フィードバック面談の効果と方法《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第7回(最終回)】

フィードバック面談の効果と方法を解説

患者が医療機関を選ぶ上で、ポイントの一つとなるのがそこで働くスタッフの存在。親切丁寧な対応や優しい笑顔、寄り添う姿勢は患者にとって大きな支えとなります。

そんなクリニックの顔ともいえるスタッフが高いモチベーションで働けるよう、近年、医療機関でも注目を集めているのが「人事評価制度」。

高齢化が加速する日本では医療ニーズが高まる一方で、医療現場は慢性的な人手不足に陥っており、今後、ますます人材確保が難しい時代になることが予想されています。

人事評価制度は上手に活用することで、スタッフの成長や定着率の向上が期待でき、生産性や業績アップといった経営改善にもつながります。すでに興味・関心を寄せているドクターも多いのではないでしょうか。

本連載「人事評価7つの基本のキ」では、院長が知っておきたい“導入の基礎”を7回にわたり解説します。最終回となる第7回は「クリニックにおけるフィードバック面談」を取り上げます。

【記事公開日:2024/1/19|最終更新日:2026/2/26】

ドクターズ・ファイル クリニコ

スタッフの納得度を左右する「フィードバック面談」とは

人事評価制度における「フィードバック面談」とは、評価者から部下へ人事評価の結果とその根拠を伝え、今後の成長に向けた課題や次期の目標について話し合う場を指します。

人事評価は、評価や査定が確定したら終わりではありません。評価者は、被評価者のスタッフへ評価結果とその根拠を伝え、今後の課題について前向きに話し合うフィードバック面談を行う必要があります。

フィードバック面談は、評価への従業員の納得感を高める方法として多くの企業が取り入れています。近年はクリニックにも広がっており、一般企業と同様に、評価期間に合わせて半年から1年に1度の頻度で実施するケースが増えています。

人事評価制度への不満はフィードバック面談に原因がある?

人事評価制度の基準を明確にし、公平な評価を心がけたとしても、スタッフから「結果に納得できない」「目標がわからずやる気がなくなった」などの不満の声が聞かれることがあります。

そんなときはもしかしたら、評価者からスタッフへ人事評価の結果をフィードバックする方法に原因があるかもしれません。

実際、フィードバック面談には資料作成や事前準備が必要で、忙しい院長にとっては時間的・精神的負担が大きくなりがちです。その結果、説明が十分でなかったり、スタッフが評価の根拠を理解しきれなかったりするケースも生まれます。

とはいえ、フィードバック面談はスタッフの納得感や成長を引き出し、クリニック全体の生産性や雰囲気にも大きく影響する重要なプロセスです。人事評価制度を成功に導くうえでも、決しておろそかにできない重要な取り組みといっても過言ではないのです。

フィードバック面談によって期待できる3つの効果

ここからは、フィードバック面談には主にどのような効果があるのかを具体的に見ていきましょう。

1.評価への納得度が高まり、スタッフのモチベーションが向上

評価者から評価結果の根拠をきちんと言葉で説明されることで、スタッフの納得度が高まります。自分の頑張りが正当に評価されていることがわかれば、仕事へのやる気も向上します。双方の評価基準への認識のずれがなくなるため、スタッフから不満が出づらくなります。

スタッフがモチベーション高くいられることで、仕事の生産性の向上にも期待ができます。

2.パフォーマンスが上がり、スタッフの成長につながる

評価結果とその根拠について会話することで、スタッフ自身が認識していなかった強みや弱み、問題点、課題に気づくことができます。

自分のどういった部分が評価されたのか、逆にどのような部分が低評価だったのか、客観的な視点で自分を見るきっかけをつかめば、「目標達成のためにどう取り組むべきか」「改善するには何が足りていないのか」など、自主的に解決策を考える力が育まれるようになり、成長につながります。

3.コミュニケーションが円滑になり、信頼関係が築きやすくなる

スタッフの課題や問題の解決に向けて、評価者が一緒に向き合う時間を定期的につくることで密なコミュニケーションが取れるようになります。一方的に伝えるのではなく、対話をすることで互いの信頼関係が深まり、日常的にスタッフが相談や提案をしやすい環境も築けるでしょう。

また、評価者もスタッフの適性をより深く知ることができれば、指導者として今後のマネジメントに役立ちます。

看護師や医療事務、受付などクリニックで
働くスタッフを適切に評価・管理

ドクターズ・ファイル クリニコ

フィードバック面談の主な流れと評価者が気をつけたいポイント

評価者として肝に銘じておきたいのは、フィーフォバック面談は、評価者が一方的に人事評価の結果や処遇のみを伝えたり、マイナスな結果に対して注意したりする場ではないという点です。あくまでもスタッフの成長を支援するために、問題の解決策や今後の方向性について、双方で前向きに話し合う“成長支援の場”であることを忘れないようにしましょう。

ここからは、一般的なフィードバック面談の流れと、押さえておきたいコツを紹介します。

1.事前準備を行う

まずは、事前に評価結果の内容を確認し、きちんと根拠を用意しておくことはもちろん、想定される質問とそれに対する適切な回答や助言をシミュレーションしておきましょう。

質問や助言は一方的に評価者の考えを押しつけるのではなく、スタッフが自発的に気づきを得られるような言い回しを考えておくことがポイントです。特にマイナス評価にふれる際は、モチベーションを下げないよう言葉選びに細心の注意を払います。

また、フィードバック面談の所要時間は、1人につき最低30分以上、1時間程度が理想です。場所は、会話の内容が漏れないよう、プライバシーを確保できる会議室(個室)を用意しておきましょう。

2.アイスブレイクを入れながら場をつくる

いきなり評価の話に入るのではなく、まずは軽い会話で緊張をほぐします。スタッフ側は「どんな評価なのか」「院長に伝えたいことがある」など、不安や緊張を抱えているケースが多いためです。

季節や気候、好きなもの、趣味の話など、プライベートに踏み込み過ぎない範囲の話題で場を温め、リラックスして話しやすい空気をつくってから本題に入ります。

3.スタッフに自己評価をしてもらう

先にスタッフ本人に、目標の達成度について自己評価をしてもらいます。評価者からの評価を先に伝えると、スタッフが評価者からの評価結果に引っ張られて、本音を引き出しづらくなってしまうためです。

ここで大切なのは、評価者が最後までしっかり傾聴すること。話を遮ったり、否定したり、かといって書類に目を落としたまま黙って聞いていたりするのもNGです。適度に頷く・相づちを打つ・目を見る・メモを取るなどして、スタッフがリラックスして話しやすい雰囲気を心がけます。

4.人事評価の結果を伝える

スタッフから自己評価を共有してもらった後は、評価者から評価結果とその理由を伝えましょう。スタッフが受け入れやすいよう、まずはプラス評価や褒める点などポジティブな内容から切り出します。

このとき、できるだけ評価の根拠を具体的な事実や数値をもとに丁寧に説明しましょう。特に自己評価とギャップがあるマイナス評価については、そうすることで納得感を得やすくなるはずです。スタッフから疑問や不満が出た場合は、否定せず、互いが納得できるまで話し合います。

5.課題を共有し、その解決について話し合う

双方が評価結果に納得できたら、スタッフが取り組むべき課題を明らかにし、来期に向けた解決策や目標について一緒に考えます。このとき大事なのが、評価者の意見を押しつけるのではなく、スタッフが自分自身で考えられるように誘導することです。

それにより、受け身ではなく、能動的に仕事に取り組みやすくなります。お説教にならないよう、前向きな助言や励ましの言葉でモチベーションを上げる対話を心がけましょう。

6.面談のまとめを行う

最後に、課題解決のための行動など今後の方向性が見えたら、言い忘れたことや質問がないかをスタッフに確認します。フィードバック面談は、評価結果に納得し、前向きな気持ちでスタートが切れる状態で終わることが理想です。

今後への期待と感謝の気持ちを言葉にし、必要に応じてサポートする姿勢を示すことで、信頼関係をさらに強められます。

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マイナス評価をスタッフにフィードバックする際の5つのコツ

ドクターの中には、スタッフにマイナス評価を伝えることに対し、「気分を害するのではないか」「批判と受け取られてしまうのではないか」と躊躇してしまう方もいるかもしれません。

しかし、マイナス評価から見えてくる課題は、スタッフの成長のきっかけにもなります。また、クリニック全体の業務改善や経営力向上にもつながるため、適切に伝えることはとても大切です。

ここでは、スタッフがマイナス評価に納得し、前向きに受け止められるよう、評価者が気をつけたい5つのポイントを紹介します。

1.否定的・高圧的な態度を取らない

フィードバック面談の目的は「人材の育成」です。しかし、上司と部下という関係性から、つい評価者は指導のつもりで上からの物言いになりやすいため、注意が必要です。

良かれと思った言動が相手を追い詰めてしまうことのないよう、落ち着いたトーン・丁寧な言葉遣い・相手の尊厳を尊重する姿勢を徹底しましょう。

2.主観ではなく客観的な事実を根拠にする

曖昧な根拠による評価は評価者の主観と捉えられ、説得力がなくなってしまいます。結果、スタッフから不満が出やすい状況をつくることに。

日頃からスタッフの様子を観察し、「いつ、どこで、どんな行動をしたか」という具体的な事実をもとに、客観的に評価しているということが相手にわかるように説明します。

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3.性格・人格ではなく、行動に対する改善を求める

マイナス評価から浮かび上がった改善点を伝える際は、あくまでも“行動”にフォーカスし、本人の性格や人格を指摘することは避けます。性格や人格を否定することは、パワハラとして問題になる可能性もあります。冷静かつ客観的に、行動についてのみ話し合うようにしましょう。

4.成長を願って評価していることを伝える

マイナス評価の目的は、スタッフの成長支援のためだということを伝えます。

今回の結果に至った行動などに対し、改善することでどのように成長できるか、どのような姿に期待しているかを評価者が丁寧に示すことで、自分の立ち位置や取るべき行動がわかり、スタッフも受け入れやすくなるはずです。

5.日常的に信頼関係を築いておく

面談の場だけで信頼関係を築くことは困難なため、日頃からスタッフとのコミュニケーションを深めておくことも重要です。

信頼関係が築けていないと、スタッフはマイナス評価を受けたときに素直に耳を傾けてくれない可能性があります。自分の成長のためのアドバイスだと思ってもらえるよう、日々のコミュニケーションの中で土台を整えておきましょう。

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【まとめ】

シリーズの最終回となる今回は、その締めくくりにふさわしい「フィードバック面談の効果と方法」について紹介しました。

人事評価制度のフローの中でも、フィードバック面談は評価者とスタッフが直接向き合って話し合いができる貴重な場。いわば、人事評価制度の運用における最後の総仕上げといえます。

評価者にとっては労力がかかりますが、スタッフのモチベーションを上げ、成長を促し、信頼関係を築くためにも、本稿でふれたポイントを押さえながらスキルを磨いておくことが大切です。

     ◇    ◇    ◇

全7回でお届けしてきた「人事評価7つの基本のキ」シリーズですが、いかがでしたか。超高齢社会を背景にした医療需要の増加や働き方改革の推進によって、医療従事者の採用は今後、ますます厳しさを増していくといわれています。

公平な人事評価によって優秀な人材を確保したいと考えるクリニックにとっては、人事評価制度は強い味方となるはずです。ぜひこれまでの記事を参考にしながら人事評価制度を効果的に活用し、クリニックの成長へとお役立ていただけたら幸いです。

<執筆者プロフィール>
齋藤 由希(さいとう・ゆき)
ライター。DTP関連会社での雑誌制作・進行管理業務、アルバイト情報誌編集部での編集・執筆業務を経て、フリーランスのライター・エディターとして独立。著名人のインタビュー記事をはじめ、芸能・料理・健康などさまざまなジャンルの記事執筆や広告のコピーライティングなどに従事。ヨガ講師としても活動中。

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