経営のヒント

2026.1.30

開業医向けネット口コミ調査|2,073人の声が示す経営への影響と情報発信のポイント

開業医向けネット口コミ調査|2,073人の声が示す経営への影響と情報発信のポイント

患者はさまざまな情報をもとに、受診する医療機関を選んでいます。その判断材料の一つが「インターネットの口コミ」です。なぜ患者は口コミを重視するのでしょうか。

一方で、開業医の中には、ネット上の評価や口コミ対応に悩むケースも少なくありません。しかし、多忙な中で削除申請を行うのは難しく、「表現の自由」の問題などもあり、対応は容易ではありません。

本記事では、医療情報ポータルサイト「ドクターズ・ファイル」 が2,073人の医師・歯科医師を対象に行ったアンケート結果(※)をもとに、誹謗中傷を含む口コミの現状と、開業医が取り組むべき情報発信の在り方を探ります。

※出典:ドクターズ・ファイル「インターネット上の口コミに関する調査」。対象:日本国内の開業医2,073人(医師1,237人・歯科医師836人)。調査時期:2024年5月。なお本調査は、「Googleマップ」と「その他のプラットフォーム」に投稿された口コミを対象に、それぞれ集計し、合算した結果を含む

医療機関を探す際に口コミ活用は「当たり前」時代

まずは、医療機関の口コミをめぐる最近の動きを見てみましょう。

飲食店選びでは当たり前となっている「インターネットの口コミ」利用。患者の医療機関探しでもそれは例外ではなく、口コミを確認してから受診先を決めたり、いつも受診している医療機関の評判を調べたりする人は少なくありません。

こうした背景の中、2024年4月には、Googleマップの口コミをめぐり、悪評の放置による営業権侵害を理由に、全国の医師がGoogle社を集団提訴しました。なお、この訴訟は2026年1月現在も審理中で、判決はまだ出ていません。

全国ニュースでも大きく取り上げられ、口コミの影響力が患者だけでなく医療経営者にとっても無視できない存在になっていることが浮き彫りになっています。

なぜ口コミ?求められているのは「第三者のクリーンな意見」

なぜ、患者は「口コミ」を重要視するのでしょうか。背景には、客観的な情報を求める心理があります。

医療機関に限らず、サービスや商品を選ぶときも、人は「失敗したくない」という思いを抱きます。インターネットを中心に情報が氾濫する中、慎重に選ぶために、患者は正確性を重視し、当事者ではない第三者の意見を求める傾向にあります。

口コミは、その「第三者からの情報」として活用されているのです。つまり、患者は「口コミだから利用している」のではなく、信頼できる第三者の声を探した結果、口コミにたどり着いているといえます。

あわせて読みたい

口コミは批判的意見が目立つが、「正確性」には疑問

人は「良いもの」をわざわざ褒めるより、批判的な意見を発信したくなる傾向があります。そのため、インターネット上での匿名の口コミは、必ずしも好意的なものばかりではありません。むしろ、辛辣なコメントや厳しい評価が少なくありません。

しかも、あくまで口コミは「特定の第三者による主観的な意見」であり、必ずしも「正確な情報」とは限りません。身に覚えのない内容や、一部を切り取った情報、誇張した表現が含まれることもあります。中には、誹謗中傷と捉えられる口コミも後を絶ちません。

あわせて読みたい

8割以上の開業医が誹謗中傷を受けた経験あり

ここからは、2,073人の医師・歯科医師の声をもとに、口コミが開業医に与える影響や、その悩みを見ていきます。

調査では、8割以上のドクターがインターネット上で誹謗中傷を受けたことが「ある」と回答しました。「未確認・わからない」を除くと、「ない」と回答した人は1割以下という結果です。

先述のとおり、口コミは患者にとって第三者目線での情報を得られる貴重な機会です。しかし、誹謗中傷であっても重要な情報・正しい情報として捉えられてしまう可能性があります。

誹謗中傷とは、根拠なく相手を悪く言い、名誉を傷つけたり、迷惑をかけたりすることを指します。一概に「悪い口コミ=誹謗中傷」とはいえませんが、医療機関に寄せられた低評価の口コミには、暴力的な表現や名指し批判、根拠の薄い主張、明らかな誇張など、誹謗中傷と見られる内容が多く含まれています。

あわせて読みたい

相談するのも悩ましい口コミ対応のリアル

次に、誹謗中傷の口コミに直面した医師たちは、どんな行動を取ったのでしょうか。調査結果をまとめました。

書き込まれた誹謗中傷の口コミに対して、どのような対応をしましたか?

今回の調査では、誹謗中傷の口コミに対して「運営会社に自分で通報・削除要請を行った」が約4割と最多の回答でした。ただし、通報・削除申請をしても内容や対象プラットフォームによっては受理されることが難しいケースも多いようです。

次いで多かったのは、「何も対応していない」(33.5%)という回答でした。

第三者による口コミは管理が難しい

アンケートで明らかになった相談先や口コミ管理の課題について、さらに詳しく掘り下げていきます。

「自分で通報・削除申請」「対応していない」以外の、スタッフ・家族・医師仲間・専門業者・弁護士・警察への相談と回答した割合は、いずれも20%未満にとどまり、口コミ対応の難しさがうかがえます。

口コミは第三者による発信であることに加え、誹謗中傷と批判の線引きが難しいこともあり、ドクター側が管理しづらいのが現状です。

また、「そのほか」の回答の中では、「口コミに対して自分で返信をした」という声が多く寄せられました。クリニックが返信することで、「相手も人間なんだ」と伝わり、書き込みをした人が冷静になったり、読む人にとって判断しやすい状況になったりする効果があると考えられます。

あわせて読みたい

約6割が影響を実感、対応には時間とコスト負担

では、インターネット上での口コミにより、クリニックにはどのような影響が生じるのでしょうか。以下の調査結果を見てみてください。

調査によると、「特に影響はなかった」以外、6割以上のドクターが「何かしらの影響を受けた」と回答しています。特に多かったのは「対応のために自分の時間を割く必要があった」(38.1%)でした。

前述のとおり、口コミ対応には通報や削除申請、返信などが必要で、時間と精神的負担が大きく、医療現場にとって大きな悩みの種といえます。また、対応時間の負担はドクターだけでなく、約2割のクリニックでコメディカルや事務スタッフにも及んでいます。

「患者が減った」「既存患者から不安の声が上がった」「採用活動に支障が出た」という回答は、それぞれ2割強~1割(24.7%~10.4%)あり、実際に患者や求職者への影響があることがわかります。

ただし、全体と比べると少数であり、口コミをすべて信じているわけではない層も多いと考えられます。

あわせて読みたい

口コミに悩む医師の本音と現場の精神的負担

ここからは、口コミがクリニックに与えた影響をさらに掘り下げます。調査に寄せられた医師たちの率直な声を、一部抜粋して紹介します。

医師たちのリアルな声

1.精神的負担

口コミによる誹謗中傷は、ストレスの増加だけでなく、ドクターやスタッフの心に深い傷を残します。仕事への自信を失い、日常生活にも影響するケースが少なくありません。

  • 精神的苦痛を受けた。怒り・不安で数日不眠に。
  • メンタル的につらかった。
  • 事実無根な内容を書き込まれ、絶望した。この仕事を続けられないとすら感じた。
  • 個別のスタッフに攻撃的な内容が書き込まれ、スタッフの精神的ダメージが強かった。
  • スタッフがいわれのない批判を受け、心を悩ませた。
  • 一番影響があるのは、スタッフみんなのモチベーションが下がること。

2.経営上の負担

口コミは患者の来院行動に直結します。強い誹謗中傷があると、新規患者の減少や売上への影響が顕著に現れることも。

  • 新規患者の減少が顕著に起きた。回復に半年かかった。
  • 前年度と比較して1割ほど患者が減った。
  • 診察中に口コミの真偽を問われることがあった。

3.採用上の負担

採用活動にも口コミの影響は及びます。求職者が応募をためらったり、面接で質問されたりするケースも報告されています。

  • 採用面接で口コミの内容を指摘された。
  • 求職者から「口コミを見て応募を躊躇していた」と言われた。

やはり、こうした声からも、口コミの影響は患者数や売上の減少だけでなく、採用やスタッフのモチベーションといったクリニック全体に広がっていることがわかります。誠実に医療を提供しているにもかかわらず、悪意のある書き込みにより深く傷つき、孤独な思いを抱える医師の姿が浮かび上がります。

あわせて読みたい

約8割が口コミ対策なし、その理由とは?

最後に、口コミに対して悩む医療機関が多い中、実際にどれくらいの医療機関が口コミ対策を行っているのかを聞きました。

ネットの口コミ対策で取り組んでいることはあるか

ここまで紹介してきたとおり、口コミは患者にとって大きな情報源であり、その影響力は計り知れません。

しかし、約8割のドクターが誹謗中傷を受けたことがあるにもかかわらず、「口コミ対策」を実施している医療機関はわずか2割弱という結果に。この数のミスマッチから、「何を対策したらいいか不明確」であるため、対策を打てないという現状が推測できます。

それでは、口コミ対策を実施していると答えた医療機関は、どのような対策をしているのでしょうか。以下は、今回の調査で寄せられた医師たちの声の一部です。

誠実な診療やスタッフ教育など、基本的な取り組みから、専門業者によるチェックまで幅広い工夫が見られます。こうした取り組みは、口コミリスクを減らすためのヒントになるかもしれません。

口コミ対策の具体例

  • 診察や説明を丁寧にし、悪い口コミを書かれないようにしている。
  • 誠実な診察を心がける。スタッフにもそのように教育している。
  • 患者さんが直接声を届けられる場を作った。
  • ポジティブな口コミの促進をしている。
  • 良い口コミを書いてもらえるように促進。嫌がらせのような低評価が増えて極端に評価が下がらないようにしている。
  • 悪質な口コミがないか専門業者にチェックしてもらっている。
あわせて読みたい

【まとめ】求められているのは正確性のある客観的な情報

今回の調査から、口コミの影響力の強さが改めて明らかになりました。

しかし、医療はサービス業とは異なり、治療には苦痛が伴うことも多く、患者の不満が生まれやすい現実があります。さらに、口コミは個人の体験や感情に基づくため、必ずしも正確性や客観性を満たしていません。

患者が本当に求めているのは「正確で客観的な情報」です。特に慎重に判断したい患者にとって、第三者の視点は欠かせません。だからこそ、これからのクリニック情報発信では「客観的視点を持つ正確な情報」が一層重視されるでしょう。

記事内で紹介した、他院が実際に取り組んでいる口コミ対策の事例とともに、ドクターズ・ファイルのような医療情報ポータルサイトや専門メディアの活用も有効です。

正確な情報発信こそが、患者の安心とクリニックの信頼を築く鍵となります。(クリニック未来ラボ編集部)

<執筆者プロフィール>
クリニック未来ラボ編集部
クリニック未来ラボは、開業医、開業をめざす勤務医・医学生に向けたクリニック経営支援メディアです。独自の視線で調査・研究し、より良い医院経営に役立つ情報として発信。「開業医白書」をはじめ、診療報酬改定や医師の働き方改革、医療従事者の転職動向など、医院経営に関する調査レポートも公開しています。

関連記事

【開業医調査】クリニックの医療DX事情│予約システム、ホームページ導入率は?
【開業医調査】医師の働き方改革│クリニックへの影響は?
【開業医調査】2024年度診療報酬改定による収益の影響とその対策│収入は増えた?減った?