フィードバック面談の効果と方法《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第7回(最終回)】

クリニック向け人事評価7つの基本のキ7回

患者が医療機関を選ぶ上で、ポイントの一つとなるのがそこで働くスタッフの存在。親切丁寧な対応や優しい笑顔、寄り添う姿勢は患者にとって大きな支えとなります。

そんなクリニックの顔ともいえるスタッフが高いモチベーションで働けるよう、近年、医療機関でも注目を集めているのが「人事評価制度」。高齢化が加速する日本では医療ニーズが高まる一方で、医療現場は慢性的な人手不足に陥っており、今後、ますます人材確保が難しい時代になることが予想されています。人事評価制度は上手に活用することで、スタッフの成長や定着率の向上が期待でき、生産性や業績アップといった経営改善にもつながります。すでに興味・関心を寄せているドクターも多いのではないでしょうか。

そこで、未来のクリニック経営に役立つ情報を独自に研究してお届けする「クリニック未来ラボ」編集部では、連載「人事評価7つの基本のキ」を通じて、人事評価制度の導入に際して押さえておきたいポイントを、全7回にわたって詳しく解説します。

最終回となる第7回は「クリニックにおけるフィードバック面談」を取り上げます。

スタッフの納得度を左右する「フィードバック面談」とは?

人事評価制度の基準を明確にし、公平な評価を心がけたにもかかわらず、スタッフの間から「結果に納得できない」「目標がわからずやる気がなくなった」など、不満の声が聞かれることがあります。そんなときはもしかしたら、評価者からスタッフへ人事評価の結果をフィードバックする方法に原因があるかもしれません。

ご存じのように、人事評価は評価・査定が確定したら、それで終わりではありません。必ず上司である評価者の口から被評価者であるスタッフへ人事考課結果とその根拠を伝え、今後の課題について前向きに話し合う「フィードバック面談」を行うことが必要です。

実施にあたってはしっかりとした事前準備が必須になるため、多少なりとも時間的・労力的に負担を感じるドクターもいるかもしれません。しかし、フィードバック面談はスタッフ一人ひとりの納得感を高めることができ、成長へとつながるため、クリニックの利益拡大に大きく寄与します。人事評価制度を成功に導くためには、決しておろそかにできない重要なプロセスと言っても過言ではないのです。

フィードバック面談によって期待できる3つの効果

人事評価制度における「フィードバック面談」とは、評価者から部下へ人事評価の結果とその根拠を伝え、今後の成長に向けての課題や来期の目標設定について話し合う場のことを指します。部下が評価内容に対して納得感を得る方法として、多くの企業が取り入れています。実施のタイミングは一般企業と同じく、クリニックでも評価期間に合わせて半年や1年に1度行われることが多いようです。

主にどのような効果があるのか、具体的に見ていきましょう。

(1)評価への納得度が高まり、スタッフのモチベーションが向上する

評価者から評価結果の根拠をきちんと言葉で説明されることで、スタッフの納得度が高まります。自分の頑張りが正当に評価されていることがわかれば、仕事へのやる気も向上します。双方の評価基準への認識のずれがなくなるため、スタッフから不満が出づらくなります。スタッフがモチベーション高くいられることで、仕事の生産性の向上にも期待ができます。

(2)パフォーマンスが上がり、スタッフの成長につながる

評価結果とその根拠について会話することで、スタッフ自身が認識していなかった強みや弱み、問題点、課題に気づくことができます。自分のどういった部分が評価されたのか、逆にどのような部分が低評価だったのか、客観的な視点で自分を見るきっかけをつかめば、「目標達成のためにどう取り組むべきか」「改善するには何が足りていないのか」など、自主的に解決策を考える力が育まれるようになり、成長につながります。

(3)コミュニケーションが円滑になり、信頼関係が築きやすくなる

スタッフの課題や問題の解決に向けて、評価者が一緒に向き合う時間を定期的につくることで密なコミュニケーションが取れるようになります。一方的に伝えるのではなく、対話をすることで互いの信頼関係が深まり、日常的にスタッフが相談や提案をしやすい環境も築けるでしょう。また、評価者もスタッフの適性をより深く知ることができれば、指導者として今後のマネジメントに役立ちます。

こうした効果が期待できるフィードバック面談ですが、評価者として肝に銘じておきたいのは、評価者が一方的に人事評価の結果や処遇のみを伝えたり、マイナスな結果に対して注意したりする場ではないということです。

あくまでも部下の成長のために、問題の解決策や今後の方向性について、双方が前向きに話し合う成長支援の場であることを忘れないようにしましょう。スタッフの成長こそが、クリニックの成長への近道なのです。

フィードバック面談の主な流れと評価者が気をつけたいポイント

ここからは一般的なフィードバック面談の流れと、押さえておきたいコツを紹介します。フィードバック面談の所要時間は、1人につき最低30分以上、1時間程度が理想です。場所は、会話の内容が漏れないよう、プライバシーを確保できる会議室(個室)を用意しておきましょう。

(1)事前準備を行う

事前にスタッフの評価結果の内容を確認し、きちんと根拠を説明できるようにしておくことはもちろん、想定される質問とそれに対する適切な回答やアドバイスをシミュレーションしておきましょう。そして、評価者からの質問では、指摘したい部分を直接的に言うのではなく、スタッフが自発的に気づきを得られるような言い回しを考えておくことがポイントです。マイナスな部分にふれる場合にはモチベーションが下がらないよう、言葉選びには細心の注意を払います。

(2)アイスブレイクを入れながら場をつくる

人事評価の話に入る前に、まずは場を温める会話からスタートしましょう。スタッフとしては「自分はどんな評価をされるのだろうか」「評価者に訴えたいことがある」など、緊張しやすいシチュエーションに身を置いています。季節や気候の話、好きなものや趣味の話など、あまりプライベートに立ち入りすぎない会話で緊張をほぐし、場を和ませてから本題に入ります。

(3)スタッフに自己評価をしてもらう

評価者からの評価を伝える前に、先にスタッフ本人に目標の達成度について自己評価をしてもらいます。ここで大切なのは、評価者が最後までしっかり傾聴すること。話を遮ったり、否定したり、かといって、書類に目を落としたまま黙って聞いていたりするのもNGです。適度に頷く・相づちを打つ・目を見る・メモを取るなどして、スタッフがリラックスして話しやすい雰囲気を心がけます。

(4)人事評価の結果を伝える

スタッフから自己評価を共有してもらった後は、評価者から評価結果とその理由を伝えましょう。スタッフが受け入れやすいよう、まずはポジティブな内容から切り出します。自己評価とギャップがある項目については、評価の根拠を具体的事実や数値をもとに丁寧に説明することで、評価への納得感を得やすくなるはずです。スタッフから疑問や不満が出た場合は、否定せず、互いが納得できるまで話し合います。

(5)課題を共有し、その解決について話し合う

双方が評価結果に納得できたら、スタッフが取り組むべき課題を明らかにし、来期に向けた解決策や目標設定について、一緒に考えます。ここで重要なのが、スタッフが自分自身で解決策を見いだせるようにコミュニケーションを取りながら誘導していくことです。そして、経営側の希望を一方的に押しつけず、本人の意思を尊重しながら目標を設定します。お説教にならないよう、前向きなアドバイスや励ましの言葉でモチベーションを上げる対話を心がけましょう。

(6)面談のまとめを行う

課題解決のための行動など今後の方向性が見えたら、評価者は最後に言い忘れたことはないか、質問がないかをスタッフに確認します。フィードバック面談は、評価結果に納得した状態で終わることが理想です。結果に対してスタッフがしっかり理解し、気持ち良く仕事に向き合えるよう、今後への期待とともに感謝の気持ちとサポートする姿勢を示し、信頼関係を築きましょう。

マイナス評価をスタッフにフィードバックする際の5つのコツ

ドクターの中には、スタッフにマイナス評価をフィードバックすることに対し、「気分を害するのではないか」「批判と受け取られてしまうのではないか」などと躊躇してしまう人もいるかもしれません。

しかし、マイナス評価から見えてくる課題はスタッフの成長のきっかけにもなり、クリニックの業務改善や経営力向上のためにはとても大切なことです。スタッフがマイナス評価に納得し、前向きに捉えて歩んでいけるよう、評価者が伝える際のポイントを解説します。

(1)否定的・高圧的な態度を取らない

フィードバック面談の目的は、人材の育成です。しかし、上司と部下という関係性から、つい評価者は指導のつもりで上からの物言いになりやすいため、注意が必要です。良かれと思ってはっぱをかけたつもりが、逆に相手を追い詰めたり、突き放したりする事態となっては、元も子もありません。言葉遣いにも配慮し、客観的な事実を伝えるように意識してください。

(2)主観ではなく客観的な事実を根拠にする

曖昧な根拠による評価は評価者の主観と捉えられ、説得力がなくなってしまいます。結果、スタッフから不満が出やすい状況をつくることに。日頃からスタッフの様子を観察し、いつ、どこで、どんなことがあったかという具体的な事実をもとに、客観的に評価しているということが相手にわかるように説明しましょう。

(3)性格・人格ではなく、行動に対する改善を求める

マイナス評価から浮かび上がった改善点を伝える際は、あくまでも行動にフォーカスし、本人の性格や人格を指摘することは避けます。性格や人格を否定することは、パワハラとして問題になる可能性もあります。冷静かつ客観的に、行動についてのみ話し合うようにしましょう。

(4)成長を願って評価していることを伝える

マイナス評価の目的は、スタッフ自身の成長をサポートするためだと常に意識しながら伝えることが大切です。今回の評価からどのように成長できるか、どのような姿に期待しているかなどを提示することで、スタッフのモチベーションは上がるでしょう。もし、評価者自身も過去に似たような経験がある場合はそのエピソードを話すなどし、具体的事例と共感性を示すことも有効です。

(5)日常的に信頼関係を築いておく

面談時だけでなく、日頃からスタッフとのコミュニケーションを深めておくことも重要です。信頼関係が築けていないと、スタッフはマイナス評価を受けたときに素直に耳を傾けてくれない可能性があります。就業中にねぎらいの言葉や感謝の気持ちを伝える、世間話などで距離を縮めるなど、日々のコミュニケーションから土台を整えておきましょう。

【まとめ】

シリーズの最終回となる今回は、その締めくくりにふさわしい「フィードバック面談の効果と方法」について紹介しました。

人事評価制度のフローの中でも、フィードバック面談は評価者とスタッフが直接向き合って話し合いができる貴重な場。いわば、人事評価制度の運用における最後の総仕上げといえます。評価者にとっては労力がかかりますが、スタッフのモチベーションを上げ、成長を促し、信頼関係を築くためにも、本稿でふれたポイントを押さえながらスキルを磨いておくことが大切です。

全7回でお届けしてきた「人事評価7つの基本のキ」シリーズですが、いかがでしたでしょうか。超高齢社会による医療需要の増加や働き方改革の推進によって、医療従事者の採用は今後、ますます厳しさを増していくといわれています。公平な人事評価によって優秀な人材を確保したいと考えるクリニックにとっては、人事評価制度は強い味方となるはずです。ぜひこれまでの記事を参考にしながら人事評価制度を効果的に活用し、クリニックの成長へとお役立ていただけたら幸いです。

<執筆者プロフィール>
齋藤 由希(さいとう・ゆき)
ライター。DTP関連会社での雑誌制作・進行管理業務、アルバイト情報誌編集部での編集・執筆業務を経て、フリーランスのライター・エディターとして独立。著名人のインタビュー記事をはじめ、芸能・料理・健康などさまざまなジャンルの記事執筆や広告のコピーライティングなどに従事。ヨガ講師としても活動中。

ドクターズ・ファイル クリニコ

関連記事

人事評価制度導入で得られるメリット《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第1回】
まず知っておきたい人事評価の導入フロー《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第2回】
知識があれば迷いなし!人事評価軸の考え方《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第3回】
人事評価者に必要なスキル《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第4回】
成功のカギを握る!人事評価時の5つの注意点《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第5回】
人事評価エラーの種類と対策《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第6回】