人事評価エラーの種類と対策《クリニック向け!人事評価7つの基本のキ》【第6回】

クリニック向け人事評価7つの基本のキ6回

患者が医療機関を選ぶ上で、ポイントの一つとなるのがそこで働くスタッフの存在。親切丁寧な対応や優しい笑顔、寄り添う姿勢は患者にとって大きな支えとなります。

そんなクリニックの顔ともいえるスタッフが高いモチベーションで働けるよう、近年、医療機関でも注目を集めているのが「人事評価制度」。高齢化が加速する日本では医療ニーズが高まる一方で、医療現場は慢性的な人手不足に陥っており、今後、ますます人材確保が難しい時代になることが予想されています。人事評価制度は上手に活用することで、スタッフの成長や定着率の向上が期待でき、生産性や業績アップといった経営改善にもつながります。すでに興味・関心を寄せているドクターも多いのではないでしょうか。

そこで、未来のクリニック経営に役立つ情報を独自に研究してお届けする「クリニック未来ラボ」編集部では、連載「人事評価7つの基本のキ」を通じて、人事評価制度の導入に際して押さえておきたいポイントを、全7回にわたって詳しく解説します。

第6回は「人事評価エラー」を取り上げます。

評価者は要注意! 偏った評価をしてしまう「人事評価エラー」とは?

スタッフに対し、「一生懸命働いているから」「働きぶりをすべて見ることはできないから」と甘めの評価をしてしまったり、自分自身と比べて「なぜこんなこともできないのか?」と必要以上に厳しい評価をしてしまったり……。人事評価を行う際、評価者の先入観や個人的感情から無意識のうちに不公平な評価に陥ってしまうことを、「人事評価エラー」と呼びます。

人事評価は人間が行うため、評価者がどんなに注意を払って公平な評価を心がけていても、主観や偏見、感情の影響をまったく受けずに行うことは難しいものです。しかも、「自分は意識しているから大丈夫」と思っている人ほど、判断にバイアスがかかる傾向にあります。しかし、偏った評価は、スタッフに不満や不信感を抱かせてしまいます。

スタッフのモチベーションやパフォーマンスを向上させるためには、公平で客観性のある評価が何より重要です。そこで、評価者には、前もって人事評価エラーについての知識を身につけた上で、少しでも減らすための対策を講じることが求められます。

無意識のうちにやっているかも!? 注意すべき人事評価エラー11個

人事評価エラーは自分では気づきづらく、意識しないところで起こりやすいことが特徴です。自分には起こらないと思わず、「誰の身にも起こり得るもの」という認識のもと、正しい知識を身につけて、できる限り回避するよう努めましょう。よくある主な11個の人事評価エラーについて、具体例を交えて解説します。

■代表的な人事評価エラーの種類と例

1.ハロー効果

被評価者の目立ちやすい特徴やある評価項目の結果に引っ張られ、それ以外の評価に影響が及び、不適切な評価をしてしまうこと。

例)

  • 5段階評価で、ある項目の評価が5だったため、他の項目も同様に5をつけた。
  • 身だしなみが整っているので、業務もきちんと遂行できていると見た目で判断した。

2.中心化傾向

高評価や低評価を避けようと、無難な中レベルに評価が集中してしまうこと。

例)

  • 「極端な評価をすると反感を買うかもしれない」「明確に評価することに不安がある」などといった心理が働き、5段階評価で、両極端を避けた中央値の3に偏った評価が多くなった。

3.寛大化傾向

評価が全体的に甘くなってしまうこと。

例)

  • 「部下の行動を把握しておらず、評価に自信がない」「部下に嫌われたくない」などの感情が影響し、実際よりも高い評価をした。

4.厳格化傾向

寛大化傾向の逆。必要以上に、評価が厳しくなってしまうこと。

例)

  • 優秀な評価者が「この業務ならもっとできるはず」と自分自身と比較し、実際よりも厳しい評価をした。
  • 「厳しくすることで部下は育つ」とより高い成果を期待するあまり、低い評価をした。

5.逆算化傾向

評価者が自身の望む最終的な総合評価をあらかじめ設定してから、それに帳尻を合わせるように評価をしてしまうこと。

例)

  • 昇格させたい部下がいる、人件費を削減したいなどといった理由から、先に昇給・賞与などの処遇を決定。その結果から逆算して評価項目を調整したため、実態と異なる評価になった。

6.期末誤差

評価期間の終盤、評価時期の近い時期の仕事ぶりだけに注目し、それ以前のことは考慮せずに全体を評価してしまうこと。

例)

  • 半年ごとに人事評価を実施しているクリニックで、被評価者が5ヵ月前に仕事で大きな成果を挙げていたが、期末に起きた業務上の失敗が強く印象に残っていたため、そこだけを見て低評価をした。

7.対比誤差

評価者が無意識に自分自身の能力を基準にして、過大または過小に評価してしまうこと。

例)

  • 外国人患者が訪れるクリニックで、英語の堪能な評価者が、英語ができない被評価者を自分と比べて「劣っている」と判断して低評価をつけた。
  • ITに疎い評価者が、入職して間もない新人がパソコンなどのIT機器やSNSに詳しかったことを理由に、「優秀だ」と実績に見合わない高評価をつけた。

8.論理誤差

事実ではなく、評価者の憶測・推論で評価をしてしまうこと。

例)

  • 「○○大学出身だから、この仕事は得意だろう」「元国体選手だから、忍耐力があるだろう」などと評価者が自身の中で論理上の筋が通るように分析し、事実に基づかない高評価をつけた。

9.アンカリング

最初に与えられた情報が、まるで船がいかり(アンカー)を下ろすとその場に固定される状態のように判断の基準となり、それに左右されて評価をしてしまうこと。

例)

  • 5段階評価で部下が自己評価を5にしていたため、それに引きずられて5の評価をつけた。
  • 入職時の第一印象が良かったので、その印象でいつも高い評価をしている。

10.親近感によるエラー

被評価者と出身地や趣味、価値観などの共通点があることで親近感を抱き、甘い評価をしてしまうこと。

例)

  • 同じ趣味を持ち、プライベートでも交流しているため、嫌われたくないので良い評価をつけた。

11.帰属要因によるエラー

人の行動や出来事に対し、原因はどこにあったかを求めようとする心理作用から、目立った景気の動向や上司の支援などの外的要因が、評価に影響してしまうこと。

例)

  • 成績の良かった被評価者に対し、本人の努力ではなく景気が良かったからだと判断して、低い評価をした。

人事評価エラーを回避するための4つの対策

ここまで代表的な人事評価エラーの種類を紹介しました。中には、思い当たる項目があったというドクターもいるかもしれません。人事評価エラーへの理解が深まったら、エラーを回避するために、次のような対策を講じると良いでしょう。

【対策1】評価基準を明確に設定する

誰でも同じ判断ができる指標があれば、評価に主観が入りづらくなります。そこで必要なのが、明確な評価基準の設定です。あいまいな評価基準は評価者によって偏りやブレが起きてしまうため、具体的で明確なものを設定しましょう。

【対策2】面談やミーティングの機会を定期的に設ける

評価期間は半年から1年に及ぶため、設定した目標が途中であやふやになったり、被評価者の環境やクリニック内の状況が変わったり、何かしらの「変化」が想定されます。変化を共有し、柔軟に目標を見直すためには、定期的に面談やミーティングの機会を設け、業務の報告をさせることが大切です。その中で評価エラーが起きていないかどうかも確認しましょう。

【対策3】事実に基づいて評価する

具体的な目標を設定し、その達成度合いを事実に照らし合わせて評価しましょう。そこで注意したいことは、それぞれの事実を一つの要素として評価し、別の要素と関連づけないことです。また、複数人での評価や第三者のチェックなども主観や思い込みを回避するのに役立ちます。

【対策4】公私混同を避ける

「日頃から仲良くしている」「あまりウマが合わない」などの個人的な関係や感情を評価に入れると、寛大化傾向や厳格化傾向に陥りやすくなります。クリニックの経営改善や人材育成を目的に評価を行っていることをしっかり認識し、客観的な目で公平かつ冷静に評価しましょう。

【まとめ】

今回は、「人事評価エラー」について紹介しました。

人事評価を行う立場にあるドクターなら公平に評価したいと考えると思いますが、やはり人が人に対して行うものである以上、評価エラーは誰にでも無意識のうちに起こり得るものです。エラーによって公平な評価ができなくなると、スタッフが不信感を抱き、モチベーションが低下するなど、悪循環に陥る可能性があります。「自分はエラーを起こさない」と看過せず、エラーについて理解し、意識することで公平な評価をめざしましょう。

次回はいよいよ最終回。テーマは、「フィードバック面談のコツ」です。

<執筆者プロフィール>
齋藤 由希(さいとう・ゆき)
ライター。DTP関連会社での雑誌制作・進行管理業務、アルバイト情報誌編集部での編集・執筆業務を経て、フリーランスのライター・エディターとして独立。著名人のインタビュー記事をはじめ、芸能・料理・健康などさまざまなジャンルの記事執筆や広告のコピーライティングなどに従事。ヨガ講師としても活動中。

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