経営のヒント

2024.10.25

正しい口コミ対策で選ばれるクリニックに!悪評を減らして信頼を高める方法を解説

クリニックの口コミ対策

近年では、クリニックを選ぶ際に「患者の口コミ」が大きな影響力を持つようになりました。特にインターネット上に数多く存在する口コミサイトやホームページ、地図検索サービスのレビュー機能は、患者が医療機関を選ぶ際の重要な判断材料となっています。

しかし、根拠のない悪評や誹謗中傷が書き込まれ、クリニックの経営に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。2024年4月には、Google Mapに事実と異なる口コミを書き込まれ、削除依頼したにもかかわらず運営側がそれを放置したとして、全国の医師たちがアメリカのGoogleに対して損害賠償を求めて集団訴訟を起こすという事態も発生しました。

そこで本記事では、クリニック側が悪い口コミに対してどのように対策するべきか、医療広告ガイドラインを踏まえながら具体的な対策方法を解説していきます。クリニックを悪質な口コミから守り、患者からの高い信頼を得るための参考の一つにしていただければ幸いです。

クリニックの口コミ対策が重要な理由

口コミは行動経済学や社会心理学でいう「社会的証明」の典型例であり、消費者の多くは他者の意見・評価に影響を受けて意思決定を行う傾向にあることがわかっています。また、総務省「令和5年(2023年)通信利用動向調査」(※)によると、2023年時点では個人の86.2%がインターネットを利用しており、現代においてオンライン上の口コミが果たす役割は一層大きくなっているといえるでしょう。

これは医療という専門性の高い分野であっても世界的に例外ではなく、例えば台湾の論文でも、政府機関が発行する医療機関の品質評価レポートよりも、患者が医師評価サイトやソーシャルメディアの意見を参考にする傾向があることが確認されています。

患者にとって、自分と同じ立場で実際にクリニックを利用した人たちの生の声は非常に重要であり、クリニックを選ぶ際の判断材料として積極的に口コミやレビューを参照しているのです。

加えて、Google Mapの口コミ評価は「SEO(検索エンジン最適化)」と「MEO(マップエンジン最適化)」といったマーケティング施策にも大きな影響があります。

  • SEO:検索エンジンにおいて特定のウェブサイトを検索結果の上位に表示させ、ユーザーの流入増加をめざす施策
  • MEO:Google Mapなどの地図検索でビジネス情報を上位表示させ、ローカルビジネスの可視性を高める施策

Google Mapで高評価の口コミが多いクリニックは、SEO・MEOにおいて有利となり、オンライン上での露出が増えることで、より多くの潜在患者に発見される可能性が高まります。逆に、低い口コミ評価はオンラインでの集患力に悪影響を及ぼしてしまうため、注意が必要です。

※出典:総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」

クリニックの口コミ対策と医療広告ガイドライン

このように、クリニックによる口コミ対策は集患力に大きく影響します。そこで本章からは、実際の対策について解説していきます。

まず、口コミに関する対応を考えるための前提として、医療機関による不適切な広告を規制することで患者の被害を防ぐ「医療広告ガイドライン」(※1・2)への抵触リスクについて知っておくことが肝要です。

個人ブログやSNS、あるいは第三者が運営する口コミサイトや医療ポータルサイトなど、評価の公平性が保たれたプラットフォーム上に患者が自主的に投稿した口コミ自体はガイドラインの規制対象にならないことをご存じの方も多いでしょう。

そういった口コミに対してクリニック側から返信を行う際は、医療広告ガイドラインへ抵触しないよう慎重に文言を選ぶことが求められます。具体的には、ガイドラインにおける「誘引性(患者の医療機関選択に影響を与え、特定のクリニック受診などを誘引する性質)」の要件を満たさないよう注意が必要です。

例えば、返信の文章で提供する医療の内容やクリニックについて説明する際、誤って虚偽広告や比較優良広告、誇大広告に該当する表現を含めたり、他の患者の体験談などを記述したりしてしまうと、規制や処罰の対象となる可能性があります。

同時に、クリニックは患者の個人情報について守秘義務があるため、返信の際に個人情報を記載することがないよう留意しましょう。

※1 出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
※2 出典:厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A」

あわせて読みたい

クリニックへの悪い口コミを書かれた場合、書かれた側は削除できる?

次に、クリニックに対する悪い口コミや低評価への実践的な対処法として、クリニックへの悪い口コミが削除できるかについて説明します。

結論からお伝えすると、基本的にクリニック側で第三者が運営する口コミサイトや個人ブログ、SNSなどの口コミを自由に削除・編集することはできません。これは、特定の医療機関による口コミの選別はプラットフォームにおける評価の公平性を損ない、Googleなど運営会社が設ける規約・ポリシーに反するためです。

そのため、誹謗中傷や虚偽の悪評などの悪質な口コミによってクリニックが被害を被った場合は、まずは投稿者への削除申請を行うか、プラットフォームの利用規約を確認の上で運営会社に削除依頼を行います。例えばGoogle Mapであれば、悪いコメントがGoogleのポリシーに違反している場合、口コミの右上にある縦三点リーダーの「レビューを報告」から削除依頼をするなど、いくつかの方法があります。

ただし医師たちがGoogleの集団訴訟に踏み切ったように、削除申請が認められないケースも多いことは念頭に置きましょう。

投稿者も削除に応じず、プラットフォーム運営会社も削除対応を行わない場合は、最終手段として口コミ投稿者や運営会社を相手にした法的措置の検討も可能です。法的措置を検討される際は、医療領域に強い弁護士に相談することをお勧めします。

クリニックの口コミ対策を行う際の基本方針

とはいえ、訴訟には多大な費用と労力がかかるため、現実的な選択肢にならないケースが大半です。例えば、弁護士に口コミの削除を依頼する相場として、プラットフォームへの削除請求を代行してもらう場合は「10~20万円」程度、裁判所への申し立てを行う場合は「35〜40万円」程度の費用が発生します。

また、その悪評が患者の誤解に基づく場合や、クリニック側に一定の落ち度がある場合は、削除申請や訴訟による解決は見込めません。

そこで、より一般的な方法として「悪い口コミに対して誠実に返信する」という施策がお勧めです。真実の場合は、まずできるだけ早く誠意を持って謝罪し、勘違いや事実と異なる場合は丁寧に正しい情報を伝えるなど、クリニックが悪い口コミに対して誠実かつ毅然とした態度で対応することで、むしろ「患者の意見に真摯に向き合うクリニック」というポジティブな印象を与えることができます。口コミへの返信は、誤った情報を正し、誤解を解消するチャンスにもなるのです。

前提として、悪い口コミを書かれた際には、それがたとえ虚実であっても放置は危険です。これには、良い意見より悪い意見に敏感に反応するという人間の心理が関係しています。クリニック側から悪評について説明がない場合、利用者は「真偽はわからないが、悪評が多いので念のため回避しよう」と考える傾向にあるのです。

たとえポジティブな口コミのほうが多いとしても、一部のネガティブな口コミによってクリニック全体の評判が損なわれ、集患や求人に影響が出る可能性もあるため、十分注意しましょう。

一方で、一般にはレビューに丁寧な返信を行わないクリニックも多いため、口コミへ誠実に返信する施策は他院との差別化につながり、オンラインでの集患力を上げる施策としても高い効果が期待できます。

返信する際は、定型文をコピー&ペーストするのではなく、できるだけ投稿者一人ひとりの気持ちに寄り添った言葉を選ぶと、より誠意や親しみやすさが伝わるはずです。

悪い口コミを書かれてしまった場合の対策を解説

続いて、悪い口コミを書かれた場合の対応について、より具体的に解説します。まず、クリニックにおける悪い口コミには、大きく分けて3種類あります。

  1. 患者側の誤解などに基づく意見
  2. 事実に反する記述や誹謗中傷などの悪質なもの
  3. クリニック側に落ち度があり、経営の改善に生かせる率直な意見

具体的な対処法は悪い口コミの種類によって異なりますので、それぞれ詳しく紹介しましょう。

患者の誤解に基づく口コミへの対応

患者の誤解に基づく口コミへの対応は非常にデリケートな問題であり、慎重な対応が求められます。

前述のとおり、口コミには誠実な対応が重要です。患者の誤解に基づく口コミへの返信の場合、まずは誤解を与えてしまったことに対して謝罪した後、「誠に恐れ入りますが、当院ではご指摘いただいたような〇〇の治療は行っておりません。もしかしてお間違えではないでしょうか。お手数をおかけして恐縮ですが、今一度、ご確認いただけますと幸いです」のように冷静かつ客観的な返信を行います。

このとき、医療従事者には守秘義務があるため、投稿者が特定されないよう個人情報の扱いに細心の注意を払います。また、感情的になるのもNGです。投稿者に対して反論するのではなく、口コミやその返信を見る一般の利用者すべてに対して説明するイメージで文章を作成すると良いでしょう。

悪質な口コミへの対応

一方で、事実無根の悪質な口コミに対しては、プラットフォーム側への削除申請を行いつつ、同時に将来的な法的措置を見据えた対応を行っておくことをお勧めします。例えば、誹謗中傷や虚偽の口コミに対して謝罪を行うことは推奨されていません。これは、裁判の際に「事実を認めた」証拠であると揚げ足を取られ、不利になる可能性があるためです。

また、日時とともに写真(スクリーンショット)を残すなど状況を記録し、裁判の際に証拠として活用できるように準備するとよいでしょう。

具体的な対応に迷った場合は、医療機関専門の弁護士に相談することをお勧めします。

クリニック側に一定の落ち度がある口コミへの対応

悪い口コミを書かれた際、クリニック側に一定の落ち度がある場合は、患者の意見に真摯に向き合うことが大切です。誠意を持った対応を行うことで、むしろクリニックの信頼度を上げることができます。具体的には、返信文に次のような内容を含めましょう。

  • フィードバックへの感謝を伝える
  • 謝罪と共感を示す
  • 改善策を示す
  • 建設的な意見としてサービス向上に生かすことを約束する

まずは「貴重なご意見ありがとうございます」といった丁寧な言葉で、意見を寄せてくれたことに対して尊重と感謝の意を伝えます。

次に、患者の気持ちに寄り添い、不快な思いをさせてしまったことについて謝罪しましょう。「〇〇という点で、ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした」といったように、口コミの内容を踏まえて謝罪することで誠意が伝わりやすくなります。

そして、現実的な改善策を示しましょう。悪い口コミは経営者にとって耳が痛いものですが、クリニック側が気づけなかった患者のニーズを把握して経営の改善に生かせるきっかけにもなります。「〇〇という点については、今後、〇〇のような取り組みを行っていく予定です」と、改善に向けた具体的な行動を示すことで、「きちんと意見を見てくれている」と患者に好印象を与え、信頼回復に貢献します。

最後に、患者の意見をクリニックのサービス向上に生かすことを表す文章があるとよいでしょう。「いただいたご意見は、今後のサービス向上に生かしてまいります」と伝えることで、患者の意見が今後の改善になるということを示し、長期的な信頼関係の構築につながります。

次の章では、具体的な例文を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

患者との信頼関係を築く謝罪文の例

口コミへの返信は単に謝罪するだけでなく、患者の気持ちに寄り添い、具体的な改善策や口コミを投稿してくれた感謝の気持ちを示すことで、より誠意が伝わります。こちらは、クリニック側に一定の落ち度がある口コミの場合の返信例です。

例文1:「待ち時間が長かった」という口コミへの返信
〇〇様

この度は、貴重なご意見ありがとうございます。

待ち時間が長くなり、ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません。

いただいたご意見を参考に、受付の待ち時間を短縮するための予約システムの導入や、スタッフの配置の見直しなど、さまざまな対策の実施を検討してまいります。

今後とも〇〇クリニックをよろしくお願いいたします。

例文2:「説明がわかりにくかった」という口コミへの返信
〇〇様

この度はご来院いただきまして誠にありがとうございました。

説明がわかりにくく、ご心配をおかけしてしまいましたこと誠に申し訳ございません。心よりお詫び申し上げます。

今後は患者様にご理解いただけるよう、病状や治療についての疑問や不明点などを確認しながら、より丁寧な説明を心がけてまいります。

お忙しい中、貴重なご意見をお寄せいただき誠にありがとうございました。

わかりにくい点などございましたら、ぜひ、お気軽にご質問ください。

クリニックの印象を改善するための口コミ対策

最後に、悪い口コミを減らし、良い口コミを増やすことでクリニックの印象を改善するための施策を紹介します。

悪い口コミを減らす方法

まず、サービスの品質改善によって、患者からのクリニックへの評価を上げましょう。口コミで繰り返し指摘されている問題点があれば、積極的に改善に取り組むことが大切です。

  • 待ち時間の長さ: 予約システムや自動再来受付機械などの導入
  • 説明不足: 丁寧な説明を心がけ、患者が理解できているかを確認
  • 清潔感: 定期的な清掃、消毒の実施
  • スタッフの対応: 研修や勉強会などスタッフ教育の徹底

これらの改善によって、口コミの評価が向上し、将来的な悪い口コミの増加を予防できます。また、口コミへの返信は、患者とのコミュニケーションを深め、信頼関係を構築する上で非常に効果的です。特に、クリニックの院長が自身で返信すると、患者に誠意が伝わりやすいでしょう。

また、院長が口コミに一つ一つ返信するだけでも、悪意のある口コミを予防する効果が期待できます。院長が口コミをすべて読んでいる、返信しているとわかることで、悪意を持って口コミを書き込もうと考える人が減る傾向にあるためです。

さらに、クリニックの口コミを書くのは患者だけではない点に気をつけましょう。

例えば、過去に働いていたスタッフや関係者が、退職後に口コミを書く場合もあります。退職者は何かしらの不満を抱えて辞めていることがあるため、口コミがネガティブになりやすいといわれています。内部事情に詳しい退職者による口コミは具体性やリアリティーがあり影響が大きいため、賃金などの待遇や院内コミュニケーションの改善、退職時に秘密保持契約書を締結するなどの対応を通じて回避しましょう。

良い口コミを増やす方法

クリニックへの悪い口コミを減らすだけでなく、良い口コミを増やす施策を同時に行うと効果的です。

例えば、セルフケア能力を高める患者教育や健康情報、クリニックの最新ニュースに関する記事や動画をホームページやメールマガジン、SNSなどを通じて定期的に発信することで、クリニックへの信頼感を高め、良い口コミを増やすきっかけを作れます。また、地域イベントへの参加なども、クリニックの認知度向上と地域住民からの信頼獲得につながるでしょう。

良い口コミを募るためには、まず口コミ自体の数を増やす必要があります。そのためには、次のような施策が効果的です。悪いクチコミを目立たなくするという意味でも、口コミの総数を増やすことは有用でしょう。

  • 診療後や会計時に直接、患者に依頼する
  • 手軽に投稿しやすいよう、口コミページのQRコードを用意する
  • ホームページや院内掲示、チラシなどに口コミのQRコードを載せ、募集する
  • メールマガジンやLINEのお知らせで口コミのお願いの案内を送る

特に「診療後や会計時に直接、患者に依頼する」は効果が大きく、投稿依頼の目的は患者へ提供するサービスの改善のためだと説明すると、患者思いのクリニックであることがアピールでき、協力してもらいやすくなるでしょう。常連やクリニックに対して好意的な患者にお願いしているクリニックもあるそうです。

ただし、良い口コミだからといって、投稿された口コミをクリニック側で勝手に編集したり、選別したりして、自院のホームページなどに公開する行為は、医療広告ガイドラインに抵触するためNGです。また、患者に口コミ投稿を依頼する際、割引やプレゼントなどの付加価値を提供する代わりに指定したレビューや星の評価を投稿させることはステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」に該当し、景品表示法で禁止されていますので、注意してください(※)。

※出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」

なお、患者から良い口コミをもらった際は、感謝を伝える丁寧なお礼メッセージを返信すると良いでしょう。温かみのある印象を作ると同時に、顧客とのコミュニケーションを促進し、クリニックへの信頼感をより一層高められます。

クリニックの口コミは総合的な対策で信用アップ

本記事では、クリニックにおける口コミ対策について、悪い口コミへの対応と良い口コミを増やす施策の両面から解説しました。

患者の生の声を反映する口コミは、クリニックの集患力に大きく影響し、新規患者の獲得や既存患者のリピート率を左右する重要な要素です。

口コミ対策を行う際は「悪い口コミを減らす」「良い口コミを増やす」という両輪の施策で取り組むことが重要です。 一方だけに偏ることなく、2つの施策をバランス良く実施することで、より効果的な口コミ対策を実現しましょう。(クリニック未来ラボ編集部)

関連記事

Googleマイビジネス(ビジネスプロフィール)のクリニック活用術【入門編】