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2026.3.13

専門医はスーパードクター?!保有資格の掲載ルール《医療広告ガイドライン10のポイント》【第8回】

保有資格の掲載ルール

医療機関がインターネットを使った情報発信を進める上で、忘れてはならないのが医療広告ガイドライン。

厚生労働省は医療機関ネットパトロールを強化しており、ガイドラインに反する不適切な医療広告には行政指導が入ることも。何より患者に不利益を与えることになりかねません。

そこで本コラムでは、医療広告ガイドラインでおさえておきたいポイントを、全10回にわたって解説していきます。

第8回は「専門医はスーパードクター?!保有資格の掲載ルール」をお届けします。

【記事公開日:2024/6/18|最終更新日:2026/3/13】

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広告可能な歯科医師の専門性資格はわずか5つ

患者にとって「どんな人に診てもらうか」はとても重要な要素です。ホームページのスタッフ紹介は必ずチェックするという声もよく聞かれます。医療機関においても、医師や歯科医師の経歴をアピールしたいというニーズはあるでしょう。

医療広告ガイドラインでは、医療従事者とそれ以外の従業員の氏名、年齢、性別、役職および略歴について広告することが認められています。「略歴」に該当するのは、生年月日、出身校、学位、免許取得日、勤務歴(診療科)などです。

そのほか、保有資格をプロフィールに記載することも多いと思います。各学会が認定している「専門医資格」がその代表ですね。しかし、専門性に関する認定資格(以下、「専門性資格」)については、広告可能な範囲がかなり限定的です。「これも書けないの?!」と驚かれるかもしれません。

広告できる専門性に関する事項

  • 一般社団法人日本専門医機構又は一般社団法人日本歯科専門医機構(「専門医機構」)が行う医師又は歯科医師の専門性に関する認定を受けた旨(ただし、専門医機構が認定を行う専門性のうち基本的な診療領域に係るものに限る)を広告可能
  • 「広告が可能な医師等の専門性に関する資格名等について」(医政局総務課長通知)において広告が可能となっている医師58団体56資格、歯科医師5団体5資格については、一定の場合を除き、当分の間、令和3年10月1日の広告告示改正前と同様に広告することができるものであり、令和3年10月1日以降に新たに学会より認定された者も同様
  • 研修体制、試験制度その他の事項に関する基準に適合するものとして厚生労働大臣に届け出た団体が行う薬剤師、看護師その他の医療従事者(医師、歯科医師を除く)の専門性に関する認定を受けた旨を広告可能

(医療広告ガイドライン第4-4-(9)イ参照)

つまり、厚生労働省の「広告しても良い」という条件を満たした専門性資格のみ広告できます。広告が可能となっている医師58団体56資格、歯科医師5団体5資格については、以下のサイトで確認できます。

医師は広告できる専門性資格が56個に対し、歯科医師は5個しかありません。そこに含まれない認定医、指導医は広告できないでのす。また、各学会の会員であることも広告不可です。

学会や地域医師会の役員である旨は、現任であれば広告は可能です。ただし、団体のウェブサイトなどに活動内容や役員名簿が公開されていることが義務づけられています。また、役職を降りたときは速やかに広告上の記載内容を修正する必要があります。

資格名の記載ルールを誤るとガイドライン違反になる

2021年10月より、日本専門医機構と日本歯科専門医機構が認定する専門医資格が新たに広告可能となったことは、ご存じの方も多いかと思います。これについては後述し、まずは各学会が認定している専門医資格について取り上げます。

専門性資格を広告する際は、正式名称で書くというルールがあります。具体例を見てみましょう。

専門医資格の表記ルールとOK・NGの例

なお、非常勤の医師・歯科医師、スタッフの経歴を書くことも可能です。ただし、さも常勤であるかのように見せると誇大広告になるため、非常勤であること、いつ勤務しているのかを明記する必要があります。

「なんとなくスゴそう」を排除するのが医療広告ガイドライン

ここで、厚生労働省の「専門医に関する経緯と最近の動向について」(※)で取り上げられていた「専門医に関する意識調査」をご紹介します。一般の1万5000人を対象に、「専門医」という名前にどのようなイメージを抱いているかを調べたものです。

「専門医」に対する一般イメージの傾向

実に80%近い人が、「専門医≒スーパードクター」と捉えているようです。

もちろん各学会の専門医資格を取得するには、その分野における高い技術と豊富な知識が問われます。しかしここでいう「スーパードクター」とは、「神の手を持つドクター」、ブラック・ジャックのような非常にあいまいなイメージ。“専門医とは何か”を多くの人が正確に理解していないといえます。

専門医をはじめとする資格の能力や、その認定基準を一般の人々は理解していません。そのため、「よくわからないけどスゴそう」と思わせる側面があります。発信者が意図していなくても、優位性をアピールすることを徹底的に制限するのが、医療広告ガイドラインのスタンスなのです。

※厚生労働省「専門医に関する経緯と最近の動向について(平成29年4月24日)」

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「家庭医に憧れて」はOK、「家庭医です」はNG?!

学会認定の専門医のほかにも、専門性資格はたくさんあります。しかし、そのほとんどは広告が認められていません。また、広く使われている一般名であっても、専門性資格と誤認させるため注意が必要な名称も。以下は一例です。

広告が認められていない専門性資格の一例

■産業医(日本医師会が認定)
■検診マンモグラフィ独影認定医(日本乳がん検診精度管理中央機構が認定)
■日本糖尿病協会登録歯科医(日本糖尿病協会と日本歯科医師会が企画・登録)
■日本リウマチ財団登録医(日本リウマチ財団が登録)など

POINT!

「専門医」という名称でなければOK、というわけではありません。
専門性が認められたことで得られる資格は専門性資格にあたります。

■スポーツドクター
「日本医師会認定健康スポーツ医」「日本整形外科学会認定スポーツ医」「日本スポーツ協会公認スポーツドクター」をさすことになり、専門性資格と見なされます。
NG例:「私はスポーツドクターとしてプロ野球チームをサポートしています」
OK例:「子どもの頃にお世話になったスポーツドクターに憧れて、整形外科の道に進みました」

■家庭医
日本プライマリ・ケア連合学会認定の「新・家庭医療専門医」と誤認するおそれがあるため、記載する際は資格名と勘違いさせないような工夫をするとよいでしょう。
例:かかりつけ医

POINT!

「○○医」「○○ドクター」という名称は、「その分野の専門医」というニュアンスを持つこともあり、一般名として使用される以外はほぼ認められません。

資格のすべてが広告不可ではない

いつものパターンですが、ここで紹介した「広告できない専門性資格」は、いずれも広告可能事項の限定解除要件を満たせば広告できるようになります。

限定解除の詳細については、こちらの本コラムを参照してください。

あわせて読みたい

もう一点、「専門性に関する資格」とは別枠で、広告が可能とされているケースをご紹介します。

■法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた医師もしくは歯科医師

  • 母体保護法指定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 精神保健指定医
  • 生活保護法指定医 など

POINT!

ガイドラインでは、「略歴とは特定の経歴を特に強調するものではなく、一連の履歴を総合的に記載したもの」としています。保有している資格をアピールすることは、患者の受診等を不当に誘引する意図があると見なされてしまいます(誇大広告)。

(医療広告ガイドラインに関するQ&A参照)

ここまで読んでいただき、専門性に関する資格は一部の団体の、一部の資格のみ広告可能だということがおわかりいただけたかと思います。医療広告では優位性をアピールすることは認められていません。

一方で、患者が適切な医療を選択する上では重要な情報として、限定的に広告可能としているわけです。

広告可能な専門医資格は「専門医機構認定の専門医」が基本に

ここまで、学会が認定している専門医資格を中心に紹介しました。

一方で前述したとおり、2018年の「新専門医制度」の開始に伴い、医療法の一部改正が2021年10月より適用され、日本専門医機構と日本歯科専門医機構が認定する専門医資格が新たに広告で記載可能となりました。

厚生労働省は、これまでの学会が認定する専門医から、新しくスタートした日本専門医機構と日本歯科専門医機構が認定する専門医への移行を促しており、広告可能な専門医の資格についても、日本専門医機構と日本歯科専門医機構が認定する専門医資格を基本としていく考えです。

これを受け、学会が認定する専門医資格で、日本専門医機構が認定する19個の基本領域と同一の専門医(16学会16専門医)と、日本歯科専門医機構が認定する5個の基本領域と同一の専門医(5学会5専門医)に加え、先に述べた広告可能な学会専門医資格については、経過措置として、一定の場合を除き、当分の間、広告が可能とされています。

ただし、日本専門医機構専門医、あるいは日本歯科専門医機構の専門医として認定された場合、学会専門医として認定された旨を広告できなくなる、つまり同じ専門領域の資格を並列して広告することはできないため、注意が必要です。

基本領域19領域に対応する学会認定専門医(16学会16専門医)

領域機構認定
専門医名称
当面の措置として広告可能になっている
専門医名称
団体名学会認定
専門医名称
内科内科専門医
小児科小児科専門医日本小児科学会小児科専門医
皮膚科皮膚科専門医日本皮膚科学会皮膚科専門医
精神科精神科専門医日本精神神経学会精神科専門医
外科外科専門医日本外科学会外科専門医
整形外科整形外科専門医日本整形外科学会整形外科専門医
産婦人科産婦人科専門医日本産婦人科学会産婦人科専門医
眼科眼科専門医日本眼科学会眼科専門医
耳鼻咽喉科耳鼻咽喉科専門医日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医
泌尿器科泌尿器科専門医日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
脳神経外科脳神経外科専門医日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
放射線科放射線科専門医日本医学放射線学会放射線科専門医
麻酔科麻酔科専門医日本麻酔科学会麻酔科専門医
病理病理専門医日本病理学会病理専門医
臨床検査臨床検査専門医
救急科救急科専門医日本救急科学会救急科専門医
形成外科形成外科専門医日本形成外科学会形成外科専門医
リハビリテーション科リハビリテーション科専門医日本リハビリテーション科医学会リハビリテーション科専門医
総合診療総合診療専門医
出典:厚生労働省「第3回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」資料1-1「専門医に関する広告について」(2024年3月25日)

基本領域に対応する学会認定専門医(5学会5専門医)

団体名学会認定専門医名称
日本口腔外科学会口腔外科専門医
日本歯周病学会歯周病専門医
日本歯科麻酔学会歯科麻酔専門医
日本小児歯科学会小児歯科専門医
日本歯科放射線学会歯科放射線専門医
出典:厚生労働省「第3回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」資料1-1「専門医に関する広告について」(2024年3月25日)

また、経過措置にも留意が必要です。

現在、「学会認定の〇〇専門医」と「機構認定の〇〇専門医」が併存しており、国民から見てわかりづらいという課題が指摘されてきました。こうした状況を踏まえ、2024年3月、厚生労働省は「基本領域と同一の専門性のある学会認定専門医を広告可能とする経過措置の終了について」を事務連絡し、原則2028年度末での終了に向けた準備を関係団体へ求めています。

変動の大きい項目ですので、最新の運用・周知文書は厚生労働省の公式情報(医療広告規制関連のページ)で必ずご確認ください。

次回は医薬品・医療機器の名称に関するルールを紹介します。

<執筆者プロフィール>
金光 美紅(かねみつ・みく)
ライター。大阪府生まれ。大手人材会社にて広告規制に即したコピーライティングに従事。2015年からは医療メディアのライターとして、医師・歯科医師をはじめとする医療従事者のほか、三師会会長、行政首長インタビューなどを経験。医療機関の広報・PR、疾患啓発などさまざまな記事を手がける。ライター歴10年目を機に独立。広告ガイドラインを遵守した記事作成を得意とする。

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