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2024.9.20

【水回り編】女性目線のアイデアが光る、患者とスタッフ想いの安らぎ空間《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》

クリニックの水回り

地域に支持されるクリニックには、医療サービス以外にもプラスアルファの強みがあるもの。当コーナーではそんな強みを持つクリニックを取り上げ、魅力づくりのヒントを探ります。

今回のテーマは「水回り(トイレ・洗面所)」。東京都目黒区にある『都立大学駅前すみクリニック皮膚科・アレルギー科』を訪ねました。

※本稿の初出は、「〈水回り編〉女性目線のアイデアが光る、患者とスタッフ想いの安らぎ空間《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》」(「患者ニーズ研究所ONLINE」2022年6月24日配信)です。再掲載にあたり一部加筆・編集しています。肩書きやデータは本稿初出時のものです。

■教えてくれた先生

都立大学駅前すみクリニック皮膚科・アレルギー科
鷲見 真澄 副院長

群馬大学医学部卒業後、東京医科歯科大学や順天堂大学で研鑽を積む。2010年、夫の鷲見浩史院長とともに開院。院内の内装や設備について設計段階から院長と相談を重ね、女性目線も生かして完成させた。「幼い頃からなぜかトイレが気になるんです(笑)」と話すきれい好き。

患者が意外と見ているトイレや洗面所。工夫一つで居心地の良い空間に

クリニックに不可欠なトイレや洗面所。TOTOによると、水回り設備のきれいさがクリニック選びに影響すると答えた人は6割以上のよう(TOTO株式会社『2019年 クリニックの水回りに関するアンケート調査結果』より)。このことからも、水回りからクリニック全体の衛生状態や意識の高さ、患者への気遣いを感じ取る人は少なくないといえるでしょう。

このような清潔志向を早くから先取りし、水回り設備を充実させてきたのが東京都目黒区の『都立大学駅前すみクリニック皮膚科・アレルギー科』です。鷲見真澄副院長の発案で、開院時に女性専用トイレや多目的トイレ、パウダールームを設置したといいます。

皮膚に悩む方、特に女性はデリケートで受診時は緊張していることが多いので、清潔・快適に加え、できるだけ安らげる空間にしたいと考えました」

殺風景になりがちなトイレを和める雰囲気にするには、花や絵を飾るのが一般的ですが、鷲見副院長が選択したのは、一番目立つ壁面をエレガントな花柄にすることでした。

「生花はアレルギーの方には向きませんし、絵や装飾品はほこりがたまるなど手入れが意外と大変。その点、壁紙ならば手軽に雰囲気づくりができます」

ちなみに同院では、手術室にもシックな花柄の壁紙を取り入れています。目に入りやすい広い面を印象的にするというアイデアは、壁面だけでなく天井や床面にも応用できそうです。

きれいさの維持に全員で尽力。スタッフ専用トイレの配慮も

同院で見逃せないのが、スタッフ専用のトイレ。鷲見副院長は、勤務医時代にトイレが職場環境の質に大きく関わると感じたため、スタッフルームの隣に専用トイレを設け、スタッフが気兼ねなく利用できるようにしました。

また、患者用のトイレ内に荷物を掛けるフックや置き台がないクリニックが意外と多いことも気になっていたといいます。

「女性や子ども連れなど荷物を持ってトイレに入る患者さんは多いので、手洗いの水がかからないところに置ける工夫は必要ですね」

女性や男性、高齢者、親子、そしてスタッフ。クリニックに集まる多様な人々の心情や状況を考え、何が求められるのか、想像力を働かせ、こまやかに配慮していることが感じられます。

「きれいにしておくと、多くの方がきれいに使ってくれます。トイレを褒められることはありませんが、快く通院してくれる患者さんが多いことにつながっていると感じます」

常にきれいな状態を保てるのは、こまめに清掃や消毒を行うスタッフの努力によるところが大きいです。まれに飲み物の飲み残しなどがトイレ内に捨てられていることもあるそうですが、注意喚起の張り紙を貼るよりはすぐに片づけ、快適な環境を維持することに注力しているとのこと。

トイレや洗面所は清潔で快適であることが当たり前。その上で、ドクターのセンスやクリニックの個性が感じられる魅力や工夫をプラスすることが、クリニックの水回り設備に求められることなのかもしれません。

『都立大学駅前すみクリニック皮膚科・アレルギー科』がこだわっている「水回り」6つのポイント

ここからは、同院が水回りに関して「こだわっている6つのポイント」をピックアップ。具体的にどのような取り組みをしているのか、見ていきましょう。

(1)快適に安心して使えるよう、女性専用のトイレを設置

待合室と診察室の間に、女性専用トイレと誰でも使える多目的トイレを設置。「男性が使った後、便座が上がったままのトイレを使うことに抵抗のある女性は多いはず」と2010 年の開院当初から女性専用トイレを設けることにこだわったそうです。

(2)高齢者でも使いやすい、バリアフリーの多目的トイレ

広い多目的トイレは男女の別なく、また高齢者や体の不自由な人でも使いやすいように配慮して、便座に座ったり立ったりする動作を助ける手すりを設置。ドアも開け閉めしやすいスライド式で、車いすのまま便座近くへ移動することができます。

(3)赤ちゃん連れのお父さんも、気兼ねなくおむつ替えができる

多目的トイレには、小さい子どもが座れるベビーチェアと、おむつ替えのできるベビーシートを設置。乳幼児の患者も多いため、お母さんはもちろん、お父さんも周囲に気兼ねなくおむつ替えができるように配慮されています。

(4)エレガントな花模様の壁面で、手間をかけずに優雅な雰囲気に

安らげる空間にするため、ドアを開けたときにぱっと目に入る壁面はエレガントな花模様に。シックな色合いなので華美になりすぎず、センスの良さが伝わってきます。壁紙なのでほこりもたまらず、手軽にきれいさが維持できるのもポイント。

(5)他の患者に顔を合わせず化粧直しができる。動線に配慮したパウダールーム

パウダールームは、手術室の手前に設置。処置が終わった患者が、待合室を通ることなく、ゆっくり化粧直しを行えるように動線にも配慮されています。カーテンで閉めきれるので、授乳室や治療後のリカバリー室としても利用しているそうです。

(6)こまめな清掃と感染対策で臭いも防ぎ、快適な空間を維持

毎朝スタッフが清掃するとともに、定期的に感染対策として次亜塩素酸水で手すりやドアノブも含めてこまめに消毒。サニタリーボックスやごみ箱も丁寧にチェックします。清掃を徹底しているので、トイレの臭いも気にならないとのことです。

     ◇    ◇    ◇

以上、水回りに関して「こだわっている6つのポイント」を紹介しました。トイレや洗面所は、どのクリニックにも備えつけられている基本設備。だからこそ、患者は意外と、隅々まで見ています。

『都立大学駅前すみクリニック皮膚科・アレルギー科』のように、清潔さと同時に、患者だけでなくともに働くスタッフにまで寄り添った工夫が垣間見られると、気持ちの良いものです。そこに、クリニックの想いやセンスが光るともいえるでしょう。ぜひ「患者がほっと一息つける空間」づくりの参考にしてみてください。(クリニック未来ラボ編集部)

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