開業医は儲かる?儲からない?

開業医とは、自身でクリニックなどの医療機関を経営して診療を行う医師のことです。大学病院や総合病院で働く勤務医とは異なり、経営手腕によって患者数の増加や人件費の削減など、収入を上げやすい状況にあります。
そのため、開業医は勤務医に比べて収入が多いのが一般的であり、勤務医として経験を積んだ後に開業医の道を選ぶ医師は多いです。しかし、すべての開業医が儲かるわけではありません。
開業医は医師である一方、クリニックの経営者という一面があります。医療技術だけではなく、収益を上げるための経営スキルが必要であり、開業場所の選定や集患対策などさまざまな戦略を練ることが重要です。
そして、地域医療への貢献や医療を通じて患者を幸せにしたいと考えている開業医にとって、開業したクリニックを長く経営していくためには安定した収入の確保が求められます。
そのため、開業医は単に医療のスキルだけでなく、経営やマーケティングなど幅広いスキルを持つことが大切です。
医者の平均年収4パターン

開業医の具体的な平均年収を解説します。金額の目安として、厚生労働省が発表している「医療経済実態調査」などをもとに、勤務医や診療科目別の平均年収も一緒にお伝えします。
なお、平均年収の金額は調査団体や調査年度などによって変動します。その点をご留意のうえご覧ください。
(1)開業医の平均年収と手取り額
厚生労働省の「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施-」(※)によると、開業医の平均年収は約2,634万円と報告されています(個人の一般診療所・入院診療収益なし)。非常に高額な年収であるため、開業医に憧れを抱く勤務医は多いです。
しかし、開業には必要な経費が多く、税金面も勤務医と異なります。それにより、実際の手取りは1,600万円前後になる見込みです。
※出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施-」
(2)勤務医の平均年収との違い
同じ厚生労働省の「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施-」(※)における勤務医の平均年収は、約1,485万円という結果でした。差し引かれる税金等が6~7割あるため、 実際の手取りは890万円前後です。
この調査報告が示す通り、手取りで平均1,600万円前後の開業医の年収は勤務医と比べると約2倍であり、高額な収入を得やすいことがわかります。
※出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施-」
(3)診療科別の平均年収
医師の報酬は、診療科目によって異なります。
以下は、上で触れた厚生労働省の「第25回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 -令和7年実施-」(※1)と、2012年9月に独立行政法人労働政策研究所・研修機構が報告している「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(※2)をもとにした、開業医と勤務医の診療科目別の平均年収です(個人の一般診療所・入院診療収益なし)。
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診療科目
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開業医 ※1
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勤務医 ※2
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|---|---|---|
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内科
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約2,470万円
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約1,247万円
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外科
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約2,757万円
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約1,374万円
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産婦人科
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約1,102万円
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約1,466万円
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眼科
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約3,602万円
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約1,079万円
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皮膚科
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約1,672万円
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約1,079万円
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整形外科
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約3,065万円
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約1,289万円
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耳鼻咽喉科
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約3,181万円
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約1,079万円
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小児科
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約3,729万円
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約1,220万円
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精神科
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約1,978万円
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約1,230万円
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※1 出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施ー」
※2 出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年9月)」
すべての診療科目において、開業医は勤務医の平均年収を超えています。小児科や整形外科などのように、2倍以上の年収を得ている診療科も多いです。
(4)所在地別の平均年収
医師の報酬は、所在地別によっても異なります。
以下は、厚生労働省が実施している「令和6年賃金構造基本統計調査」(※)をもとにした、勤務医の所在地別のトップ3とワースト3の平均年収です。
【平均年収トップ3】
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都道府県
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平均年収
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岩手県
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約2,475万円
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北海道
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約1,923万円
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鹿児島県
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約1,900万円
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【平均年収ワースト3】
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都道府県
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平均年収
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|---|---|
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東京都
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約921万円
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宮城県
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約1,052万円
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愛知県
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約1,155万円
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所在地によって勤務医の平均年収には大きな差が見られます。地域ごとの医療需要や人口構成、診療所の数、経営環境の違いが影響していると考えられます。
都市部・地方などの単純な区分だけでなく、地域の医療資源の偏りや競争状況も収入差を生む要因の1つです。そのため、開業を検討する際は診療科目だけでなく、立地選びや地域特性の分析が重要になります。
・内科の開業医の平均年収は?勤務医との比較や内科で開業する魅力を解説
・眼科の開業医は平均年収が勤務医の3倍?高収入の理由とさらに上げる方法を解説
開業医と勤務医の違い

医師としてキャリアを考えるのに、「開業医か勤務医か」という選択は多くの医師が悩むテーマです。開業医の年収は一般的に勤務医より高いですが、単純に収入だけで判断できるものではありません。
医療の質を維持しながら持続可能なキャリアを築くためには、働き方と収入のバランスを理解することが重要です。開業医は年収だけを見るのではなく、医師としての理想像と照らし合わせて考えることが大切です。
ここでは、以下2つの開業医と勤務医の違いについて解説します。
(1)働き方・業務の違い
(2)生涯年収の違い
1つずつ解説します。
(1)働き方・業務の違い
開業医と勤務医では、日々の業務内容と働き方に明確な違いがあります。勤務医は医療機関に所属し、診療や手術・当直などを担当しますが、経営面は病院側が担うため、医療行為に集中しやすいです。
給与体系が決まっているため、収入の見通しが立てやすい点も魅力の1つです。
一方、開業医は診療だけでなく、スタッフ採用・設備管理・経営判断なども担います。診療時間や提供する医療サービスを自ら設計できるため、理念に沿った医療を実現しやすい反面、経営責任が伴います。
患者数や地域性によって収益が変動するため、働き方はより主体的になる傾向にあります。
(2)生涯年収の違い
生涯年収で見ると、開業医と勤務医の差は比較的大きいです。たとえば、前述で記載したとおり勤務医の平均年収は1,485万円(※)のため、25歳~64歳までの40年間勤務医として働いた場合の生涯年収は約5億9,400万円、74歳まで働いた場合は約7億4,250万円という試算があります。
一方、開業医として勤務医時代の収入を含めると、生涯年収は9億円〜10億円程度になるケースが示されています。
このように、開業医の年収は長期的に見ると勤務医より高くなる可能性がありますが、診療科や開業時期、地域などによって大きく変わります。
また、開業医の収入は売上から経費を差し引いたものであり、単純な給与とは性質が異なります。設備投資や人件費などの負担も考慮しなければなりません。
さらに、医療法人化によって収益構造が変わる場合もあり、生涯年収は一律ではありません。重要なのは、収入の高さだけを目標にするのではなく、安定した経営基盤を築き、理想の医療を継続的に提供できる環境を整えることです。
開業医の年収の数値はあくまで目安として理解し、自身のキャリア設計に活かしていきましょう。
※出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和7年実施-」
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実際の開業医の満足感と理由

クリニック未来ラボが開業医を対象にした調査(※)によると、「開業して良かったと思うか」という質問に対して「はい」と回答した医師は95.4%に達しています。この結果からも、開業という選択が多くの医師にとって前向きなキャリアになっていることがわかります。
具体的な理由として最も多かったのは「裁量・自由度の大きさ」で、75.8%と大きな割合を占めています。診療方針や経営方針を自ら決定できる点が大きな魅力で、自分の理念に基づいた医療を実践しやすい環境が評価されています。
次いで「収入の増加」が49.1%と約半数を占めており、収益向上や経費管理などを自分で工夫できる点に満足感を見出す医師も少なくありません。
また、「労働時間・日数と休日のバランス」が35.5%、「心身への負担の軽減」が30.1%、「業務量の改善」が14.8%という結果も出ています。勤務医時代の激務から離れ、自分の裁量で働き方を調整できる点が評価されています。
もちろん開業医も多忙ではありますが、働き方を主体的に設計できることが満足度につながっているようです。
さらに、「定年がなく長く医療に携われる」「理想の医療を追求できる」といった声もありました。収入面だけではなく、自分らしい医療を継続したいという思いが開業の背景にあることがうかがえます。
開業医の6つのメリット

開業医には勤務医とは異なる魅力があり、多くの医師がキャリアの選択肢として検討しています。ここでは、代表的な以下の6つのメリットについて解説します。
- (1)高い収入を得られる可能性がある
- (2)勤務時間や診療スタイルを自分で調整できる
- (3)方針に合ったスタッフを選んで雇用できる
- (4)診療や経営に関する判断を自ら行える
- (5)地域医療に貢献できるa
- (6)医師としての達成感や充実感を得やすい
1つずつ見ていきましょう。
(1)高い収入を得られる可能性がある
開業医は、勤務医と比べて高い収入を得られる可能性があります。クリニックの売上や経営状況によって収入が変動するため一概には言えませんが、診療内容や患者数、地域性などを踏まえた経営努力によって収益を伸ばせる点が特徴です。
勤務医の場合は給与体系が決まっていることが多く、基本的には急激な収入増加は難しいです。
一方、開業医は医療サービスの提供方法や診療時間、設備投資などを自ら判断できるため、経営戦略によって収益性を高められる余地があります。
また、経費の管理や効率化によって収益構造を改善できることも魅力の1つです。ただし、収入は固定ではなく、開業初期の投資や運営コストも考慮する必要があります。
そのため、収入面のメリットは経営と医療の両方を意識した取り組みによって実現されるものといえるでしょう。
(2)勤務時間や診療スタイルを自分で調整できる
開業医は、自院の診療時間や休診日を自分で決められるため、働き方の自由度が比較的高いです。
勤務医は、病院の勤務体系に従う必要があり、当直やオンコールなどのスケジュールに左右されやすいですが、開業医は診療方針に合わせて時間配分を調整できます。
たとえば、地域の患者層に合わせて診療時間を変更したり、専門分野に特化した診療スタイルを採用したりすることも可能です。また、自身のライフステージに応じて働き方を見直せる点も魅力といえるでしょう。
ただし、自由度がある一方、患者ニーズや経営状況を踏まえた判断が求められるため、単に楽になるという意味ではありません。裁量があるからこそ、理想と現実のバランスを考えながら運営していくことが重要になります。
(3)方針に合ったスタッフを選んで雇用できる

開業医は、スタッフ採用において自院の理念や診療方針に合った人材を選べるという点がメリットです。勤務医の場合、既存の組織に所属するためチーム構成を自分で決めることは難しいですが、開業医はスタッフ教育や組織づくりにも主体的に関われます。
医療サービスの質はチーム医療によって大きく左右されるため、価値観を共有できるスタッフを採用できることは診療の質向上にもつながります。また、院内の雰囲気や患者対応の方向性を統一しやすく、長期的な運営の安定にも寄与します。
ただし、採用や人材育成には時間や労力が必要であり、経営者としての視点が求められます。スタッフマネジメントも開業医の重要な役割の1つです。
(4)診療や経営に関する判断を自ら行える
開業医は診療方針だけでなく、設備投資やサービス内容、運営方法などについて自ら意思決定できる点が特徴です。勤務医では組織の方針や上層部の判断に従う場面も多いですが、開業医は自身の理念に基づいて医療環境を構築できます。
たとえば、導入する医療機器や診療科目の選択なども自由度が高く、医療の質を自分の考えで高めていくことができます。このような裁量の大きさは、理想の医療を追求したい医者にとって大きな魅力です。
(5)地域医療に貢献できる
開業医は地域に根ざした医療を提供する存在として、地域医療への貢献度が高いです。患者との距離が近く、長期的な関係を築きやすいため、継続的な健康管理や予防医療に携われる点が特徴です。
地域住民のかかりつけ医として役割を担うことで、医療アクセスの向上にも寄与します。
また、地域の医療機関や介護施設との連携を通じて、包括的な医療体制の一部として機能することもあります。勤務医とは異なり、地域のニーズに合わせて診療内容を柔軟に調整できる点も開業医ならではの特徴です。
患者の日常生活に寄り添った医療を提供できることは、大きなやりがいにつながるでしょう。
(6)医師としての達成感や充実感を得やすい
開業医は、自分の理想に基づいて医療を提供できるため、医師としての達成感や充実感を得やすいです。診療方針やクリニックの運営方針を自分で決められるため、患者にどのような医療を届けたいかという思いを直接反映しやすいです。
また、患者との長期的な関係性を築きながら医療を継続できることも満足度につながります。自院の成長や地域からの信頼を実感することで、医師としてのやりがいを強く感じられます。
経営者としての責任は伴いますが、自分の努力が診療や経営の成果として見えやすい点が、開業医ならではの魅力といえるでしょう。
開業医の6つのデメリット

開業医には多くのメリットがある一方で、勤務医にはない負担やリスクも存在します。ここでは、代表的な以下の6つのデメリットについて解説します。
- (1)経営に関する負担を背負う必要がある
- (2)経営リスクと収入の不安定さがある
- (3)最終的な責任を求められる
- (4)業務の幅や作業量が増えることがある
- (5)集患を自ら行わなければならない
- (6)スタッフ管理や人事対応が難しい
それぞれ見ていきましょう。
(1)経営に関する負担を背負う必要がある
開業医は診療だけでなく、クリニックの経営全体を担う必要があります。たとえば、資金計画や設備投資、収支管理、スタッフの給与管理など、多岐にわたる業務が発生します。
勤務医の場合は病院側が経営を担うため医療行為に集中しやすいですが、開業医は経営判断が日常的に求められます。
また、診療報酬や医療制度の変化にも対応する必要があり、医療知識だけではなく経営的な視点も重要になります。経営が安定していれば理想の医療を継続しやすい一方、経営が不安定な場合は精神的な負担につながる可能性もあります。
(2)経営リスクと収入の不安定さがある
開業医の収入は固定給ではなく、患者数や診療内容、地域性などに大きく影響されます。そのため、勤務医のように毎月一定の給与が保証されているわけではありません。開業初期には設備投資や借入が発生することもあり、経営が軌道に乗るまで時間がかかる場合もあります。
さらに、地域の人口動態や競合医療機関の増加など、外部要因によって収益が左右されることもあります。収入が増える可能性がある一方、経営状況によっては収益が低下するリスクもある点を理解しておく必要があります。
安定した運営を実現するためには、医療サービスの質だけでなく、継続的な経営戦略も重要になるでしょう。
(3)最終的な責任を求められる

開業医は、診療だけでなく経営や組織運営に関する最終的な責任を負う立場になります。医療事故やトラブルへの対応・スタッフ間の問題・経営判断など、さまざまな場面で意思決定を行う必要があります。
勤務医の場合は組織の中で責任を分担できるケースもありますが、開業医は院長として判断を下す立場になることが多いです。
また、患者対応や地域との関係構築においても責任の重さを感じる場面があります。すべてを自分で決定できる裁量の大きさはメリットでもありますが、その分プレッシャーも大きくなるでしょう。
(4)業務の幅や作業量が増えることがある
開業医は診療以外の業務が増えるため、作業量が多くなる場合があります。たとえば、経理や人事・広報・設備管理など、医療以外の業務にも関与する必要があります。勤務医では専門職として診療に専念できる環境が整っていますが、開業医は多面的な役割を担うことになります。
また、開業初期は特に業務量が増えやすく、診療と経営の両立に時間を割かなければなりません。スタッフや外部業者に業務を委託することで負担を軽減できる場合もありますが、最終的な確認や判断は院長が行うことになります。
こうした業務量の増加を前提に働き方を設計することが求められます。
(5)集患を自ら行わなければならない
開業医は、患者に来院してもらうための集患活動を自ら考える必要があります。勤務医は病院のブランドや紹介患者などに支えられることが多いですが、開業医は地域で認知されるまで努力が必要です。
診療内容の周知や地域への情報発信など、医療以外の取り組みも求められるでしょう。
また、患者満足度の向上や信頼関係の構築が長期的な集患につながるため、医療サービスの質だけでなく接遇や院内環境にも配慮が必要です。
単に広告を行うだけではなく、地域ニーズを理解した運営が重要になります。継続的な努力が必要である点は、開業医ならではの課題といえます。
(6)スタッフ管理や人事対応が難しい
開業医はスタッフの採用や教育、労務管理などの人事作業を担当する必要があります。スタッフの働きやすさやチームワークは診療の質にも直結するため、適切なマネジメントが必要です。
しかし、人間関係のトラブルや離職への対応など、医療とは異なる難しさを感じる場面もあります。
また、スタッフの評価や配置などの判断は院長自身が行うケースが多く、責任の重さを感じることもあるでしょう。
組織を円滑に運営するためには、コミュニケーション能力やマネジメントスキルも重要になります。理想の医療を実現するためには、チーム全体を支える視点が欠かせません。
開業医で年収1億円は現実的か

開業医になるうえで、年収1億円を目標に掲げる方がいるのではないでしょうか。前述の通り、開業医の平均年収は約2,634万円であることを踏まえると、年収1億円を達成するには約4倍の収入増が必要です。
そのため、「開業医で年収1億円は現実的ではない?」と思われる可能性もありますが、実際は開業医で年収1億円を稼ぐことは不可能ではありません。
たとえば、美容医療や健康診断などの自由診療を導入することで高額な診療報酬を得られます。
保険診療と比べると患者負担が高額となるため、自由診療に対しては抵抗感を持たれる方もいますが、保険診療ではできない治療が自由に選択できるようになることは、患者の満足度を高めるというメリットにもつながります。
また、SNSやインターネット広告を活用した宣伝活動で集患増を狙うことも有用です。
そのほか、不動産投資や資産運用、医療系セミナーの講師などの副業で収入源を多様化すると安定した収入を確保しやすくなり、これらの方法を取り入れることで年収1億円をめざすことは可能といえるでしょう。
とはいえ、儲かる開業医の基本は良質な医療の提供です。患者を第一に考え、信頼関係を築くことで、医療の質の向上とともに収益の向上も期待できます。
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開業医で年収1億円以上をめざす7つの戦略ポイント

開業医に向いている人や儲からない開業医の特徴をもとに、開業医で年収1億円以上をめざす具体的な戦略ポイントを解説します。
開業医で年収1億円以上をめざす戦略ポイントは以下の7つです。
- (1)開業場所は好立地を選ぶ
- (2)優秀な人材の獲得と育成に取り組む
- (3)業務効率化を追求する
- (4)売上を積み上げる工夫や経営拡大をめざす
- (5)必要に応じて自由診療を取り入れる
- (6)診療科目の増設/分院展開をする
- (7)不動産投資や資産運用など副業で別収入を得る
それぞれ解説します。
(1)開業場所は好立地を選ぶ
開業する場所・立地は、売上に直結する非常に重要なポイントです。きれいな内装のクリニックであろうと、最新の医療機器を備えていようと、集患できなければ利益が上がらず経営を続けることが難しくなります。
そのため、 開業前に地域の特性や交通の利便性などを把握し、集患につながる好立地な場所での開業が大切です。
(2)優秀な人材の獲得と育成に取り組む
年収1億円以上を稼ぐためには、より多くの患者に対応することが必要です。そのためには、 優秀な医師や看護師の獲得と、クリニック全体の能力を高める人材育成が鍵を握ります。
求人募集では、給与や労働時間などの基本条件に加え、研修費補助や独自の休暇制度、残業削減の仕組みなど、他院との差別化につながる具体的な魅力を提示してみてください。さらに、採用後のOJTや研修制度の導入も重要です。その結果、提供する医療サービスの品質は向上し、患者の信頼を得て収益を増加させることが可能となります。
(3)業務効率化を追求する

業務効率化は、開業医の利益につながる戦略ポイントの1つです。たとえば、スタッフと患者それぞれの動線が重ならないよう考慮した院内レイアウトにすると、互いの動きを妨げずにスムーズな診療がしやすくなり、より多くの患者を診療できます。
また、 電子カルテや予約システムといった最新のシステムの導入は、業務の簡略化や作業時間の短縮に有用です。
(4)売上を積み上げる工夫や経営拡大をめざす
開業後は、常に売上を積み上げる工夫を行い、時期を見て経営拡大に向けた取り組みが重要です。
たとえば、最新の医療サービスの導入、提携先の拡大、SNSを活用した宣伝活動やマーケティングの強化が挙げられます。これにより、集患の増加と年収アップに期待ができます。
(5)必要に応じて自由診療を取り入れる
自由診療を取り入れることは、開業医で年収1億円以上をめざす方法の1つに挙げられます。言うまでもなく、 自由診療は保険外診療にあたり、クリニック側が診療費を自由に設定することが可能です。単価を自由に設定できるため、集患がうまくいけば収益の向上につながります。
しかし、専門的な治療を提供できる一方で、患者の診療費負担額は大きくなります。そのため、自由診療に対しては消極的な方もいる可能性もありますが、保険診療ではカバーできない、より患者の要望に沿った診療の提供は、患者の満足度を高めることにもつながります。
診療前に「自由診療は高額である」ことを患者へ丁寧に説明し、必要に応じて自由診療を行うことが重要です。
代表的な自由診療を以下にピックアップしました。開業を検討している方は参考にしてみてください。
- 美容外科/アンチエイジング
- レーシック
- 不妊治療
- 歯科矯正/インプラント
- AGA治療(男性型脱毛症)
- 人間ドック
自由診療は収益性の高さから開業医の年収向上をめざすうえで有効な選択肢の1つですが、単に利益面だけを重視するのではなく、医療の質や患者との信頼関係を大切にすることが重要です。
地域のニーズや自身の専門性を踏まえながら、保険診療とのバランスを考えて導入することで、安定した経営と差別化につながります。
(6)診療科目の増設/分院展開をする
クリニックの収益向上には、診療科目の増設や分院展開があります。複数の診療科目を設置することにより、幅広いニーズに対応できるため効果的に集患できます。
また、分院の運営を軌道に乗せることで、クリニックの収益はもちろん、医師の収入も増やすことが可能です。さらに、異なる地域で分院を開業すると、クリニックの知名度を高められます。
ただし、分院展開は必ずしも収益化できるとは限りません。診療科目の増設や分院展開は、初期投資に多額の費用と管理能力が求められます。慎重な計画と、患者との信頼関係を築いて実施することが重要です。
(7)不動産投資や資産運用など副業で別収入を得る
不動産投資や資産運用など、副業への取り組みも年収1億円を実現する戦略の1つに挙げられます。以下は、開業医にできる代表的な副業例と、副業するメリットをまとめた一覧です。
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代表的な副業例
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開業医が副業するメリット
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|---|---|
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これらの副業に取り組むことは、本業と異なる収入の確保につながります。また、副業は単に年収の増加だけが目的ではありません。安定したクリニック経営を可能とし、雇用するスタッフを守ることにつながります。
さらに 不動産投資などの副業においては、マンションの購入費用やメンテナンス費用を経費に計上できるため、節税に効果的です。
ただし、年収1億円を達成するためには、本業であるクリニックの運営にしっかりと取り組む必要があります。副業に力を入れるあまり、本業がおろそかにならないよう注意することが大切です。
開業医に向いている人の4つの特徴

開業医で成功するためには、適性を知ることが必要です。ここでは、開業医に向いている人の特徴を解説します。
開業医に向いている人の特徴は以下の4つです。
- (1)経営スキルが高い
- (2)自己管理能力が高い
- (3)コミュニケーション能力が高い
- (4)地域医療への貢献など明確な目的を持っている
詳しく解説します。
(1)経営スキルが高い
開業医は、医者であり経営者でもあります。診察や治療のみならず、集患や利益を追求し、経営を成功させなければなりません。そのため、開業医には高い経営スキルが求められます。
マーケティング、先見性、決断力など、経営者に必要な最低限のスキルがあることは、開業医に向いている人の重要な特徴です。同様に、経営に興味がある人は積極的に経営を学ぶ姿勢があるため、開業医に向いている人といえます。
(2)自己管理能力が高い
開業医に向いている人は、高い自己管理能力を持っています。クリニックや医療機関を経営するためには、スケジュールや業務だけでなく、自身の体調や運営資金なども効率的に管理する必要があります。
これは、開業したクリニックの利益に直結します。たとえば、適切なスケジュール管理は患者の予約や診療時間の最適化に効果的です。また、経営資金の適切な管理は、クリニックの長期経営や年収の増加につながります。
このように、自己管理能力は開業医に必要であるため、他人任せでなく自身でしっかり管理できる人は開業医に向いています。
(3)コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力が高い人は開業医に向いています。患者への丁寧な対応とわかりやすい説明は、クリニックの評判と集患に効果的です。
また、クリニック経営はスタッフや関係各所との連携で成り立っています。開業医がスタッフとのコミュニケーションを深めることは連帯感を高め、円滑な業務の遂行、ひいては安定した経営につながります。
したがって、開業医のコミュニケーション能力は年収の増加に重要な能力です。
(4)地域医療への貢献など明確な目的を持っている
開業医になるにあたり、地域医療への貢献など明確な目的を持っていることは重要な要素です。明確な開業目的は、運営方針やクリニックとしての方向性を決定づけます。
また、地域性や診療科目によりますが、開業医は地域住民のかかりつけ医になる存在です。 地域ごとの特性を受け入れ、さらに住民に寄り添った医療を施すことで地域に根づき、開業医としての成功を引き寄せます。
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儲からない開業医の5つの特徴

高額な年収を得やすい開業医ですが、すべての医師が儲かるわけではありません。開業医のなかには利益を出せず、開業する際に作った多額の借金を背負うケースも見られます。
儲からない開業医の特徴は以下の5つです。
- (1)経営方針やビジョンが明確でない
- (2)経営スキルが身についていない
- (3)スタッフとの連携が取れていない
- (4)利益重視になっている
- (5)地域の医療ニーズを把握できていない
それぞれ見ていきましょう。
(1)経営方針やビジョンが明確でない
儲からない開業医は、開業後の経営方針やビジョンが明確でないケースが見られます。不明確な方針は、スタッフによって対応に違いが生じやすく、患者に不信感を抱かせてしまいかねません。
クリニックの評判を落とすことは、集患数と売上の減少につながります。したがって、開業する際は「何を目標に開業するのか」「どのようなクリニックをめざしているのか」を明確にすることが大切です。
(2)経営スキルが身についていない
開業医には経営スキルが必要です。経営スキルがない人は、利益を出すための具体的な知識や方法を理解しておらず、行き当たりばったりの経営を続ける恐れがあります。
たとえば、資金調達ができない場合や、必要ない医療機器を高額でリースすることなどが考えられます。したがって開業する際は、医師としてだけでなく経営者としての能力も必要です。
(3)スタッフとの連携が取れていない

開業医としての成功には、スタッフとの連携が非常に重要です。スタッフと連携が取れていない場合、患者への対応にバラつきが生じやすく、クリニック全体の評判を落とす可能性があります。
業務効率が悪くなる理由の1つでもあり、1日当たりの診療件数が減るなど売上にも支障をきたす要因となります。
(4)利益重視になっている
開業した以上は継続的に利益を上げることが重要です。しかし、目先の利益を重視して患者をないがしろにしては儲けることはできません。患者なしでクリニックの経営は実現できないため、患者を第一に考えたうえで利益を追求した経営が大事です。
(5)地域の医療ニーズを把握できていない
儲からない開業医は、地域の医療ニーズを把握できていない可能性があります。たとえば、過疎化が進む地域に産婦人科や小児科のクリニックを開業しても、患者を集めることは難しいです。
開業医は、患者の人数が利益に直結するため、人口構成や住民の健康課題などを事前に調査し、その情報をもとに地域のニーズに適した医療サービスを提供することが重要です。
開業医になるために必要な調達する資金額

開業医としてクリニックを立ち上げる際には、一定の資金調達が必要になります。クリニック未来ラボが開業医を対象にした調査結果(※)では、開業資金として最も多かったのは「5000万円未満」であり、48.2%と約半数を占めています。
このことから、小規模なクリニックであれば比較的抑えた資金で開業しているケースも少なくないことがわかります。
従業員数別に見ると、クリニックの規模によって必要資金に違いがあることが明確です。院長を含めて5人以下のクリニックでは、65.0%が「5000万円未満」で開業しており、小規模運営では資金負担を抑えやすいことが示されています。
一方、21人以上の比較的大規模なクリニックでは「5000万円未満」での開業は32.5%にとどまり、より多くの資金が必要になる傾向が見られます。
従業員数が増えるほど設備や人件費などの初期投資が大きくなるため、資金規模も比例して大きくなると考えられます。
さらに、どの規模でも最も多いのは「5000万円未満」ですが、6〜10人規模では「5000万円〜1億円」が32.5%、11〜20人規模では27.6%となっており、クリニックの規模に応じて資金調達額が段階的に変化しています。
開業を検討する際は、自身がめざす診療スタイルや規模を踏まえて資金計画を立てることが重要といえるでしょう。
開業医になるための方法

開業医になる方法には大きく分けて「新規開業」と「承継開業」の2つがあります。どちらも医療機関の院長として診療を行う点は共通していますが、準備内容やリスク、スタート時の環境などに違いがあります。
新規開業と承継開業の特徴を以下の表にまとめました。
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特徴
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新規開業
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承継開業
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開業形態
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ゼロからクリニックを立ち上げる
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既存の医療機関を引き継ぐ
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立地・設備
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自由に設計できる
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既存環境を活用する
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初期患者数
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開業後に集患が必要
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既存患者を引き継げる場合がある
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初期投資
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多額の初期投資が必要になる
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新規開業より少ない資金で開業できる
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ここでは、新規開業と承継開業について詳しく解説します。
(1)新規開業
新規開業は、物件選びから診療方針、設備導入、スタッフ採用までを1から設計できる開業方法です。自分の理念や専門分野に合わせてクリニックを作れるため、理想の医療環境を構築しやすいです。
立地条件や診療科目、内装などを自由に決められる点は、多くの医師にとって魅力だといえます。
一方、開業初期は患者数が安定しない場合もあり、集患の取り組みや地域への認知向上が重要です。また、設備投資や物件取得などの初期費用がかかるため、資金計画をしっかり立てる必要があります。
診療開始までの準備期間には、事業計画の作成や各種手続き、スタッフ教育なども求められます。新規開業は自由度が高い反面、準備の負担も大きくなります。
そのため、医療だけでなく経営面も含めた計画性が重要です。自身の理想を形にしたい医師にとっては、挑戦しがいのある開業スタイルといえるでしょう。
(2)承継開業
承継開業は、既存のクリニックや医療機関を引き継いで院長となる方法です。すでに患者基盤や設備、スタッフ体制が整っている場合が多く、ゼロからスタートする新規開業と比べて開業後の経営を安定させやすいです。
地域での認知度がある医療機関を引き継ぐことで、診療開始直後から一定の患者数が期待できます。
また、設備投資や物件取得の負担が比較的抑えられ、初期リスクの軽減につながります。
ただし、既存の診療スタイルや患者層、スタッフ体制などを引き継ぐため、自由度は新規開業より制限されることが多いです。前任者との理念の違いや運営方針の調整が必要になる場面もあるでしょう。
承継開業では、医療だけでなく経営や人間関係の引き継ぎも重要な要素です。既存の信頼関係を維持しながら新しい方針を取り入れるなど、バランスの取れた運営が求められます。
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まとめ
この記事では、開業医の平均年収を中心に、年収1億円の実現に向けたポイントについて解説しました。
開業医は勤務医より高収入を得られる可能性がありますが、経営責任やリスクも伴うため、収入だけで判断せず総合的に検討することが重要です。
また、年収1億円は不可能ではありませんが、自由診療の導入や経営戦略など、明確な方針と継続的な努力が求められます。
さらに、開業医となることは収入面だけがメリットではありません。地域医療への貢献や、子どもから高齢者まですべての患者の健康を支援したいという医師としての理想を叶える手段の1つです。
この記事を参考に、自身のキャリアプランや理想の働き方を整理しながら、目先の利益だけを追求せず、患者を第一に考えて儲かる開業医をめざしていきましょう。(クリニック未来ラボ編集部)
<執筆者プロフィール>
クリニック未来ラボ編集部
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