経営のヒント

2024.10.4

【院内の飾りつけ編】コミュニケーションにも役立つ、テーマパークのような楽しい演出《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》

クリニックの院内の飾りつけ

地域に支持されるクリニックには、医療サービス以外にも患者の満足度を高めているプラスアルファの強みがあるもの。当コーナーではさまざまな取り組み・工夫で患者のニーズに応えているクリニックを取り上げ、魅力づくりのヒントを探ります。

今回のテーマは「院内の飾りつけ」。神奈川県川崎市にある『イデア矯正歯科』を訪ねました。

※本稿の初出は、「〈院内の飾りつけ編〉コミュニケーションにも役立つ、テーマパークのような楽しい演出《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》」(「患者ニーズ研究所ONLINE」2022年12月2日配信)です。再掲載にあたり一部加筆・編集しています。肩書きやデータは本稿初出時のものです。

■教えてくれた先生

イデア矯正歯科
布留川 創 院長

1995年東京医科歯科大学卒業。同大学顎顔面矯正学講座入局。1998年同講座専攻生課程修了。武蔵高等学校中学校出身ということもあり、「ムサシ」つながりで2008年、川崎市の武蔵新城駅近くに開業。「飾りつけは自分も楽しみながら、趣味と実益を兼ねているかな」と話し、ユニークな演出をブログでも発信。

院内全体でテーマを統一。書籍コーナーも飾りつけの一部に

何らかの痛みや気がかりを抱えて訪れた患者を、和ませたり楽しませたりするのが「院内の飾りつけ」です。インテリアやディスプレーから、ドクターの人柄や個性がわかり、親近感や信頼感が増すこともあります。

そこで「子どもだけでなく、大人も楽しく通い続けられる矯正歯科」をめざし、待合室だけでなく、受付、廊下、洗面所、診療室まで工夫を凝らすのが、神奈川県川崎市にある『イデア矯正歯科』の布留川創院長です。隅々まで飾りつけられた院内は、季節や干支などテーマごとの統一感があり、テーマパークのようなわくわく感が広がります。院長が率先して、月に1〜2度の頻度でスタッフと一緒に飾りつけています。

「開院当初は物を置かず、すっきりとした雰囲気だったのですが、患者さんの緊張をほぐし、会話のきっかけになるかな、と小物を置き始めて、今に至っています」

子どもの患者も多く、しかも治療期間が長い矯正歯科では、患者や保護者とのコミュニケーションに院内の飾りつけが役立つことも多いのだとか。

また矯正歯科には「教育」の面も大切だと考え、待合室の書籍コーナーに注力。書籍も飾りつけの一部として、子どもや親に読んでほしい本、珍しい図鑑や科学雑誌をストックし、季節やテーマに合わせて入れ替えています。反響も良く、自由研究のために貸してほしいという小中学生もいるそうです。

患者を大切に思う気持ちに遊び心や個性をプラスして

2021年9月現在、コロナ禍で、飾りつけについても感染対策が気になりますが、同院ではスタンダードプリコーション(標準予防策)にのっとって、必要な消毒や対策を実践。毎日の診療準備時に、小物類は動かして拭き掃除を行っています。また、待合室に除菌シートを置き、玩具などを患者や保護者が気軽に消毒できるようにしています。

飾りつけは基本的に消耗品と考え、高価すぎるものは選ばないとのこと。かといってチープな雰囲気にならないように、日頃から書店やインテリアショップなどで役立ちそうな物を探すそうです。

当院は、お子さんが多いのでアットホームな演出が受け入れられていますが、クリニックごとに診療内容や患者さんの年齢層、地域性などを考慮すると良いと思います

そして、長く続けるためには「ドクターやスタッフの負担にならない程度にすること、自分も楽しむこと」が大切だそう。毎月全部の飾りを入れ替える必要はなく、掃除のついでに配置を変えるだけでも印象が変わります。時には何も飾らない時期を設けると、かえって次のイベントが目立つこともあると話します。

根底にあるのは、患者を大切にしたい、安心して治療を受けてほしいという想い。そこにドクターの遊び心やエスプリを少しプラスすると、患者を楽しませ、和ませる「魅力的な飾りつけ」となるのではないでしょうか。

『イデア矯正歯科』がこだわっている「院内の飾りつけ」5つのポイント

ここからは、同院が院内の飾りつけに関して「こだわっている5つのポイント」をピックアップ。具体的にどのような取り組みをしているのか、見ていきましょう。

(1)全体のバランスを見ながら、テーマを設けて一気に展開

本棚の書籍や雑誌も演出の一つとして、季節やイベントなどテーマに合わせて並べ替えているとのこと。飾りつけコーナーや、診療ユニットのモニターの画像も同テーマで展開するなど院内全体で統一感を出し、盛り上げているそう。取材時(2021年9月)は東京オリンピック・パラリンピックが控えていたので、「オリパラ」一色に。

(2)ジグソーパズルを活用して、アート感にぬくもりをプラス

絵画やポスターにはない、手作り感や親しみやすさが演出できるジグソーパズルを活用。存在感がある図柄にし、掲示位置を変えるだけで雰囲気が一新されるものを選んでいるとのこと。取材時は、2021年の干支である牛の絵柄をセレクト。

(3)毎日シールを貼るカレンダー。遊び心のあるものをチョイス

毎月変わり、目につくカレンダーも飾りつけの一つと考え、患者が学びや楽しさを実感できるものを選択。待合室には毎日付箋シールを貼る「記念日カレンダー」を掲示し、「今日は何の日かな?」と患者との会話のきっかけにすることも。

(4)診療中、患者の目に入る位置に心を和ませるグッズを置く

診察室では安全を考えて、患者の頭上には何も置かないようにしているそうですが、パーティション上など視界に入る位置にさりげなくグッズを配置しています。遊び心で診療中に向きを変えることもあり、「間違い探し」のように楽しむ患者も多いとのこと。

(5)干支や季節などに分別して、収納しやすいものを選ぶ工夫も

飾り物は、干支や季節、流行などテーマごとに分類して収納し、取り出す際にもすぐにわかるようにしているそう。立体カードやモビール、小さいフィギュアなど、かさばらず、収納や扱いの容易なものを選ぶのもポイント。

    ◇    ◇    ◇

以上、院内の飾りつけに関して「こだわっている5つのポイント」を紹介しました。

患者が安心感を持って受診できるように、院内の雰囲気づくりに力を入れているドクターは多いことでしょう。『イデア矯正歯科』が実践している飾りつけは、手軽に実行できて来院する患者の年齢層やタイプにも合わせやすいので、雰囲気づくりの方法としてとても効果的。今回紹介した内容をヒントに、貴院でも取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、記事でも言及したように、ドクターやスタッフも楽しみながら取り組めることが長続きの秘訣。そのためにも「頑張りすぎない」という点も重要なポイントです。ぜひ貴院がめざす「患者の居心地の良い空間」づくりに生かしてください。(クリニック未来ラボ編集部)

関連記事

【バリアフリー編】患者が障壁なく通院できる歯科医院《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》
【院内新聞編】43年間、院内新聞を通じて情報発信!クリニックのファンの輪を広げる《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》
【受付編】「受付も治療の一環」をモットーに美しさや清潔感、安全性を追求《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》
【水回り編】女性目線のアイデアが光る、患者とスタッフ想いの安らぎ空間《こんなところにも注力!クリニックの強みZOOM UP》