に進めるための仕組みづくり」につながっているのではないでしょうか。

好奇心旺盛で勤勉、かつ温厚な人柄の岡田院長のもとには、優秀なスタッフが多く集まっているそうです。中には、縁あって出会ったジョージア出身の女性が、院長を慕って渡日し、スタッフとして働いているというエピソードも。

試行錯誤しながら、「スタッフのために」を追求し続ける

数々の取り組みを行い、福利厚生の達人ともいえる岡田院長ですが、過去には失敗に終わってしまった福利厚生も多くあったのだとか。

「横浜スタジアムでの食事券つきサッカー観戦は、スタッフからのリクエストで始めたものの、試合の曜日が限定されている、90分という短い試合時間の中ではゆっくり飲食できない、といった理由で利用するスタッフがほとんどおらず、なくなってしまいました。

また、温泉ホテルの1泊2食つきの宿泊券も取り入れたものの、こちらも曜日限定にしていたためか、ほとんど利用者がいませんでしたね」

試行錯誤を経て、現在、イベント関連の福利厚生では、「500円の映画チケット」や「バックネット裏の席で楽しめる1100円の野球チケット」、感染対策を行いながらの「スパつき釣り船イベント」などがあるそうです。社宅や食堂などを用意することは、個人のクリニック経営においてなかなかハードルの高いことですが、チケットなら比較的取り入れやすいのではないでしょうか。岡田院長は「やはりイベント系の福利厚生は、誰もが楽しめるものじゃないと駄目だよね」と笑い、開業から30年以上経つ今も、「スタッフのために」を模索し続けているようです。

まとめ

岡田眼科が実践する
福利厚生3つのポイント

1 スタッフの人生や家族のため、社宅を完備

自宅の遠いスタッフも長く安心して暮らしていけるよう、住宅費という最も大きな出費を負担。きちんと業者を入れて清掃管理を行っているのも、1人暮らしの女性スタッフにはうれしいポイントでしょう。

2 おいしい社食で、体にも心にも栄養を

おいしくて見た目にも豪華な社食は、メニューを1種類にしてロスを出さないよう工夫することによって、実現可能に。朝晩食べなくても十分という人もいるほど、ボリュームたっぷりです。

3 映画や野球など、イベントチケットを補助

スタッフが余暇に楽しい時間を過ごすため、映画や野球などのチケットを提供しています。特に好きな映画が見られる映画のチケットは、長年スタッフから好評だそうです。また、みんなで楽しめる社内レクリエーションにも力を入れています。

(クリニック未来ラボ編集部)

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