クリニックの集患につながる「診療日・診療時間」の考え方|患者の理想のかかり方を踏まえて解説

診療日・診療時間に対する患者の本音

ライフスタイルが多様化しているといわれて久しい今日では、ユーザーが、自分の生活にフィットするかを基準にサービスを「選び取る」傾向はますます強まっています。それは医療機関選びに関しても同様のよう。となると、一体どのような要素からクリニックが比較検討されているのかが気になるところです。

そこで今回は、患者が重要視する「診療日・診療時間」に関するユーザーインタビューを実施。仕事と家事の両立で自由時間の少ないワーキングママ、仕事で忙しい会社員、子育てに追われる主婦、それぞれ異なる属性の3人の声から、患者が理想とする医療のかかり方を探ります。

「診察日・診療時間」はクリニック選びで最重視されている

医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」が行ったユーザー調査(※)では、4000人を対象に「病院・クリニックを選ぶ際、重要視しているポイントは?」と質問を投げかけました。すると、74.0%で「診療日・診療時間などの時間的条件」が第1位という結果に。

患者が医療機関を選ぶ際、重要視しているポイント

では何曜日の、どの時間帯が、どのような人にとって通いやすいのでしょうか。より患者のニーズを深堀りするために、インタビュー調査を実施。この曜日のこの時間帯にクリニックが開いているとうれしい、といった具体的なニーズをユーザーに聞き取りました。早速、見ていきましょう。

朝の開院時間を30分早めるだけでも、働く親をサポートできる

患者Aさんの発言

Aさん:フルタイムで働いているので、3歳の息子をクリニックに連れて行けるタイミングは、どうしても限定されてしまいます。通いやすいのは、混むと知っていても土曜午前。親子でお世話になっている皮膚科に行くのも決まって土曜の朝なのですが、すごく人気なので、開院1時間前から並ぶこともあります。本音を言えば土曜の朝くらいゆっくりしたい……。日祝か、せめて土曜午後も診てもらえればだいぶ楽になります

平日、仕事終わりに子どもをクリニックに連れて行くこともありますが、着くのは早くて夕方か、時には午後診の終了間際に飛び込むことも。だから、近所に遅くに診てくれる小児科はないかと、いつもアンテナを張っています。新しくクリニックができると、まず「どんな先生なの?」から入って、次に診療時間・曜日に目が行っちゃいますね。オフィス街の歯科だと、20時まで診てくれるところも珍しくないでしょう。近くにも、そのくらいまで開いているクリニックが増えたらうれしいです。

もう一つ、診療時間について希望を言うなら、もう少し開院時間を早めてもらえるといいかな。朝は9時からのクリニックが多い印象ですが、例えば小児科が8時か8時半には開いているとか。それなら、出勤前に子どもを連れて行っても、仕事に遅れずに済んで助かります。

オフィス街のクリニックは、午後の診療時間の後ろ倒しも検討を

患者Bさんの発言

Bさん:仕事を終える時間が、20時や21時になってしまうことも多くて。でも、そのくらいまで開いているクリニックはあまりありません。なので、僕がクリニック選びで重視しているのは、昼休みか、もしくはある程度遅い時間に診てくれるか。定期的に通うだろうと思ったら特にこの点は気にして、良さそうなクリニックがあっても時間が合わないなら受診を諦めてしまいます。

例えば、歯科と慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を診てもらっている耳鼻咽喉科は職場近くにあるのですが、両方とも昼休みにやっていて、夜は19時まで開いているからという理由で選びました。夜に受診する場合は、定時の17時まで仕事をしてからクリニックに行き、また仕事に戻るといった感じです。僕の場合は定時を過ぎれば割と仕事の融通が利くのでこうした通い方ができるのですが、人によってはそれも難しいかもしれませんね。

もちろん僕にしても、仕事終わりや休日にゆとりを持って受診したいというのが本音です。ぜいたくを言うと、オフィスの近くに平日の午後診は17時からだけど、21時まで診てもらえる、みたいなクリニックができれば便利ですし、それと自宅付近に少なくとも土曜の午前か午後どちらかだけでも開いているクリニックが増えてくれれば、非常にありがたいなあ。

混雑状況の発信が、ベストな受診日時の判断材料になる

患者Cさんの発言

Cさん:かかりつけの小児科に娘を連れて行くときは、できるだけ午前中に行くようにしています。そちらは予防接種だけの時間を14時から取ってくれている分、午後の診察は15時からとちょっと遅くて、しかも混みがち。うちの子はまだ1歳3ヵ月で晩ご飯や就寝の時間も早いですから、そこから逆算して、後がばたばたしないよう夕方に連れて行くのは避けています。

私は主婦なので、クリニックに行きたいなら時間の都合をつけやすいほうだと思います。だからクリニック選びで気にしたいのは、どちらかというと先生のお人柄や自宅から近いかどうかなんですよ。とはいえ、なかなかそうはいかず……。夕方だけじゃなく、日中もお昼ご飯を食べさせたり、お昼寝をさせたりと、子ども中心で行動サイクルを組み立てているので、できればそのリズムを乱したくなくて。結局、混雑しにくい平日朝一に利用しやすいクリニックが一番魅力的に見えてしまいます

ただ、その日の混み具合は実際に行ってみないとわからないところがあるじゃないですか。混雑状況をホームページなどでリアルタイムに発信してもらえると、よりいつ行くのがベストか判断しやすくなるのになって思っています。

【まとめ】時間が合わず「通いたいのに通えない人」を減らすことで集患増へ

やはりライフスタイルごとに診療日・時間のニーズには差があり、働く人の場合、オフィス街なら昼休みの時間帯に、住宅地なら出勤前の時間帯に、いずれの立地でも20時以降も診てくれるところだと平日でも利用しやすそうです。休日診療を拡大してほしいとの声も聞かれましたね。

またCさんのように主婦でも、小さな子どもがいる場合は、受診できるタイミングが限られているようです。加えて会社員のBさんから「開院している時間に合わせられず、受診を諦めざるを得ない」という声があったのも気にしておきたいポイント。

開業以来、診療時間を変更していないクリニックも多くあるかと思います。しかし改めてユーザーの声に耳を傾けてみると、「この先生のところに行ってみたい」と思った人が実際に「来られる」ように診療日・診療時間を見直すことは、より患者の満足度を上げるだけでなく、地域医療の充実につながる重要な取り組みともいえるのではないでしょうか。(クリニック未来ラボ編集部)

※ドクターズ・ファイルよる「患者のクリニック選びに関する調査」。対象は、全国主要都市に住む、もしくは勤務する20~59歳の男女4000人。2020年7月にインターネット調査にて実施。

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