クリニックの集患に効果がある施策10選!オンライン・オフライン別に紹介【2025年最新版】

クリニックの集患に効果があるオンライン・オフラインの施策

この記事では、クリニックの集患に効果的な施策を、オンラインとオフラインの両面からご紹介します。

患者数の増加を図るためには、インターネットを活用した集患対策だけでなく、イベントの開催など地域に密着した取り組みも重要です。それぞれの特徴や効果的な活用方法を10の施策としてまとめました。これからクリニックの集患を強化したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

クリニックの集患とは

まずは、クリニックの集患の意味と、増患との違いを解説します。

(1)そもそも集患とは

集患とは、クリニックや病院などの医療機関が患者を集めることを目的とした取り組みを指します。地域医療を支え続けるためには、医療機関は利益を確保し、安定した経営を保つことが必要です。そこで不可欠なのが、集患対策です。新規患者の獲得とあわせて既存患者の維持ができるよう、自院の強みや特徴、患者層を踏まえた施策を講じることが大切です。

(2)クリニックの集患に効果的な施策とは

具体的なクリニックの集患に効果的な施策の種類は、大きく分けて「オンライン」と「オフライン」の2通りがあります。詳しくは後述しますが、前者は地理的な制約なく多くの人へアプローチしやすいホームページやポータルサイト、SNSなどを活用したオンライン手法。後者は近隣の地域住民にアプローチしやすい駅看板や電柱広告などのオフライン手法です。

患者がクリニック探しにおいて活用する情報ツールが多様化する昨今、オンラインとオフラインのどちらかの手法に偏ることなく、両者をうまく組み合わせて効果的なマーケティング戦略を立てることがポイントです。

なお、本稿の後半で解説しますが、実施する際にはオンライン、オフラインの施策ともに、「医療広告ガイドライン」に抵触しないように十分注意しましょう。

(3)集患と増患との違い

「集患」は患者を集める取り組みを指しますが、それと似た言葉に、「増患」があります。増患は、患者数を増やす取り組みを意味します。この二つはほとんど同じ意味で使われていますが、主に集患は「新規患者を集める」、増患は「新規患者だけでなく既存のリピート患者も含めて、患者を増やす」というニュアンスが強いようです。クリニック経営においては、安定した患者の確保が収益に直結するため、新規患者を集めるだけでなく、リピート率を高める取り組みが必要です。

クリニック経営における集患の重要性

クリニック経営における集患は、堅実な経営を維持するために不可欠です。新規患者を効果的に獲得し、リピート率を高めることで、収益の安定化が図れます。その結果、新しい医療設備や機器の導入、人員の補強など、クリニックの成長のための投資がしやすくなり、医療サービスの質の向上にもつながるでしょう。

ただし、単に患者数を増やすことだけを目的にしてはなりません。やみくもに患者を増やした結果、待ち時間が大幅に長くなったり、診察に十分な時間の確保ができなくなったりしては、クレームの要因になりかねません。患者の満足度を高められてこそ、地域での信頼を築き、長期的なクリニックの運営が可能となるはずです。

クリニックの集患に効果的な施策は、「オンラインマーケティング」と「オフラインマーケティング」の2種類です。いずれもクリニック経営に有用であり、適切に活用することで集患とリピート率の向上に期待できます。

オンラインの施策5選

以下は、代表的な5つの効果的なオンライン施策です。

  1. ホームページを開設する
  2. ウェブ広告・リスティング広告を出稿する
  3. SNSやブログで情報を発信する
  4. SEOやMEOの対策をする
  5. 医療ポータルサイトに登録する

次でそれぞれの施策を詳しく解説します。

(1)ホームページを開設する

クリニックの集患に効果的なオンライン施策として、ホームページの開設は非常に重要です。医療ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」の患者調査(※)でも、「直近1年で行ったクリニックを選ぶ際に活用した情報源は?(複数回答)」という質問に対し、一番多い回答は「ホームページ(72.1%)」という結果が出ています。多くの患者が診療科目やクリニックの評判をネットで検索してから受診を決めるため、わかりやすく情報が整理されたホームページは新規患者の安心材料となります

患者によってクリニックを選ぶ基準は異なるため、住所や電話番号、診療時間・休診日などの基本情報や院内設備・医療機器はもちろん、経歴や診療方針といった医師に関する内容など、幅広い情報をホームページに掲載することが大切です。

※出典:ドクターズ・ファイルによる「患者のクリニック選びに関するインターネット調査」(2024年1月実施、対象は全国主要都市の20~50代男女4000人)

(2)ウェブ広告・リスティング広告を出稿する

ウェブ広告やリスティング広告を出稿することも、クリニックの集患に効果的です。

1.リスティング広告とは

リスティング広告(検索連動型広告)とは、ユーザーがGoogleなどの検索エンジンを使って検索したキーワードに応じて表示される広告のことです。

例えば、地域名や診療科目を検索すると、そのキーワードに関連する広告が検索結果画面に表示されます。広告の運用費は発生しますが、検索エンジンで上位に表示させることが可能です。これにより、ユーザーの目に留まる機会が増え、クリニックの認知度を高めることが期待できます。

2.具体的な出稿方法

リスティング広告への出稿を自院でするには、まずGoogleやYahoo!などの広告サイトのアカウントを作成する必要があります。アカウント作成後、広告を表示したいキーワード(例:「地域名」や「診療科目」)を選び、広告文やリンク先のウェブページを設定します。最後に、予算や表示条件を決めて広告を開始すると出稿手続きは完了です。日本では国内シェア率が高いGoogleとYahoo!の両方で出稿するケースが多いですが、予算に応じて出稿先を選んでみてください。

なお、リスティング広告の運用には一定の専門知識が必要であり、人員や時間のリソースもかかるため、専門とする広告代理店に外注するのも一つの手です。

(3)SNSやブログで情報を発信する

SNSやブログを活用した情報発信は、クリニックの集患に効果的です。診療時間や休診日の変更をはじめ、予防接種の案内や季節のイベント、オンライン診療の開始といった最新情報、病気の流行状況や予防法といった医療や健康に関するお役立ち情報などを定期的に発信することで、幅広いターゲット層に関心を持たせることができます。

「6大SNS」と呼ばれているのが、LINE公式アカウント、Instagram、X(旧Twitter)、Facebook、TikTok、YouTubeです。Instagramは若年層に画像や動画を用いて視覚的にアピールしやすい、Xは幅広い層にリアルタイムで情報を拡散しやすいなど、活用するSNSによって得られる効果は異なるため、クリニックの特徴や患者層に合ったツールを選ぶことが重要です。

(4)SEOやMEOの対策をする

ホームページで集患につなげるためには、検索エンジンで上位に表示させることが大切です。上述した「リスティング広告の出稿」のほか、SEOやMEOの対策を行うことも集患に役立ちます。

1.SEO・MEOとは

■SEO対策とは

SEOとは「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」の略称で、Googleなどの検索エンジンで自院のウェブサイトの上位表示をめざす施策の一つです。上位に表示されるほど、それだけユーザーの目に触れやすくなり、サイトへのアクセス数の増加が期待できます。具体的には、サイト設計やコンテンツの質の改善、SNSの活用を通じて、検索結果で上位表示を狙います。

■MEO対策とは

MEOとは「Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)」の略称で、Googleマップなどの地図検索での上位表示をめざす施策です。具体的には、ユーザーが「地域名+診療科」などのキーワードで検索した際に、関連性の高いクリニックを地図上で目立つ位置に表示させることを目的としています。この施策により、地元の潜在顧客に対する視認性が向上し、集患力が強化されます。

MEO対策では、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の最適化が重要です。これにより、信頼性の向上とともに、より多くのユーザーが訪れる可能性が高まります。

2.具体的な対策方法

■SEO対策の方法

SEO対策は、ホームページのサイト設計やコンテンツ、SNSを活用してサイトへのユーザーの流入を増やす施策です。具体的な方法として、キーワードの最適化、質の高いコンテンツの作成、内部リンクの整備、外部リンクの獲得、ページの読み込み速度の改善などが挙げられます。SEO対策で成果を上げるには専門的な知識が必要になるため、自院で実施するのが難しい場合は、SEOコンサルティング会社に依頼することで効果的な対策が可能となります。

■MEO対策の方法

MEO対策の方法には、主にGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)を活用します。具体的には、Googleビジネスプロフィールへの正確な住所や連絡先、営業時間などの登録はもちろん、関連するキーワードを含めた説明文の作成、ユーザーからのレビューの管理、最新の写真の追加などがあります。

これらの対策は、Googleマップなどの地図検索結果での上位表示を狙い、クリニック周辺での認知度向上に効果的です。中でも、ユーザーからの口コミへの迅速な対応や評価の向上は、検索結果での順位に影響を与える要素です。また、定期的に内容を更新して常に最新の情報を提供することにより、地域内での信頼性も高まります。

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(5)医療ポータルサイトに登録する

医療ポータルサイトは、クリニックを探している患者がさまざまな条件で医療機関を検索し、比較検討するためのウェブサイトです。所在地や最寄り駅、診療科目、診療時間、医師などに関する情報を詳しく掲載することにより、患者にとってわかりやすく便利な情報源となります。

前述したドクターズ・ファイルの患者調査(※)でも、「直近1年で行ったクリニックを選ぶ際に活用した情報源は?(複数回答)」という質問に対する回答は、1位の「ホームページ(72.1%)」に続き、2位は「ポータルサイト(57.9%)」という結果が得られ、患者のニーズの高さが窺えます。

※出典:ドクターズ・ファイルによる「患者のクリニック選びに関するインターネット調査」(2024年1月実施、対象は全国主要都市の20~50代男女4000人)

オフラインの施策5選

クリニックの集患に効果的なオフライン施策をご紹介します。主な施策は以下の5つです。

  1. クリニックの看板を設置する
  2. クリニックのチラシを配布する
  3. クリニックのポスターを設置する
  4. イベントや講演会を開催する
  5. 雑誌やフリーペーパーへ広告を掲載する

次でそれぞれを詳しく解説します。

(1)クリニックの看板を設置する

看板の設置は、周辺住民の健康を支える地域密着型のクリニックにとって、重要な集患施策です。クリニックの敷地内のほか、広告費をかけて駅前や繁華街、駅構内、交差点、電柱などの人の目に触れやすい場所に看板を設置します。これにより、クリニックの存在を知ってもらえるだけでなく、クリニックへの道案内にもなります。

ただし、人が看板を目にする時間は短いため、設置場所に応じてロゴや情報量、色、デザインを工夫し、視覚的にクリニックの魅力を明確に伝えることが大切です。

(2)クリニックのチラシを配布する

クリニックのチラシを配布することにより、徒歩や自転車で通える範囲の近隣をはじめ、ターゲットのエリアに直接アプローチできる集患施策です。作成するチラシには、クリニックの所在地や診療科、診療時間などの基本情報だけでなく、「個室診察室」「キッズスペース完備」「夜7時半まで・土曜・日曜日も診療」などといった特徴もわかりやすく掲載することで、より多くの関心を集められます。

チラシは患者が捨てない限り、手元に置いてもらえるのも利点でしょう。チラシのポスティングや新聞の折り込みのほか、地域のイベントなど人目に触れやすい場所での配布も効果的です。

(3)クリニックのポスターを設置する

クリニックの窓はもちろん、駅や車両内など多くの人目に触れる場所にポスター広告を掲示することで、通行人や乗客にクリニックの存在をアピールできます。設置する場所によって費用は異なりますが、自院であればポスター制作費のみでコストを抑えられるでしょう。力を入れる検査や治療をアピールすることで、患者の興味を引き、集患につなげることができます。できるだけ定期的にデザインを変更し、新鮮な印象を保ち続けるようにしてみてください。

(4)イベントや講演会を開催する

地域住民向けに、病気や健康に関する講演会や相談会のほか、健康体操や院内ツアー、医療従事者の「お仕事体験」といった独自のイベントを開催することは、新規患者の獲得だけでなく、クリニックの「ファン作り」に有効です。患者になる可能性のある近隣住民と交流することで、クリニックの評判や信頼性の向上が期待できます。

また、新規開業時には内覧会や見学会を開催し、地域住民や関係者にクリニックを直接知ってもらうことで、受診のハードルを下げることができるでしょう。

(5)雑誌やフリーペーパーへ広告を掲載する

地域密着型の情報誌やフリーペーパーへの広告の掲載も、クリニックの集患に効果的なオフラインマーケティング施策の一つです。これらの紙媒体は、例えば、「〇〇市の子育て世代向けの育児雑誌」「△△エリアの高齢者向けの健康情報誌」などのように、特定のエリアや年代、コミュニティーの読者層に訴求しやすいという特徴があります。そのため、自院がターゲットとする患者層に直接アプローチしやすく、一方の患者にとっても自宅や職場などから近い場所でかかりつけ医を探す際に活用しやすいといえます。

また、紙媒体は保存性・再読性が高く、患者が手元に置いて、繰り返しクリニック情報を見てもらいやすいというメリットもあります。

クリニックの集患を成功させるコツ7選

具体的なクリニックの集患施策を解説しましたが、成功させるためにはコツがあります。特に、これから開業を予定している方は、集患の成功に向けた戦略が求められます。そのために効果的なコツは、以下の通りです。

(1)地域の医療ニーズを把握する

クリニックの集患を成功させるには、開業前に地域の医療ニーズを正確に把握し、それに基づいた運営方針を立てることが重要です。そのために行うべきなのが、「診療圏調査」です。この調査では、周辺地域の人口構成(性別・年齢など)、競合クリニックの割合、1日当たりの受療率などのデータが収集できます。それらの情報を基に、地域にマッチした診療科目やサービスを決定し、適切なマーケティング戦略を立てることで、新規患者の獲得につながります。

地域特性を正確に把握することは、競合との差別化を図るのに大切です。診療圏調査の実施によって、開業前に必要な情報を効率的に収集し、それに応じた戦略を実行することで、集患効果を最大化できるでしょう。診療圏調査のやり方は、専門会社に依頼するほか、専用のウェブサイトやスマホアプリを活用して自分自身で行う方法があります。

(2)開業場所は好立地を選ぶ

開業場所は、クリニックの集患に影響する重要な要素です。アクセス面はもちろん、エリア別の人口構成を考慮し、適切な立地で開業する必要があります。

例えば、小児科や産婦人科は、比較的ファミリー層の多い住宅街や保育園、病院が近い立地が適切です。また、美容クリニックは女性や若い世代の利用者が多い傾向にあるため、仕事帰りに受診しやすい駅前などでの開業が適しています。開業前に診療圏調査を徹底し、周辺地域の住民の性別や年齢など情報収集することが大切です。

(3)予約システムを導入して待ち時間を短縮する

予約システムも、集患に役立ちます。多くの患者が待ち時間にストレスを感じる傾向にあるため、予約システムの導入によって待ち時間が短縮することで、患者満足度の向上につながります。その結果、再診率が上がったり、良い口コミや評判が増えたりするなど、集患に大きく貢献します。

特にウェブ予約システムの場合、24時間いつでもどこでも予約が可能になることで患者の受診のハードルを下げたり、リマインド機能で予約忘れを防止したりするだけでなく、受付スタッフの業務の効率化にもつながります。

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(4)他院との差別化を図る

患者に自院を選んでもらうためには、他院との差別化が必要です。診療科目やサービスの独自性を打ち出し、特色を明確にすることで患者に選ばれやすくなります。

例えば、「舌下免疫療法に力を入れる耳鼻咽喉科・アレルギー科」「男性更年期障害の専門外来を設置する泌尿器科」などといったように、他院にはない強みや専門性を打ち出せると良いでしょう。また、最新の医療機器の導入、プライバシーに配慮した空間や感染症対策など充実した院内の設計・設備なども、受診の後押しにつながります。競合クリニックとの差別化は、患者の関心を引きつける重要な要素であり、高い集患効果が期待できます。

(5)効果的な広告を運用する

広告は集患に有効な施策ですが、正しく運用しないと期待した効果を得ることはできません。オンラインとオフラインの広告があることは前述しましたが、例えば、特定の疾患や治療に関心のある患者にアプローチしたいのであればリスティング広告が、地域密着型のクリニックであれば駅看板やチラシのポスティング広告が有用といったように、目的とターゲットを明確にした上で、複数の手段を使い分けながら出稿することが重要です。

また、宣伝手法だけでなく、その内容も考慮することが必要です。広告の種類に合わせて、クリニックの強みや特徴をわかりやすく訴求することで患者の関心を引くことができるはずです。

(6)クリニックの医療接遇を改善する

医療接遇の改善も、集患の成功を後押しします。医療接遇とは、一般的なサービス業の接客(接遇)とは異なり、体の痛みや不安を抱える患者の気持ちに寄り添った応対のことです。その改善に取り組むことで、患者との信頼関係の構築が可能になり、クリニックの評判の向上につながるでしょう。その結果、インターネット上の高評価の口コミやレビューを見て訪れる新規患者の獲得、さらにリピート率の向上も期待できます。

なお、医療接遇の改善は以下の5原則で構成されています。

  • 表情
  • あいさつ
  • 言葉遣い
  • 身だしなみ
  • 態度

この5つの原則を基に、医師をはじめとするすべてのスタッフが一貫したスキルを身につけることが求められます。そのためには、医療接遇マニュアルの策定、接遇マナー研修の受講に取り組むことが必要です。

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(7)高評価の口コミを獲得する

患者は、クリニック選びでGoogleなどの口コミ評価を重視する傾向があります。口コミは治療内容や医療スタッフの印象など、クリニックの内部情報を知る貴重な情報源です。高評価の口コミを獲得することでクリニックの信頼性が向上し、新規患者の関心を引くことにつながります。

そのためには、ウェブ予約システムや自動再来受付機などのITシステムの導入により待ち時間を短縮したり、スタッフへの研修や勉強会の実施により医療サービスの質を向上させたりなど、あらゆる面から患者満足度を高め、高評価の口コミを獲得する努力が必要です。

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クリニックの集患に関する注意点

クリニックの集患を成功させるためには、具体的な施策や手法だけでなく、注意点を理解することも大切です。特に広告を出稿する際は、医療法による規制の遵守や患者への誠実な情報提供が求められます。

ここでは、医療広告に関する注意点を詳しくご紹介します。

医療広告ガイドラインを遵守する

集患を目的にクリニックが広告を出稿する場合、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」(※)を遵守しなければなりません。医療広告ガイドラインは、正式には「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」と呼ばれ、もし違反し、悪質な違反広告と見なされた場合、クリニックの開設許可の取り消しや一定期間の閉鎖という厳しい行政処罰を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

※出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン) 令和6年9月13日最終改正」

以下は、医療広告ガイドラインの概要と遵守するポイントです。

1.医療広告規制とは

医療広告規制とは、病院やクリニック・診療所が広告を行う際に、患者など利用者保護の観点から、誤解や過度な期待を与えないようにするためのルールです。具体的には、虚偽や誇大な広告表現を禁止し、治療内容やリスクを正確に伝えることが求められます。

以下は、医療広告ガイドラインが定める医療広告規制の基本的な考え方です。

医療広告規制の基本的な考え方

(1)医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。

(2)医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。                     

(医療広告ガイドライン第1-2参照)

上記の考え方に基づき、限定的に認められた事項(限定解除)以外は、原則として広告禁止とされています。

広告規制の対象となるか否かは、患者にクリニックを受診させようとする意図があるか(誘因性)、クリニックの名称など医療機関が特定できる状態にあるか(特定性)が判断基準となっており、従来のテレビCMや看板などの広告に加えて、2018年よりホームページやSNSも医療広告規制の対象になっています。

規制の対象となる医療広告の定義

次の(1)と(2)の両方の要件を満たす場合に、規制の対象となる医療広告に該当します。

(1)患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
(2)医師・歯科医師の氏名や病院・クリニックの名称が特定可能であること(特定性)

(医療広告ガイドライン第2-1参照)

また、医療広告で禁止されている事項は次の通りです。集患で広告を活用する際は注意が必要です。

禁止される広告

(1)内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
(2)他の病院や診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
(3)誇大な広告(誇大広告)
(4)公序良俗に反する内容の広告
(5)広告可能事項以外の広告
(6)患者等の主観に基づく、治療等の内容、効果に関する体験談(口コミ)
(7)治療等の内容や効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前や後の写真等(ビフォーアフター)
(8)その他、費用を強調するなど品位を損ねる内容の広告など

(医療広告ガイドライン第3-1参照)

このように、医療広告は厳しい規制に基づいて行わなければなりません。そのためには、患者をはじめ、誰が見ても内容を適切に理解できるよう、客観的で正確な情報の提供が求められます。

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2.遵守のポイント

医療広告ガイドラインの遵守のポイントは、患者に誤解を与えないよう、正確かつ客観的な情報を提供することです。特に、治療効果やリスクに関しては虚偽や誇大な表現を避け、実際の事実に基づいた記載を心がける必要があります。例えば、体験談やビフォーアフターの掲載は、虚偽広告や誇大広告に該当する可能性があるため注意が必要です。

そして、厚生労働省では、関係者に向けて医療に関する広告規制への理解を深めるために、実際にあった医療広告の違反事例などを基にした解説書を作成しています。注意点がわかりやすくまとめられており、下記の厚生労働省のホームページから入手可能なので、活用すると良いでしょう。

厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 (第4版) 令和6年3月作成」

医療広告ガイドラインは、クリニックが集患のために広告宣伝をする上で切り離せないものです。しっかり守ることで、患者の信頼を獲得できれば、結果的にクリニックの評判を高めることにつながるでしょう。

まとめ

今回は、クリニックの集患に効果的な10の施策を中心に、オンライン・オフライン別の具体的な手法や広告規制についてご紹介しました。クリニックの運営には、集患による収益の確保が重要です。そのためには、オンライン・オフラインそれぞれの施策を並行して活用し、集患につなげる必要があります。特にオンライン施策は、インターネットが主流の現代において効果的な手法です。

また、オフライン施策においても、地域の特性やターゲットに応じた効果的な広告を展開し、患者との信頼関係を築くことが大切です。ただし、広告を行う際は、虚偽広告などにより患者に不利益を与えないよう医療広告ガイドラインを遵守することを忘れてはいけません。これらの施策をバランスよく行うことで、クリニックの知名度や評判が向上し、安定した集患につなげられるでしょう。(クリニック未来ラボ編集部)

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