経営のヒント

2024.8.30

【院内新聞編】43年間、院内新聞を通じて情報発信!クリニックのファンの輪を広げる《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》

院内新聞

地域に支持されるクリニックには、医療サービス以外にも、プラスアルファの強みがあるもの。当コーナーでは、そんな強みを持つクリニックを訪ね、より良い魅力づくりのヒントを探ります。

今回のテーマは「院内新聞(ニュースレター)」。神奈川県横浜市にある『関口歯科医院』を訪ねました。

※本稿の初出は、「〈院内新聞編〉43年間、院内新聞を通じて情報発信!クリニックのファンの輪を広げる《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》」(「患者ニーズ研究所ONLINE」2022年4月15日配信)です。再掲載にあたり一部加筆・編集しています。肩書きやデータは本稿初出時のものです。

■教えてくれた先生

関口歯科医院
関口 武三郎 院長

1969年日本大学歯学部卒業。神奈川歯科大学などでの勤務を経て1975年に開業。クリニック運営には人間関係が重要と考え慶應義塾大学文学部でも学び、日本大学で医療人間科学分野の講師を務めた経験も。また中学・高校時代、新聞部で活躍した経験も院内新聞の制作に役立てている。

親から子ども、孫へ、院内新聞がつなぐ家族ぐるみの付き合い

クリニックからの情報発信や、患者とのコミュニケーションツールとして注目される院内新聞。大規模病院などではよく見かけますが、クリニックでは広報を担当するスタッフの確保が難しく、負担が大きいことから継続するのは簡単ではありません。そんな院内新聞を、40年以上にわたり毎月作り続けているのが、横浜市にある『関口歯科医院』の関口武三郎院長(2022年4月時点)。

「開業から3年後、虫歯のない子どもたちを育てるために『はははの会』という患者さんの会員制組織をつくり、その機関紙として『はははの新聞』を創刊したのです」

院内新聞で情報を発信し共有するとともに、患者参加のバーベキュー大会や地引き網などイベントも開催して、クリニックのファンを増やしてきました。当時の子どもが大人となり、やがてその子どもや孫も通院するようになり、家族ぐるみの付き合いが続いているそうです。

院内新聞は毎月、その月の担当スタッフを中心に、全員で記事作りにあたります。院長は連載コラム「母親学」の執筆と全体のテキストの流し込みを担当し、時にはイラストを描くことも。発行日には、全員で発送作業を行います。当初、手書きのガリ版刷りで始まった新聞作りは、和文タイプ、ワープロを経て、現在はパソコンで作成。ホームページでも記事が読めるようになりました。200号ごとに記念誌もまとめています。

目標は600号。続けるコツはみんなで作り、頑張りすぎないこと

「患者さんの反響はとても良く、院内の活性化にも役立ち、私自身もやりがいを感じています。作るのが好きで、院内新聞のことを考えない日はありませんね」と笑う関口院長。スタッフ同士も新聞作りに取り組む中で絆が深まり、仕事の上でもチームワークが良いそうです。そんな同院の院内新聞は、他院からも注目されています。

「作り始めたけれど継続が難しい、との相談が多いですね。続けるコツは、全員で取り組むこと、頑張りすぎずに楽しむことだと助言しています」

内容面では、健康情報は押しつけにならないように注意が必要とのこと。院長やスタッフの人柄がわかるような話題が最も反響があるのだとか。

ちなみに、同院ではリコールはがきに、患者自身が次の受診日や宛先を記入。自ら書くことで意識づけができ、リコール率は90%以上だといいます。また待合室の「ご意見箱」では「喜びの声を聞かせてください」と呼びかけているため、クレームより、感謝の言葉や前向きな提案が寄せられます。それを院内新聞で紹介することで、患者との距離がいっそう縮まるそうです。こうした取り組みの一つ一つに、同院ならではの工夫と温かさが感じられます。

「目標は600号まで続けること。コロナ渦でテーマは偏りがちですが、受診控えを防ぐためにも、患者さんの安心感や親しみにつながる院内新聞の果たす役割は大きいと思います」

『関口歯科医院』がこだわっている「院内新聞」6つのポイント

患者だけでなく他院からも注目を集める、同院の院内新聞。ここからは、制作する上で具体的に「こだわっているポイント」を6つピックアップ。まずは「はははの新聞」の表面から2つのポイントを紹介します。

(1)機関紙として患者に信頼を届ける

子どもの虫歯予防と患者とのコミュニケーションを深めるためにつくった会員組織「はははの会」。院内新聞は機関紙という位置づけで、会員家庭に毎月送付。コロナ禍で受付からは撤去していますが、院内でも希望者に配布しています。2021年1月時点で通巻510号(画像①)。

(2)手作り感で温もりを大切に

扱いやすいA4サイズ1枚で構成し、大きい文字やイラストで読みやすく工夫するなど、「温もりの医療をどう伝えるか」という同院の理念に基づき手作り感を重視。書籍や映画の紹介など「息抜き情報」も掲載して、手に取りやすくしています(画像②)。

続いて、「はははの新聞」の裏面を見ていきましょう。

(3)スタッフ全員参加で絆を深める

編集会議や送付作業にはスタッフ全員が参加し、患者に役立つ情報を発信。スタッフ採用時に院内新聞作成への興味を確認するそうです。退職したスタッフにも毎月送付してつながりを持ち続け、診療の手が足りないときなどにピンチヒッターを依頼することも(画像③)。

(4)コロナ禍も安心を伝え、受診促進

紙面では毎回、歯の予防・治療に関する知識や健康に役立つ情報を提供。コロナ禍では、同院の徹底した感染対策や、コロナ禍に役立つ健康情報などを紹介することで、患者に安心感を提供し、受診控え対策につながりました(画像④)。

(5)継続は力なりで500号達成!

開業間もない1978年の創刊から一回も休むことなく、毎月続けて発行。院内ニュースやスタッフ紹介、設備機器の導入なども細かく記載しているので、記念誌を見ると、新聞が同院の歴史を語る貴重な記録にもなっていることがわかります。なお記念誌は、希望者にプレゼントしています。

(6)患者とスタッフの交流の場に

スタッフの多くは地元出身。プロフィールや、結婚・出産などのニュースを掲載することで、患者にとって、同院がより身近な存在になり親しみやすさが増します。待合室の「ご意見箱」に寄せられた患者の声も紹介して、交流の場にも。

     ◇    ◇    ◇

以上、院内新聞に関して「こだわっている6つのポイント」を紹介しました。患者の満足度を高め、ファンを増やすだけでなく、仕事上のチームワークの向上にも一役買ってくれる院内新聞。関口院長いわく、継続するためのコツは自分やスタッフが頑張りすぎずに楽しむこと。ぜひ自院にあったスタイルを見つけ出してみてください。(クリニック未来ラボ編集部)

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